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0−3話 白衣の美女と、白魔法。

宮殿は海底都市アビスのほぼ中央にあった。

水の道を降りていくと、高い視点から宮殿全体を見ることができた。


「広いな」


宮殿は本殿と見られる大きな建物以外にも、広い敷地に大小何十もの建物が並んでいるのが分かる。

外郭は石を積み上げて作られた高い城壁に囲まれている。

その外側、宮殿全体から言っておそらく正面だろう所に、水の道は続いていた。


「到着です」


スイちゃんについてタクシー船を降りる。


降りた正面の城壁には大きな門があり、大きな鉄の扉が付いている。

門は開け放たれていて、左右に門番が立っているのが見える。

どちらも半魚人だ。何の魚かは、スミマセン分かりません。



二人(二匹?いや、二尾?)の門番にジロリと睨まれ、槍で道を塞がれた。

「オト様付きの侍女スイです。こちらは客人になります」

スイちゃんが言うと、門番は無言のまま槍をどける。

通って良いということらしい。

(無言だし。槍だし。恐いですよ)



門を通ると広い空間があり、大きな宮殿がある。

宮殿の正面から入ったが、


「こちらです」


すぐに左に曲がって、しばらく歩くと一つの部屋に案内された。


「まずは傷を治しましょう」


その部屋は物で溢れかえっていた。

四方の壁がほとんど棚で天井まで埋まっている。

一面は引き出しの数が数百もある棚が占めている。

別の面にあるガラス扉の棚には大小様々な褐色の瓶が並べられている。

また他の面は紙の束が山積みされている。

部屋には小さな机、作業台、椅子が何脚か、ベッドが二つ。

机の上には大量の書物が置かれ、小瓶が散乱し、作業台も似たような荒れ模様だ。


「あれ、いないなぁ。」

「居ないって?」

「先生です。どんな怪我も瞬時に治してくれるすごい人ですよ。でもちょっと変態です」

「誰が変態かしら」


突然背後から声がして、驚いて振り返る。


そこには薄手の白いローブに身を包んで、朗らかな色気を撒き散らす美女が居た。

身長は170cm程。齢は24、5歳か。ウェーブのかかった栗色の髪。無邪気そうな目。ニヤリと笑う口。大きく開かれた胸元。

スイちゃんにも劣らぬ胸の大きな彼女だが、なんというか、開けっぴろげだ。

その柔らかそうな深い谷を惜しげも無く見せてくれる。


「先生!いたんですか!」

「こんにちは」


ニコッと笑う彼女は、しかし俺に相当興味があるらしく、品定めするように見てくる。

こんな美女に至近距離からジロジロみられたら、誰だってドキドキする。


「どこにいたんですか」

「隣よ」

「隣ですか」


スイちゃんがとあからさまに嫌そうな顔をした。


「隣って?」

「先生の実験室です」

「・・・実験って?」

「興味があるなら教えてもいいけど、その前に、ここに何しに来たの?」

「あ! 怪我してるんです。治してもらえますか?」


スイちゃんが俺の腕を引っ張って、『先生』に見せる。

そこには先の戦い(?)で海鳥に引っ掻かれた大きな傷があった。


もうとっくに血は止まっているが、このまま放置するのも良くなさそうだ。

せめて消毒しないと、ばい菌が入って膿んでくるだろう。


「どれどれ」


と、楽しそうに覗いてくる『先生』。

この豊満な胸の『先生』は「白衣のようなローブ」「治して」から想像するに、ドクターなのだろう。

俺の腕を見ようと少し前かがみになると、胸元が緩くなり、重力で下に垂れる胸が柔らかそうに揺れる。

樹に大きな果実が実っているようだ。

嫌でも胸元にばかり目が行ってしまう。・・・嫌じゃないけど。

清潔な白いローブと、溢れるエロ可愛さのアンバランスが、なんとも言えない。


見てはいけない、と目をそらすとスイちゃんと目が合った。

スイちゃんはニコッと笑う。

その笑顔に、小さな罪悪感を感じてしまう。

すいません。あの、でも仕方ないと思うのです。この美女の胸の吸引力は凄まじい。


再び美女が顔を上げる。

「あなたは、どちら様?」

「えっと、シチロウと言います。あの、、、」

「私がシーバード達に襲われていたのを助けていただいたんです」

「シーバード?」

「はい。ヤム様のお使いでトータスタウンに行ってたもので。その帰りに」

「なるほどね」


美女が俺に向き直る。

「私は宮廷上級白魔導師のミオンと申します。どうぞこちらへ」

彼女は俺を椅子に案内して座らせると、薬棚へと向かった。


なんだって?

きゅうていじょうきゅうしろまどうし?


しろまどうしって、白魔導師? え?



後ろを向いているミオン先生の背中を見ていると、ローブの下の方、血がついているのを見つけてギョッとした。

血痕。

何の血だ? 実験って言ってたけど、一体・・・。


ミオン先生は、薬棚の引き出しからから小さな石を取り出して、持ってきた。

青緑の、宝石のような石。


こちらへ来るミオン先生を見て初めて気づいたのだが、彼女はかなり短いスカートを履いていた。

今まで胸ばかりに目が行って気づかなかった。後ろ向いてた時はローブで隠れてたし。

ミオン先生は長くて綺麗な脚の持ち主で、背も高いのでまるでモデルのようだ。

綺麗な脚。大きな胸。朗らかな笑顔。

完璧美人だ。



彼女が俺の前の椅子に座る。

スラッと伸びた生脚が、俺の前で組まれる。


「腕を出して」


ミオン先生は差し出した俺の腕を取って、反対の手に石をつまむように持った。

彼女がその石を見つめ、何やら念じると、石はボウっと淡く光りだした。


そして彼女は、その光る青緑の石を俺の傷口に押し当て、

グイッとねじ込んでくる。


「痛ーーー、・・・くない。痛くない」


痛くない。むしろ気持ちいい。じんわりと治癒されていくようだ。

青緑の石は、光となって溶け出して、傷口に溶け込んでいくかのようだった。


「この石には魔力が秘められています。白魔法と合わせて使えば傷の癒しをよくします」


なるほど、白魔法と、ね・・・。

って、やっぱり魔法があるのか!


ミオン先生は自分を上級白魔導師だと言っていたし、今の治療も、間違いなく魔法だろう。人間の医術ではないのだから。


「ま、魔法があるの?」

「ありますよ。人間界では知られていませんが、私たちの世界では当たり前ですね」


私たちの世界。

スイちゃんやミオン先生の住む世界は人間界とは違う、ということだろう。

深海を高速で泳ぎ続けるスイちゃんも、光る石で傷を治すミオン先生も、明らかに「人間」ではないし、このアビスで見た多くの半魚人たちもそうだ。


「ところで」


治療を終えたミオン先生が俺を見る。

「実験のことだけど、実は色々な遺伝子のサンプルを集めているの」


ミオン先生はすごく輝いた目で俺を見つめて来る。可愛い。

でもさっき見た、ローブに着いた血痕を思い出す。

何だかヤバそうだ。


「あなたは人間かしら?」


何が言いたいのだろう? そんなの決まってるじゃないか。


「・・・はい」

「純粋な?」

「え?」


そういって下から覗き込んでくるから余計に胸の谷間が見える。

ほとんど真上から覗いてるじゃないか。


「いや・・・純粋じゃ、ないと、思います。すいません。胸を見てました」

「胸なんか好きなだけ見ればいい!」

「えぇ!?」

「混じりっ気なしの純粋なホモサピエンスですかと訊いているのよ」


混じりっ気と言われて、ハッとした。

そうか、ここは半魚人の居る世界だ。

彼らを「混ざり物」と考えるなら、なるほど、俺は「純粋な」ということになる。


遺伝子のサンプルと言っていたから、注射で血を採られるのだろうか。

まぁ、それぐらいなら。治療してもらったお礼もあるし。


「はい。たぶん」

「たぶん?」

「いえ、純粋だと思います」

「よろしい!」


何がよろしいのか。先生はとにかく嬉々とした表情で俺を直視してくる。

すごく嬉しそうに目を輝かせている。

可愛い。


「ではその遺伝子をサンプルとしてもらえないかしら?」

そう言うと、ミオン先生の輝く瞳は、見つめる先を俺の顔から下へ移し、俺の下腹部で止まる。


「え?」

「このビーカーにあなたの精を取らせて欲しいの」


下を向くミオン先生が、舌なめずりするのが見えた。


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