Chapter3[ブースト]
俺は肩透かしを食らったような気分になった。
ではなにか。
期待していたほどチートってわけでもないのか。
魔物を倒しまくって素敵!抱いて!みたいな展開は無理なのか。
「そうでもない。あの世界、結構強い人は強いから。さっき言ったくらいのことはね、向こうのトップランカーなら可能なことなんだ。すごいよ? 僕みたいな総締めより格落ちするけど神様がちゃんといるからね」
連絡は取れないけど、と付け足す。
俺に与えられるチートとは、世界最強レベルの力ではあるらしい。
「無敵じゃなくて最強ってあたりが大切なんだ。でないと僕の観測手だってばれちゃうからね」
「いいけど。調子に乗りすぎるなってことだろう?」
「うんうん」
神はうなずいた。
「じゃあチートの説明に戻るよ? マジックブーストについてだけど、これもわかりやすいんじゃないかな」
「魔法か」
「ザッツライト。最上級魔法まで使える知識と魔力。竜巻を起こしたりバリア使ったり、ホーミングミサイルみたいなレーザーを撃ったりできる」
「さっきのとどっちが強いんだ?」
質問の意味としては肉体が幅を利かせているのか、それとも魔法を使ったほうが強いのかということだ。
「どちらともいえないかな。肉体が強ければそりゃあ強いよ。詠唱してる間に殴ればいいんだから。でも魔法なら遠距離まで届くし、いろいろ便利だ。脳筋に殴られる前に魔法で吹き飛ばせば終わりだろう?」
「なるほど……ってことはどのチートも差はないのか?」
「早計だよ。コマンドブーストとかアイテムブーストっていうのがあるだろう? コマンドブーストは指揮官系の能力チートでね。カリスマや軍略系のチートなんだ。アイテムブーストは道具をうまく使えるようになる。両方ともNAISEI系主人公みたいなものさ。前のチートキャラと違って周りに影響する、戦いの前に上手く利益を得ていくようなチート。直接なぐり合うとなったらワンパンで終わるけど、そもそも彼らを顎で使う立場になれる」
これもどちらが上とは言えない。
中国の有名な軍師は戦わないことが一番大事で、戦うことになった時点で損失だと残している。
「スキルブーストとディアティーブーストはちょっと特殊かな。毒が効かなくなるとか、ゲームらしいチートさ。技能系のチートはアイテムブーストのほうで、こっちは特別な能力のチート。不死身とか、石化の魔眼とか、そういう感じのね」
「無敵にするとまずいんじゃないのか?」
「無敵にはならないさ。不死身だからって油断してると不死身殺しの特性を持った攻撃にやられるよ?」
「じゃあ、最後のディアティーブーストってのはなんなんだ?」
「ディアティー、つまり神性さ。神様の権利を使えるようになる。スキルブーストがアイテムブーストに似ているように、これはコマンドブーストに似ているね。でもこちらは信仰の対象になるってスキルであって、コマンドブーストみたいな軍略、カリスマじゃない」
言い変えればみんなの人気者になるチートか。
少し悩んで、俺は項目をクリックした。
「選べるのは一つだけだよ。マジックブーストでいいのかい?」
「他のは使いにくそうだし、肉体強化より魔法のほうが応用力がありそうだ」
なるほど、と神は納得したように首肯する。
その下の決定ボタンをクリックすると画面が切り替わって、端のほうにいたおっさんを大写しにして、おっさんがサムズアップした。
ムサイ……。
「じゃあ最後に業務確認だ。君にやってもらうのは異世界の調査。メニューウィンドウの一番下にヘルプをつけておくから一番に確認してくれ。報酬は時給一〇〇〇円。成績によってアップするから頑張って。場合によってはボーナスも出す。質問は?」
「言い切れないくらいあるけど、アトラクションじゃないもんな。一つだけ聞きたいんだけど、向こうで死んだらどうなるんだ? 彼女とやらに目をつけられなくても、確か危険な魔物がいるんだろ?」
「その時はここにサルベージするよ。同じ人間を送り込むと一発で見つかるからそこでお仕事おしまい。それまでのお給料を精算して、電話を掛けた時点に戻す。お給料は指定されたように払っておくから」
最後にもう一度質問がないか尋ねられたが、これ以上はない。
「じゃあ面接はこれでおしまい。どんな風に調査するのかは全部君に任せるとするから、頑張ってくれ」
意識が途絶する。
感覚を遮断して転送したのだろう。