Chapter0[非日常への第一歩]
えー、みなさんこんにちは。
初めまして。
ご機嫌麗しゅう。
突然ですがまずは自己紹介から。
俺の名前は渋谷彰大といいます。
全国の渋谷彰大さんにはすみませんが、俺の一存で普通の名前だといわせていただきましょう。
普通です。
名前だけではありません。
俺の人生はことごとくが普通で彩られています。
無味乾燥でさえありません。
普通の学園生活。
普通の成績。
普通の恋。
普通の友情。
普通の家族。
普通の家庭。
変わったものはありません。
あまりに普通すぎて異常だということさえありません。
変化のある毎日。
変わり映えのしない日々。
そういった人生こそが俺、渋谷彰大の生きてきた人生です。
もはやこの普通さこそが渋谷彰大といえるでしょう。
そろそろ覚えてもらえましたか?
印象に残りにくい名前だというのはよく理解しているのでルビを振っておきました。
えへへ。
すみません。気持ち悪かったですね。
こういう笑い方は女の子がするべきです。
しかしここまで普通押しで生きてきたこの俺、渋谷彰大ですが、このたびめでたく一つの転機を迎えました。
というのも交通事故で死んだのです。
居眠り運転をしていたトラックが下校中の小学生に飛び込んだので、子供を助けた代わりに死にました。
嘘です、すみません。
こういったドラマティックなことが起きるような人生は送っていません。
人間の死に触れる機会があったのなんて新聞とテレビのニュースと、お婆ちゃんの葬式くらいです。
というか轢かれかけた子供を助けるなんてできる人間じゃありません。
命は惜しいですので。
きっと助けようとは考えても動く前に轢かれるリスクに思い当って動けなくなることでしょう。
友達もいますし、家族もいます。
現状に不満なんてありません。
いいえ、ありますがそれはみんな同じことでしょう。
押入れの中身を処分してパソコンのハードディスクの中身を全部消しておかないと死んだあとでエロゲを発見されるではありませんか。
俺はまだ未成年なので親の反応が気になります。
というか死に悲しんでいるときにエロゲを発見した時の家族の反応は素直に気になりますね。
どんな顔をすればいいのでしょう。
俺なら無表情になってふっと優しい笑みを浮かべて見なかったことにするでしょうか。
まあそんなことを考える前に、飛び出して助け出すだけのフィジカルを持っていないのですが。
火事場の馬鹿力ってどんなのでしょう。
俺でも人間を吹っ飛ばせたりするのでしょうか?
話を戻して、では本当の転機とは何かといわれますとさほど驚くべきものでもありません。
このたび、高校生になった俺、渋谷彰大はアルバイトをすることにしたのです。
将来のため、なんてものでもありません。
家計が厳しいわけでもなく、要するに遊ぶ金欲しさというやつです。
そんなに友達が多いほうでもありませんが、ゲームは結構お金がかかります。
有名どころのシリーズをそろえると小説だってそれなりです。
サブカルチャーは趣味になるとお金がかかるものなのです。
まずはコンビニ。
働きに来たわけではなくタウンワ○クの求人情報誌を取りに来たのです。
家に帰って見てみます。
親からは好きなアルバイトをしてみなさいと言われました。
放任主義、というほどでもありませんが、それなりに自由にはさせてくれます。
ぺらぺらとめくるうちに一つの求人に目が留まりました。
なにしろ馬鹿げたものだったので。
【急募!調査員!
時給1000円~※担当するエリアの欄によります
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調査員。
しかも資格不問で時給は1000円です。
すごいですね。
というわけで早速情報誌に書かれている電話番号に連絡した、の、ですが。
気が付いたら俺は電話のおいてあるリビングではなく、どことも知れない光の漂う暗闇の中にたった一人、マッパで立ち呆けていました。
プロローグおわり。
まる。