表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/54

File.4 喫煙系メイド

File.4 喫煙系メイド


「ディーン」


 と、屋敷裏で煙草を吸っていた私、ディーン・ディアンヌの名前を屋敷の主人、藤宮帆乃夏(ふじみやほのか)が呼ぶ。


「んだよ、御主人様」

「良いから、ちょっと煙草を消してこっちに来なさい」


 めんどくせぇと思いつつ、煙草を地面に押し付けて帆乃夏の元へ行く。「よし!」と嬉しそうに満面の笑みで見てくる帆乃夏は、まるでお人形のように小さくて、ちょっとした事で倒れそうなくらい細い。まぁ、こいつのお腹には赤ん坊が居るから、大きく膨らんでいるが。



「ディーン、いつも言ってるでしょ。煙草は健康に悪いから止めてって!」

「オレもそれは知ってるぜ。だから妊婦であるお前の傍では吸ってないじゃないか」


 赤ん坊は煙草がダメだ。なんか良くはしらねぇが、身体にとっても悪影響なんだと。だから、赤ん坊を作ってからはこいつの近くで一服するのを避けてたのだが。


「そうじゃなくて! 身体に悪いから止めてって言ってるの!」

「耳にタコが出来るくらい聞いてるが、これが一番リラックス出来るから仕方ねぇだろうが」

「もう、ディーンったら!」


 ぷん! と、顔を膨らませて怒っているのをアピールする帆乃夏だが、どう考えても子供が意地を張っているようにしか見えない。


 子供らしい容姿に、子供らしい仕草。愛らしいと言う言葉が似合う帆乃夏を見ていると、全身傷だらけで目つきも悪いオレなんかとは……


「ディーン……」


 と、そんなことを考えているオレに、帆乃夏が優しく包み込むように抱きしめてくる。


「ディーンは自分の身体を汚いと言うけれども、全然そんな事ないよ。私のために、傷だらけになりながらも助けてくれたディーンは、自分が思ってるよりもずっと綺麗だよ……」

「帆乃夏……」

「もう、どうしてこんな良い子のお婿さんが出来ないのかが不思議なくらいだよ!」


 プリプリと笑う帆乃夏を見て、オレはこらえきれずに、思わず笑ってしまう。


「あっ、ディーン! なんで、笑うの! ディーンの事を心配してるって言うのに!」

「だ、だって……。身体が小さいから、全然怒ってる風には見えねぇってば。まるで、ハムスターみたい……プププ」

「わ、私は真剣に怒ってるのに! ハムスターだなんて酷くない! もっと、レディーとか大人の女性とかの反応はないの!」

「いや、それだけは絶対にないから」

「そ、そんな真面目な声で言わないでよ! ディーンのバカ―――――――――!?」


 そして笑いが止まらなくなってしまったオレに対して、ムキになった帆乃夏を見て、オレは昔の、まだ主とメイドとか関係なかった、楽しかった頃の事を思い浮かべるのであった。










 それから7年後。

 藤宮の屋敷では、母親と同じように、見ている方すら笑顔にする顔で笑う藤宮帆乃夏の娘の手を握る、煙草を止めて飴を舐めているディーンの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ