File.33 料理と格闘するメイド
File.33 料理と格闘するメイド
メイドである私、谷子は目の前の光景にどうすれば良いか迷っていた。
「これ、どうしましょう……」
私の目の前では、一匹の怪物がうごめいていた。
足はタコのような軟体動物の触手、そして身体はサンゴ礁のような岩の身体でありながらぶよぶよした身体。そして背中には悪魔のような翼が生えており、そして獅子のような顔が背中に付けられている。
言葉で的確に表現出来るのはそこまでであり、それだけではなくてぶよぶよとか、ぷるぷるとか、ぼよぼよとかしか表現出来ない気持ちが悪い化物だった。
「ね? お嬢様?」
「うぅ……ごめんね、谷子」
と、この化け物……いや料理を作り出したお嬢様は申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。そう、あの化け物は、お嬢様が作り出した料理なのである。
私がお仕えするお嬢様は、何故か作った料理が化け物になってしまうと言う特異体質なのである。知り合いには他にも料理をすると爆発するお嬢様や、作ると何故か必ずカレーになってしまうお坊ちゃまなどが居りますが、お嬢様のように作った物が化け物になるのはレアケースである。いや、レアケースであると信じたい。
「今日は何を作ったんですか、お嬢様?」
「え、えっと……彼氏にオムライスを」
「オムライス……」
なんで、こう言う料理が出来ない方は、出来ないにも関わらずいきなり難しい料理に挑戦するんでしょう? しかもあの怪物がオムライス?
「なんか、口から火を吐いているように見えるのですが……」
「あれは多分、トマトケチャップ」
トマトケチャップなのにも関わらず、壁に火が付いているのは何故でしょう?
「あのタコのような触手は?」
「た、タコは隠し味……」
隠しきれていませんし、今もうねうねと動きながら床に足を叩きつけていますが? それも凄い勢いで。
「あの獅子は……虎なんて料理に入れました?」
「鶏肉なら入れたような……」
鶏が何故、虎になるのか教えて欲しい物です。『と』しか合ってないじゃないですか。
「はぁ……。お嬢様。あれほど奥様から料理はメイドである我々に任せろと……」
「で、でも! メイドに任せていたら上達しないし! 愛情も伝わらないもの!」
上達してこれ以上、恐ろしい怪物が生まれる事は考えなかったのでしょうか? それに愛情も、あんな怪物を見せられてしまうと、彼氏の方も百年の恋も冷めてしまうと思いますが?
「分かりました。ではいつも通り――――処分します」
そう言って、私は跳んで、化け物の前の空中にて止まる。空中で止まる事が出来ないと、このお嬢様が怪物を作り出すモンスターハウスでは暮らしていけませんので。
「では、まずはフォークから」
そう言って私はメイド服のポケットから銀のフォークを取り出す。そしてそれを怪物へと投げつける。怪物へと投げつけると怪物が大きな悲鳴をあげる。
「あぁ! 愛情の悲鳴がつらい!」
お嬢様、先程の断末魔の叫びみたいな、悪魔の声のどこが愛情の悲鳴に聞こえるのでしょう? お嬢様は特異体質だけでなく、耳まで可笑しくなってしまったのでしょうか?
「まぁ、それもこれで終わりですが」
私はポケットからチェンソーを取り出す。明らかに物量サイズが合っていないと言う抗議は受け付けません。ドラ○もんと一緒です。
そしてチェンソーで化け物を切断する。
「あっ……」
ケチャップが顔とメイド服に付いてしまいました。どうしましょうか? このままだと殺人した直後の犯人みたいな格好です。
「お嬢様、着替えてよろしいでしょうか?」
「うん。谷子、早く着替えた方が良いよ」
「承知しました」
私はそう言ってキッチンから出た。
キッチンから出ると、メイド長に会った。
「いつもの、ですね?」
「はい」
私はそう歴戦の勇者の風格を漂わせるメイド長に挨拶し、水場へと急いだ。




