表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/54

File.22 無関心メイド

File.22 無関心メイド


 ……どうも。メイドの戸谷(とたに)つみれと言います。気軽につみれとでも呼んでください。

 私は派遣メイドをしています。派遣メイドとはいくつもの家を金で雇われて行うという、ただそれだけのメイドです。普通のメイドとは違うのは、仕える家が日によって違うという事でしょうか? まぁ、仕事の内容なんて金を貰う側である私は選べないのですからどうだって良いのですけれども。


 派遣メイドとして、私は一つのルールを設けています。特にどうという事もありません。多くの人間が行っているような、そんな些細な、誰もがしているようなルールです。


 『決して踏み込まない事』。


 厄介ごと、説明しづらいこと、秘密にしたいこと。

 喋りづらいことはこの世にいくらでもあります。そう言ったことに関わったらたいてい面倒くさく、問題でしかありません。ですので私は、そう言った踏み込むと面倒な事には決して触らず、関わらないことを信条に生きてきました。


 ですので、


「いやー、ごめんね。つみれさん」


 と、ごひいきの(いさむ)さんの背後に、ファンタジー世界で良く見るようなドラゴンの死体が転がっていようが私は気にしない事にしています。


 英雄島(えいゆうじま)勇さん。それが彼の名前です。なんともまぁカッコいい、どこぞの主人公ですかと思うような名前ですが、どうも勇さんは凄い人物のようです。


 まず、いきなり居なくなる。来るべき場所に来なくなると言う意味での居なくなるではなく、文字通り目の前に居ようが消えます。

 そして必ず大金を持って帰ってきます。どこで稼いできたか分からないような大金で、金塊なり宝石なりを持って帰ります。たまに金貨であるにも関わらず、使えない金貨を大量に持って帰るのかはどうかと思いますが。


 耳が細長い美人さんや、なんで動くか分からない獣耳を生やした美少女などの、身元不明者を連れて帰ってくるのも多いです。

 この世界の生物ではない生物の死体を持ち帰るのも多いです。


 正直、勇さんには謎が多いですし、どう言う事情なのかを聞きたい所ではありますが、


「…………」


 関わると面倒そうなので、私は黙ったまま職務を全うする。


「あっ、それ、アースドラゴンの血で触ると強い毒が……」

「問題ありませんので」


 私はそう言ってフローリングの床を汚す大きなトカゲ(ドラゴンではないだろう。恐らく)から流れる血を気を付けて洗い流す。こう言ったのは初期掃除が大切なのだ。ビビッて掃除しないと床が腐って、新しく床を買い替えないといけないから。


「そ、そうなんだ」

「イサム! イサム! 見て見て!」


 と、扉を開けてカラースプレーで頭を緑色にしている身元不明の少年、エルフノ・フィーレさんが文字通り宙を飛びながらやって来た。


「ついに精霊の力を借りずに宙を飛べるようになったよ! これもイサムが、精霊を使わない神式(しんしき)魔術を教えてくれたおかげだよ!」

「ば、バカ! フィーレ! 今はつみれさんが来てるって言っただろうに!」


 ……なんか飛んでいるし、それに精霊とか、神式魔術なる言葉が聞こえた気がしますが、どうでも良い話です。明らかにかかわるとろくな事になりそうではないし、どうでも良い話です。


「……ではいつものように洗濯、掃除、それから料理をさせていただきます。それでよろしいのですね?」

「あ、あぁ。頼みます、つみれさん」

「……了解しました。くれぐれもこの部屋の人達を出さないように注意していてください。色々と拙いんでしょ? 説明通りならば」

「そ、そうだな。うん」


 この家の人達が普通でない事は知っている。そもそもそう言う注意事項を受けているのにも関わらず、時々この勇さんは忘れてしまうから困った物である。


 そうしていつものように可も無く、不可もなく。私は派遣メイドとしての仕事を行うのであった。




「ねぇねぇ、イサム! あの女の人って前から思ってたけど何者なの?」

「そうだよなー……。ドラゴンだろうと、ピクシーだろうとメイド服と共に整理するメイド、と言った所だろうか?」

「良く分からないけど、あの人、絶対に強いよね! 大精霊の人達全員認めてるもの!」

「本人は認めないだろうけどね」


 自分の知らない所で、着々と強者認定されるつみれであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ