File.2 見下し系メイド
File.2 見下し系メイド
うちで働いているメイドの紅子さんは、常に主の僕の事を見下しながら喋る。
「太郎坊ちゃま。テストの点が返ってきたようですが、残念ながら芳しい結果では無かったようですね。
あら、ごめんなさい。太郎と言う名前にしては、相応しい点数でしたね。ごめんなさいですわ」
うちで働いているメイドの紅子さんは、寝坊をすると怒る。
「太郎坊ちゃま。目覚ましをかけたのに、寝坊をなさるとはなさけない限りですわね。自分が決めた時間に起きられない人間には、目覚まし時計なんて必要ないと思いますけれども?」
うちで働いているメイドの紅子さんは、小学生サイズしかない紅子さんの身長を指摘するとけなされる。
「太郎坊ちゃま。人を見かけ上の大きさでしか判断出来ない無能な坊ちゃまなりの言葉と思われますが、坊ちゃまは私以上にその身長を活用出来ていらっしゃるのですか? 活用出来てらっしゃらないならば、今すぐ自分の身体をハンマーか何かで叩いて縮んだ方がよろしいのではないのでしょうか?」
うちで働いているメイドの紅子さんは、妹と喧嘩すると蔑む。
「太郎坊ちゃま……。これから太郎坊ちゃまに好意的に接してくれる女はもう、妹様だけだと思われますのに、その妹様を侮辱して嫌われるだなんて、坊ちゃまは女性に興味がないホモだと思われますので、早速その筋の方をお呼びした方がよろしいのでしょうか?」
うちで働いているメイドの紅子さんは、父さんに対しても怒る。
「旦那様。前にも言ったと思いますが、母親を亡くされた太郎坊ちゃまと花子お嬢様にとっては旦那様だけが最後の肉親、と言う事なのですよ。彼らに忘れられてもよろしいとおっしゃるのであれば、先程申されたように家族を無視する極悪党として仕事に専念してピクニックに来ないのが、よろしいのではないのでしょうか?」
うちで働いているメイドの紅子さんは、好き嫌いをすると顔を叩く。
「失礼、太郎坊ちゃま。好き嫌いをなされると言う事は、この食べ物を作った方々の恨みを買ってもよろしいかと思いまして、とりあえず作った私の恨みを先に味わってもらおうと思いまして。続きましては生産者である私の……分かればよろしいです。さぁ、旦那様とのピクニックを楽しみましょう。私の作りました無農薬野菜をそのすぐに何かを忘れてしまう単細胞に刻み付ける事をお勧めいたします」
うちで働いているメイドの紅子さんは、許嫁と仲良くしないと溜め息を吐く。
「太郎坊ちゃまは、あの許嫁様をエスコートしませんといけません。あの許嫁様の家が私達にどう役立ち、そして許嫁様がどのように愛していらっしゃるのか、今度は拷問でもしながらじっくりことこと煮込みながらお話いたしましょうか?」
うちで働いているメイドの紅子さんは、浮気をするとメールを送って来る。
『許嫁をほったらかすダメ郎へ
若い他の女の方に身体が行っちゃうのは構いません。そんな人間の心を知らずに楽しそうに過ごしていらっしゃいます坊ちゃまには、先程お撮りした許嫁様の泣く声が延々にループする動画の添付ファイルをどうぞご堪能ください。なお、この添付ファイルは自動的に再生され、私しか止まれませんので悪しからず』
うちで働いているメイドの紅子さんは、許嫁との結婚の際に軽口を叩く。
「おめでとうございます、許嫁様。いえ、今日からは奥方様でしょうか? 今日からこの家にて頑張っていただかれますと私を始めとした、使用人共々大変嬉しく思います。
……あぁ、太郎様。ようやく家を継ぐ決心をなさりましたようで、嬉しく思います。ですが、今やっとあなたはまっとうな人間として歩き始めただけですので、これからも人々にご迷惑をかけつつ、無様にぶしつけな事をなさるのは確定でしょうが、どうか犯罪だけはなさいませんよう頭にちゃんと叩きつけてください。忘れるくらいの単細胞ならば、その腕にメモをなさいますか? 会社で開発した永遠に消えないペンで」
うちで働いているメイドの紅子さん。
母さんが亡くなった後、家族としての父さんとの時間を増やしてくれて、どこに出しても恥ずかしくないよう教育してもらい、こんな可愛いお嫁さんである許嫁との仲を取り持ってくれた紅子さん。
そんな紅子さんに感謝の言葉を放つと、
「……この程度の事で謝辞を述べるだなんて、ちょっとは成長したと思いますが、まだまだあなたは私のような存在が見ていないとあぶなかっしいですね」
やっぱり見下していた。