File.17 ようぢょメイドの心の内
File.17 ようぢょメイドの心の内
こんにちは。わたしの名前は千川ゆうといいます。6さいです。
わたしのしごとはこの大きな家のめいどとしてしっかりとはたらくことです。わたしのおとうさんとおかあさんはこの家でごしゅじんさまたちにごほうしというかたちでお金をもらってます。
お金がないとたいへんです。わたしたちはしんでしまいます。しぬとはよくわからないですが、おかあさんがいうにはまっ白になってうごかなくなってしまうらしいです。おとうさんがいうには、天にいっちゃっておはなしができなくなってしまうみたいです。
おとうさんも、おかあさんも、どちらもわたしにとってはたいせつなので、しぬのはいやです。だからお金がいっぱい、いっぱーい、ひつようです。
だからそのために、わたしはいつもごしゅじんさまに気にいられるようにどりょくします。
「ごしゅじんさま、おひるのおじかんです」
「あぁ、分かったよ、優ちゃん。今、行くよ」
そういって、ごしゅじんさまはわたしのあたまをなでながら、うれしそうなかおをしています。おかあさんがいっていたとおりです。ごしゅじんさまは一人っこらしくて、それでわたしをかぞくのようにたいせつにしてくれるのだそうです。
「ごしゅじんさまは、わたしのことがすきですか?」
「勿論。大好きだよ、優ちゃん。優ちゃんのお父さんも、お母さんも、ちゃんと仕事をしてくれて僕は嬉しいよ」
「それはよかったです」
ニコリとえがおをつくると、ごしゅじんさまは「可愛いなぁ、もう!」といいながらだきついてきました。おとうさんからおしえてもらったことばをつかうとすれば、『チョロい』、です。
このいえにたいしてわたしたちかぞくにむけるようなきもちでごしゅじんさまにあたっているのではないと、おとうさんとおかあさんはわたしにおしえてくれました。
『この家は金を持っている。だから私達は、その沢山の金を得るために仕事をしているんだよ。一番大切なのは、お前と優の2人だけに決まっているじゃないか』
『そうよ、優。私とお父さんは、この家の人達を愛しているからお仕事をしているんじゃないわよ? ただ金払いが、沢山お金を貰えるから尽くしているだけよ。お金がなければこんな家を出て、3人で暮らしているわよ』
『そうだな、お前……』
『ええ、あなた……』
おとうさんとおかあさんはいつも、ろうかのおくとかきたないへやのなかで、わたしにそうおしえてくれます。
おとうさんとおかあさんのいうことはぜったいです。だから、わたしはそうおもってきました。
この人は、お金をもっている。だからそのお金をいっぱいくれるために、もっともっとつくしていかないと、と。
「ごしゅじんさま……おひるごはんがおわったら、ほしいものがあります」
「あぁ、またなのかい、優? 君は可愛いなぁ。で、何が欲しいんだい?」
そういってうれしそうなかおでわたしのあたまをなでるごしゅじんさまを見て、チョロいなーとおもいました。
「おひるがおわったら、でぱーとにいきたいです。でぱーとにまほうしょうじょがきます」
「あぁ、あの優が大好きな魔法少女ハートのショーか。そう言えば、デパートの屋上でやると聞いていたなぁ……」
ごしゅじんさまは、そういいます。
まほうしょうじょハートは、わたしがごしゅじんさまの気を引くためだけに見ているおはなしです。おかあさんとおとうさんが、これを見ているといいとおしえてくれたので見ています。
ごしゅじんさまはわたしがこのばんぐみをすきだとおもっていますが、わたしはあまりすきではありません。
まほうしょうじょハートはお金をくれません。いくらおうえんしても、すきになっても、お金をくれないからすきではありません。
けれども、大すきなことをいっておくと、ごしゅじんさまがいっぱーいかって、おとうさんとおかあさんがなんか黒い人たちにわたすのにつかわれて、お金がいっぱいもらえるからすきです。
「じゃあ、食べたら一緒に行こうねー」
「うん!」
わたしは、とってもうれしかった。
これでもっと、もーっとお金がもらえるから!




