File.15 人工メイド
File.15 人工メイド
ギリシア神話に登場するキプロス島の王、ピュグマリオーン。かの王は現実の女性に絶望して理想の女性、ガラテアを作り出した。そして長年の想いからガラテアを人間にする事に成功したピュグマリオーンはこの私、栗花落博士にとっては偉大なる先駆者だ。
しかし、この先駆者は詰めを誤った。理想が現実になった事に絶望して理想の女性で無くなったと絶望したピュグマリオーン、しかし理想が現実になれなかった程度で諦めてどうすると言うのか?
偉大な者の言葉にこう言う言葉がある。
『諦める事を諦めろ』。
諦めずに、行動し続ける事に意味があるのだ。
だからこの私も諦めずに、自身の目的を果たすのである。そう、理想のメイド作りを!
幸いな事に、今はレーザープリンターなどの2Dを3Dに出来る技術など、金と技術さえあれば理想の人物などすぐに出来る。
まず顔はやはり美少女が良い。醜い奴にご奉仕させても別に嬉しくも無いからな。輪郭は細く、そして目は大きい方が良いだろう。瞳は赤で、髪は1本1本特注して艶やかな最高級の物にしよう。まぁ、この辺りは最高のメイド作りにとっては通過点のような物だ。
スタイルも出来る限り良い方が良い。小さな幼い子が一生懸命になって尽くしてくれると言うのにも多少は興味があるが、スタイルが良いメイドを雇っていると言うステータスが良いしな。胸は大きすぎず、ただし小さすぎるのも癪だからDくらいで良いだろう。身長は……っと、このくらいあれば十分だろうか? 私の身長よりも少し低いくらいがベストだ。メイドたるもの、上目遣いは基本だしな。
服装はこちらで、理想的なメイド服を用意した。私服を着たメイドの愚の骨頂だ。メイドとはメイド服を着ているからこそメイド服だ。
そして、性格。所謂、頭脳はコンピューターによる睡眠療法を応用した知識のインプットアウトプット方式を利用し、私に尽くし、そして従順にして良い子のメイドになるよう性格を作って置こう。バカのメイドだとこちらの要求が分からない事も多いから一般知識、及び社会常識、他諸々の知識は入れて置こう。
「さて、いよいよだ」
苦節20云年。
年齢イコール彼女居ないと言う寂しい人生を送って来た私も、遂に理想的な彼女……いや、理想的なメイドを手に入れる。
(メイドが出来たら何をして貰おうかなー。まずは頭を撫でさせよう。自分が作った者に撫でられると言うのはちょっと変だとは思うが、メイドだもの。主を気遣うのも必要な事だ。それから料理も作らせよう。料理についての知識も入れておいたから心を込めて作らせて、その後メイド喫茶に行った時にやって貰った『美味しくな~れ♪』をして貰おう。あれは本当に良い物だ! 何度見てもあれはメイドの可愛さを増幅する魔法の言葉だ。流石に店だと10回もリピートをお願いしたので怒られてしまったが、私に従順なメイドならばいつだって、いくらだって行ってくれるだろう。後は耳かきをしてもらおうかな。耳かきをするにはやはり膝枕をして、上を見たら顔では無くて胸の方が目に入って来るしな。その光景は絶景だと思うし、絶対にやって貰おう。後は掃除もやらせよう。別に汚い所など1つも無い。我が愛しのメイドが汚れる姿など見たくないからだ。だから、掃除する必要はないが、それでも一生懸命に掃除しているメイドの姿が見たいのだから仕方がない。他にも買い物に行かせるのはありだろう。テレビで特番としてやっている『初めてのお○かい』みたいに、後ろから付いて行ってどんな行動をするか見たい。後、衛星をハッキングしてメイドの可愛さを録画したい。あぁ、やりたい事が山ほどある)
もうすぐタンパク質の錬成で出来た身体の定着が終わり、メイドがこの溶媒液の中から出て来る。
「さぁ、出て来い! 俺の理想のメイド!」
――――――助手に呼ばれた警察によって、メイドに会う前にお縄につきました。
人工による知的生命体の作成は、法律により禁止されております。