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オルゴール/あしおと
「オルゴール」
手のひらで転がる 小さな箱の横っちょの
小さな取っ手を回してみると
きらきらしい音のメロディが
たどたどしくあふれてくる
コンダクターのタクトのように
レバーをくるくる回してみる
ゆっくりと回せばLentoに流れ
急いで回せばPrestoを奏でる
私は 手のひらの上で
ささやかなオーケストラを
育てている
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「あしおと」
坂をのぼる
こつこつと音が響く
つかみきれない 地面のうえ
私は 確かな足あとをのこした
時がすすむ
こつこつと音を刻む
決して止まぬ 流れのなか
私は 何度も振り返った
心に想う
こつこつと音に乗せる
伝えきれない と知りながら
私は それでも言ノ葉にした
鐘が鳴る
こつこつと音が迫る
やがて近づく 旅立ちの瞬間を
決して避けられない と云うのなら
私は 万感を込めて
ただ静かに待つことにした。




