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第17話 Xの能力者

静かだった。

聞こえてくるのは自分の呼吸音と──────通話口から聞こえてくる相手の呼吸音のみ。


『…………Xの能力者』


そんな、静かな空間を破いたのは簡潔な言葉だった。

慧は何も言わなかった。というよりも、質問との関係性が分からずに発すべき言葉が分からなかった。

慧が何も言わなかったからだろうか、結佳は続きを発する。


『私が能力に覚醒したのはあの日、流星群を見た直後よ。最初は混乱したわ。自分の何があったのか分からなかったんだから』


「………気持ちは分かる」


『……そうでしょうね。話を戻すと、私は混乱してどうすればいいのか分からなくなっていた。急な頭痛と左目に映った流星群の意味が分からなくてとても怖かったわ。………そんな状況であいつが現れたのよ』


『あいつ』が誰を指すのか慧にはなんとなく分かった。


『あいつ───────Xの能力者は突然私の前に現れるとこう言ったわ。『おめでとう。君は能力者になる資格を得た』ってね』


─────能力者になる資格を得た。

それはつまり能力者は全員流星群の幻覚を経験しているということか?

疑問はあるが、余計な口は挟まず、慧は結佳に続きを無言で促した。


『続きに入る前に、Xの男について説明しとくわ。私が会った時は黒いコートと仮面を着けてた。仮面からは左目しか出ていなかったわ。………そして、その左目は金色だった。最初は外国人だと思ってたんだけど………言わなくても、分かるわよね?』


「……能力の使用による左目の色の変化」


『正解。まぁ、それはあとで気づいたことだけどね。話を戻すわ。急に変なことを言ってきたXの能力者に私はすぐに当時の私の状況を聞いたわ。今、考えると中々危ないことをしたと思うけどね』


確かに、夜間女子高生の前に突然謎の人間が現れたらすぐにでも女子高生は逃げるべきだろう。

だが、その時の結佳はその謎の人間─────Xの能力者に対する恐怖よりも、自分の現状に対する恐怖が勝ったのだろう。


『ただ、Xの能力者は聞いてる途中、手で私に聞くのを止めるように言うと───────────突然、私の首を絞めてきたわ』


「ッ!? 待て! 話が飛躍しすぎて意味が分からねえ!! 順序良く説明してくれ」


『順序良く説明した結果がこれよ。Xの能力者は首を絞めながら、私に言ったのよ。『資格を得るだけでは意味が無い。怯えろ、苦しめ………そして、力を欲しろ』ってね。言われた通り、私は怯えて苦しんで力を欲したわ……このまま、死にたくない。生き続けるための力が欲しいってね。そして、気付いたら私流星群を見ていたわ。私は流星群に願った。生きたい………こんな理不尽で死にたくなんかないって……そう願い続けてたら、いつの間にか黒い空間にいたわ。おかしな話だけど、あたり真っ暗なその空間は高速で動いていたわ。何の障害物もなかったけど、何故か分かった。そこまで分かったら、私は急にその空間が怖くなったわ。帰れるのか分からないし。だから、私は走った。そして、驚いたわ。人間が出せる速度を軽く超えてたんだから。自分の速度に驚くと同時に頭痛は襲って来たわ。頭痛が終わると、今度は苦しくなった……気づいたらもとの状況に戻ってたのよ。首を絞められている状況にね。頭痛を介して自分が得た異能を知った私はすぐにXの能力者を蹴り飛ばしたわ。Xの能力者から解放されると、私はひたすら咳き込んだ後、高速で殴りかかったわ。でも、その拳は止められた。止めながら言われたわ『覚醒おめでとう。さぁ、今の君の状況について話そうか?』ってね。当然、私はふざけるなって言って再度殴りかかったんだけど、簡単にかわされたわ。そして…………喋りつかれたわ。飲み物飲んできてもいい?』


「あ……あぁ。俺も少し疲れたよ」


一瞬、話が切れたことに唖然した慧だが、言われていれば自分も喉が渇いた。

聞いてるだけで乾いたんだから、言ってる方も相当だろう。


携帯を持ったまま、リビングに降りて慧は水を飲む。

時刻を確認するとすでに十時を超えている。そこまで長電話していたのかと呆れると同時に、まだ、質問した内容についての答えは聞いていないことに気付いた。

だが、薄々答えは分かってきているため、答えまでの前置きが必要だということにも理解していた。


「飲み終わったか?」


『おかげさまでね』


「じゃあ、眠い中悪いが、続きを頼む」


『続きと言っても、もう終わりなんだけどね。殴りかかった私にXの能力者は聞いたのよ。『今の状況を知ることは諦めたのかな?』ってね。首を絞めといても何言ってるんだと本気で思ったけど、今、状況を知ることを諦めればもう知る機会はないかもしれない……そう、思って私は拳を下ろしたのよ。そうやって、Xの能力者は私に教えてくれたわ。能力者やダストとか、私があなたに教えたことの全部をね。……そういえば、これがあなたの質問の答えだったわね。ごめんなさい、長くなったわ』


「それは構わないんだが、お前はそれ全てを信じたのか?」


『到底信じられるような内容じゃなかったけど、自分自身が信じられないような経験をしたしね。あ、あと言い忘れてたわ。能力に覚醒したおかげで私は金色の瞳からXの文字が読めたのよ。まぁ、どんな能力なのかまでは分からないけど』






それから、次の日の昼、慧は教員の授業を聞き流しながら考えていた。

昨日の夜は多くの情報を得ることができた。

だが、情報を得られてとしてもそのバラバラになっているピースを繋げることができない。


(香椎は流星群を見た後、Xの能力者によって半ば強制的に能力に覚醒させられた。……ならば、Xの能力者はいつ能力に覚醒したんだ?)


今までの話を振り返ってみても、全ての始まりは流星群だと思われる。

慧も結佳も……おそらく、黒鉄将輝もあの日の夜、流星群を見ていたはずだ。

だが、そうなるとXの能力者はいつ能力に覚醒した?


流星群が降った時にはすでに、能力に覚醒し今の結佳と同等かそれ以上の知識を持っていた。


この事実は一体何を意味すのだろうか?


考えても答えは出てこない。

最近、答えが出てこないことばかり考えているなと慧はうんざりすると、思考を改めた。


Xの能力者のことも捨ててはおけないが、今はそれよりも考えないといけないことがある。


──────────相良奏の父親


何故、彼に襲われたのかは未だに分からない。

だが、彼は言った。願いを叶えるために慧を殺すのだと。


慧を殺すことによって願いが叶う。

そんな不思議な力は慧には備わっていない。

備わっているとしたら、慧の中にあるWの力──────────願いを叶えるダストと似て非なる力を持つものしか考えられない。


慧は更に深く考える。

そもそも、慧の持つ『Weapon』の力─────────道具を武器に変える能力だって決して普通ではないのだ。

そんな普通じゃない力を普通の人間だった慧は自分の意思で使えている。

剣を生み出し、銃を生み出し、槍や盾など、もしかしたら、ミサイルだって生み出す恐れがある。

それは人によっては願いを叶えることと等しい結果になるだろう。


願い。


もし、願いが叶うとしたら自分は何を願うのだろうか?

そんなの決まっている。両親を──────────


「ッ!?」


そこまで考えて、慧は沈んでいた意識を浮上させた。


理由は分からないが、それ以上考えてはいけないような気がしたのだ。

時計を見れば、そろそろ授業が終わる。終わったら昼だ。


慧は黒板と真っ白な自分のノートを一度見比べると、シャーペンを手に取った。

そして、今更になって学生としての行動を開始した。






黒板の内容をノートに写しているうちに、何度か消されたのだろう、前回の授業と内容が噛み合っていないことに気付いた慧は馬鹿らしくなって写すのを止めた。

後で、誰かにノートを借りよう。そう心に決めた瞬間、授業終了のチャイムが校内に鳴り響き、昼になった。

使ってもいない教科書とノートなどをしまうと、カバンから弁当を取り出した。

ほどなくして、煙道当夜がパンと自分の椅子を持って慧の席まで来る。


「一緒に食おうぜ」


「好きにしてくれ」


いつも通りの会話をして弁当の蓋を開けた。






どうやら、慧の思考は仕事熱心ならしく、食事中も考えることをやめなかった。

だが、考えすぎて疲れている実感もある。

だから、だろうか。慧は目の前でパンを貪り食っている金髪頭の考えを聞くことにした。


「なぁ、きんぱ……煙道」


「んあ、なんだ?」


「一つ聞きたいんだが、お前はもし願いが叶うとしたら人を殺すか?」


「はぁ!? なんだそれは……?」


「深い意味はない。で、どうだ?」


「絶対に殺さない…………って、言えたらいいんだけどな」


「………殺すのか?」


「正直分からない。殺したくはないし、人を殺してまで叶えたい願いも持っていない。だけど、それはあくまでも今の話だ。もし、本当に願いが叶うなんて状況になって……………俺自身が世界の全てを敵に回してでも叶えたい願いができたら、人を殺すかもな」


この言葉を聞いて、慧は正直、感心した。

本来、こんなことを聞かれたら『絶対に殺さない』というだろう。………実際にその位置に立ったらどう行動するかはともかく。

別に、それが悪いこととは言わない。平気で『殺す』と言われるよりは遥かに聞く方も気楽だ。


煙道当夜の言った言葉は紛れもなく彼の本心なのだろう。

つまりはそれだけ、彼が慧を信頼してくれているということだ。


「…………ごめんな」


慧は少し辛そうな笑顔で質問に答えてくれた友人に小さな声で謝った。

慧も当夜のことは信頼している。中学から友人だったのだから、どれだけ良い奴なのかも知っている。

だが、それでも慧は今の自分が抱える秘密を相談することはできない。


──────────それで、影野慧は煙道当夜を信頼していると言えるのだろうか?


そんな考えが不意に慧の頭に浮かんだ。

だから、慧は謝った。

自分は彼の信頼に応えることができないから。


「何を謝ってるんだ?」


「あ……いや、何でもない。ごめんな変な質問して」


「別に構わねえよ。それより、何かあったのか? 最近疲れてるような気がするんだが………まさか、妹ちゃんが反抗期か!?」


「それはない……ともいえないのか。あいつも中学生だし。そろそろ………いや、でも、あいつに限って……」


妹の話題を出した途端に必死に考えを巡らせている慧を見ながら当夜は苦笑した。

二人っきりの家族の仲は良好のようだ。


「シスコンだなぁ……」


「てめえ、誰がシスコンだ!」


てめえだよ。という言葉はパンと一緒に飲み込んどいた。






影野美奈の携帯が着信を知らせてきたのは昼休みがもうすぐで終わるという時間帯だった。

すでに弁当も食べ終わって友人との談笑を楽しんでいた美奈は携帯の画面に映っているのが『お兄ちゃん』になっていることを確認すると、友人に一言断ってから廊下に出た。


ちなみに、本来美奈の通う中学校では携帯は持ち込み禁止なのだが、『音を鳴らさなければ何も見ていないふりをする』という暗黙の了解があった。つまり、マナーモードに設定しろという意味なのだが、もちろん授業中に触っていたりすると教員によっては注意あるいは没収されるため、最低限のマナーも守っている。

通話は結構グレーゾーンなため、美奈は廊下を進んで人気の少ない屋上につながる階段まで移動してから携帯を操作して耳にあてた。

幸い、まだ着信を知らせる携帯の震えは収まっていなかった。


「もしもし、お兄ちゃんどうしたの?」


『悪い! 今日、バイトのあと用事があって帰り遅くなるから先に飯食っててくれ』


内容はある意味で予想通りだった。

だからだろうか、その言葉は気づいたら発されていた。


「………どうして?」


『美奈?』


「お兄ちゃん、一昨日もバイトに呼ばれたからって夜にでかけていったじゃん。……今日は何があるの?」


言い終えてから美奈は罪悪感に苛まれた。

違うのだ。決して兄を責めたいわけではない。

だが、兄は知っているはずだ。自分が独りになることを嫌いだということを。

独りは嫌だ。両親の死を思い出すから。みんなに……兄に取り残されたような感覚になるから。


「教えてよ………どうしたの? お兄ちゃん?」


言葉は紡がれていく。

それが独りになりたくないがゆえの自己中心的な言動だと感じながらも止めることができなかった。


『大丈夫だ』


しばらくして、帰ってきた言葉はとても優しいものだった。


『お前は独りにはならない。俺がさせない………安心しろ。明日の朝にはベットの中で寝てるからさ。アラームで起きなかったらまた頼むぜ? ………明日の朝、一緒にご飯食べよう。約束する』


まるで心を見透かしたかのように言ってくる兄の言葉に美奈は自分が安心していることに気付いた。

約束──────────この言葉は美奈にとってかけがえのない言葉だった。

かつて、兄は死んでいった両親の分も自分を守ってくれると約束してくれた。

そして、その約束を兄は守ってくれている。

両親がいなくて寂しい時に隣に兄がいたことによりどれだけ自分が救われているかきっと、兄は知らないだろう。


「………約束だから。もし、明日の朝にお兄ちゃんがいなかったらすぐに警察に捜索願を出すからね!」


『あぁ、約束する。だから、旨い朝飯を頼むぜ?』


苦笑交じりの兄の声が美奈を安心させた。

美奈が「もちろん」と返事すると通話は切れた。

瞬間、言いようもない不安を美奈は感じた。

何故だろうか?


美奈は大好きなお兄ちゃんがどんどん自分から離れていく錯覚に襲われた。






妹との通話を終え、携帯をしまった慧は窓から外を眺めていた。

外は快晴だ。天気予報によるとしばらく雨は降らないらしい。


「もう少し、気を付けないとな」


数秒前の通話の会話を思い返す。

美奈の怒っているような泣いているような声は何度も慧の中で繰り返されていく。


約束。


両親が死んでから何度したか覚えていられないほど、美奈と交わしてきた。

一時期、出かけるたびに必ず帰るよう約束をさせられ続けたこともある。


「破るわけにはいかないよな……兄として、家族として」


静かに、自分に言い聞かせるように呟くと、再び携帯を取り出し、操作する。

少しして、メールを送信したという画面を確認すると慧は教室に戻った。






放課後になってしばらくしたあとに、慧の携帯は着信を知らせてきた。

画面に映っている名前は予想通りの人物。


「最近、何かとお前と話をしているような気がするんだが、気のせいか?」


『気のせいじゃないかしら? そんなことより、メール読んだわ。どういうこと? 昨日能力者に襲われたから今日その能力者に会いに行ってくるとか色々と理解できないから順番に説明してくれない?』


「説明することなんてほとんどないぞ。昨日意味も分からず襲われたから、今日その理由を聞きに行こうかと思ってな。幸い全く知らない人ではなかったからさ。お前に連絡したのは一応同盟を組んでいるからだ」


『色々と言いたいことはあるけど……あなたはその人に会ってどうするつもり? 理由を聞いて答えてくれるようなら最初から襲ったりしないと思うけど』


全く持ってその通りだ。と慧は声には出さずに結佳の言葉を肯定した。

昨日、慧を襲う背景にどんなことがあるのかは知らないが、少なくとも、慧が会いに行って友好的に接してくれる可能性は限りなく少ないだろう。それならば、まだその場で戦闘が勃発する可能性の方が考えられるほどだ。

しかし。


「仮にその場で戦闘が起きるほど最悪なことになったとしても、またいつ襲われるのも分からないまま放っておくのも問題だろ? さっきも言ったがこっちも相手のことを知ってるんだ。なら、こちらから動いた方がまだ被害は少ないかもしれない」


『………確かに、いつ襲われるのか分からないのは問題ね。だったら、私も行くから場所を教えなさい』


「能力者が二人で同盟を組んでいると知られたら厄介なことになるかもしれないから。俺が単独で行動する」


『……私には何も教えない気?』


心なしか、結佳の声色が冷たくなってきた。

しかし、結佳を巻きこむよりも先にどうしても、相良奏の父親と話がしたかった。

能力者が二人で行ったら、相手も話を聞かずに攻撃してくるかもしれない。

相手を安心させるためにはこちらに相手を傷つける意思がないことを証明しなければならない。

そのためには、まだ結佳を連れて行くわけには行かないのだ。


「違う。お前にも教える。だから、まずは俺に行動させてくれ。相手は俺たちが知らない情報を持っている可能性が高い。だから、まずはその情報を手に入れたいんだ! 能力者が二人手を組んでいると知られたら逃げられるかもしれないだろ? だから、俺に時間をくれ!」


『………………あなた、黒鉄将輝のようにうまく行くとか思っていないわよね?』


慧は何も言わなかった。

思っていない─────と言えば、嘘になる。

黒鉄将輝の時のように結果的に能力者同士でも手を取りあえるのではないかとどうしても考えてしまう。

それが、どれだけ甘い考えだと理解していても。


『まあ、いいわ。少し時間をあげる……でも、甘い考えに縋ってると……死ぬわよ』


そんなこと……言われなくても分かっている。

慧はそう、心の中で呟いた。






息子と息子の友人が親しそうにお喋りをしているのを聞き流しながら、相良響生(ひびき)は必死に考えを巡らせていた。

昨夜、自分は罪を犯そうとした。

殺人という名の罪だ。


相手は昨日出会ったばかりの高校生。

確か、名前は影野慧といったか……今、息子とお喋りを楽しんでいる小宮亮太が突然連れてきた───────能力者だ。

響生は能力者をずっと捜していた。

何故なら、彼らの存在は響生が願いを叶えるために必要なのだから。

そう。必要だからこそ、ずっと覚悟していた。いつか見つけたら、この手を汚す覚悟を。


なのに。

失敗した。


殺せなかった。

これは致命的だ。

何故なら、ここには息子がいるのだから。

自分を見つけ、復讐したければここに来ればいい。


どうする……?


息子たちの方を見ると、いつの間にか二人とも寝ていた。考えるのに夢中で声が聞こえなくなっていたことにも気が付かなかったらしい。

息子のベットで二人で眠る子どもたちの様子を微笑ましく感じながら、響生は時間を確認した。

二十一時半を過ぎている。この病院は本来二十一時までが面会時間なため、もう出ていかなくてはいけないだろう。

一応、病院側に少し時間の延長を頼んで許可は貰っていたが流石に限界だ。

最後に亮太を彼のベットに戻すために、抱えた時、亮太は目を覚ました。


「ん……」


「すまない。起きてしまったか。今、ベットにおろすからゆっくり寝るといい」


「…………あぁ!!」


「どうした?」


ベットにおろすと、少し意識が覚醒したのか亮太は大きな声を上げた。

すぐ近くでは息子が寝ているため、静かな声で聞くと、亮太は慌てた様子で喋る。


「今日、おじさんが来る前に慧お兄ちゃんが来てさ、もしおじさんが来たら手紙を渡してくれって言ってたんだ。忘れてたよ」


そう言うと、亮太はベットから降りて、棚にある引き出しから一通の封筒を出した。

影野慧からの手紙。響生は恐る恐る封筒を受け取り、中を確認すると便箋が一枚入っている。

それを読んだ響生はその内容に驚きを隠せなかった。


「ねえねえ、おじさん何て書いてあるの?」


「大した内容じゃなかったよ。さぁ、もう寝なさい」


そんなわけないよと言いながら、手紙の内容の説明を要求してくる亮太を「もう遅いからまた寝なさい」と言って半ば強引に寝かしつけると、響生は病室を出て行った。

時間の経過とはすごいもので、気づいたら前回の更新から約一年が経過してました………更新されるのを待っていた方はすみません、お待たせしました。


前回の後書きにも書きましたが、やはり書いてると妹がメインヒロインに感じてしまう今日この頃です。なるほど、やはり兄のヒロインは妹であるということか……。


次回は慧と響生が再度激突します。

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