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「短いお話集」

「鶴の恩返せなかった話:その2?」

掲載日:2026/07/06

鶴は恩を返したいだけなのに!

鶴

「先日はこちらのご主人に危ないところを

 助けてもらった名もなき鶴なのですが

 せめてものお礼

 私にできる精一杯のお返しをと思い

 訪問させていただきました。

 ご主人様はご在宅ですか?」


奥方

「うぇええええぇえええええええ!

 鶴が!鶴がっ人の言葉をっ!

 あんた~早く来ておくれ

 途方もない事が家の玄関先で起こってる~!」


旦那

「なんだ母ちゃん何をそんなに大声で、

 おやまぁびっくりだ。

 なんでここに鶴がっなんだいこの鶴はっ!」


奥方

「なんだかあんたにお礼がしたいんだって、

 それで来たらしいけど、

 あんたいったい何やったんだい?!」


鶴

「おぉこれはご主人様

 せんだっては本当にありがとうございました。

 本日はその時のお礼をと思い

 お伺いさせていただきました」


旦那

「あぁあああああ!

 あぁ~あんときの鶴かぁあああ

 人の言葉を話すとは腰が抜けそうだ。

 野犬は危険だから追い払っただけ。

 たまたま居たお前に、

 恩など売った覚えもないが

 興味はある。

 何をお礼してくれるんだい?」


鶴

「私は鶴の中でも

 もっとも珍しい種族の末裔でございまして

 人の言葉も話し、

 秘伝の能力もあり

 このふわりと軽くしかし頑丈なこの羽で

 特別な反物を編む事が出来るのです。

 今日はそれをお礼にとぉ」

 すると鶴、

バサッ

 自慢げにその羽を大きく広げると、 

 二人はその美しい羽をまじまじと見つめ、

 互いを見てその目にキラキラした光が

 有るのを見て頷き合った。


旦那

「そうかそれほど言うなら貰ってあげても良い。

 で、その反物はどこに?

 早く見たいんだ」


奥方

「あんたー寝耳に水ってのはこんなことを言うのだろう?

 あんたが旦那で本当に良かったよぉ

 鶴の反物なんて、

 見世物にして見料取って儲けてもいいし、

 売り払っても相当な金になりそうだよ?

 早く見せておくれ」


鶴

「あ。いえ。これから作るのです…」


旦那

「え…これからぁ………

 そうなのかい?で、

 作るのにどれくらいかかるんだい?」


鶴

「そうですねぇ約一年は…」


奥方

「はぁああああああ一年?…

 そ、そうなのかい…

 ちょっとがっかり、

 物が出来たらまた来てくれるんだろう?

 じゃないとお礼にならないものね…

 お礼なんだから…だよねあんた!」


旦那

「じゃー鶴反物出来たらまた来ておくれ。

 約束は守ってくれよな?」


 この世の春とばかりに貰う気満々な二人に鶴は続けた。


鶴

「えーっと反物は、

 ご自宅の一部をお借りしての作業となりまして、

 出来上がるまで居候と言う形になるのです」


 するとそれを聞いた途端、


ガラガラガ ガッシャン


 ピシャリと引き戸を閉じカンヌキまでかけた二人。


鶴

「あれ?あれ?あれぇえええ!

 あの~どうされたんですか?

 何かお気に触ることでもありましたか~?!

 もしもーし」


 どんなに声をかけても

反応が無くなってしまった彼らに鶴は

少しの間一方通行な問答を繰り返したが、


バッサバッサバッサバッサ


 大きく落胆しついに諦めどこかへ去って行き、

その様子を節穴から見ていた二人。


旦那

「詐欺鶴め遂に諦めて帰って行ったか!

 物の怪め!

 言葉を話す鶴など居るはずもない

 あれはきっと化け狸!

 家を乗っ取る策略!

 もう二度と来るな!」


奥方

「あんた~しかしびっくりな一日だったねぇ

 早めの夕飯にして

 今夜はたらふく食って寝るしか…」


旦那

「金づるならず詐欺づる…

 そうだなこんな事一日も早く忘れよう。

 飯だ飯!

 あーそれよりだ、

 ぱーっとこの話を肴に村の連中と

 酒盛りすっかー母ちゃん!

 どぶろぐまだあったよな?」


奥方

「あいよぉ~あるさあるよ~

 久しぶりに鶏鍋でも作って…

 あーだめだよあんた。

 口の中が涎まみれ

 あははははは」


旦那

「お前こそ。

 あははははは」


 小さな漁師町で小さな宴会が始まった頃鶴は、

納得がいかぬまま空を飛び、

物の怪の類ではあったが

悪意など微塵も持ち合わせて居ない鶴。

大きく孤を描き一鳴(ひとな)きすると

地平の彼方へ消え、

鶴の恩返せなかった話その2は、

これにて

おしまい

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