「鶴の恩返せなかった話:その2?」
鶴は恩を返したいだけなのに!
鶴
「先日はこちらのご主人に危ないところを
助けてもらった名もなき鶴なのですが
せめてものお礼
私にできる精一杯のお返しをと思い
訪問させていただきました。
ご主人様はご在宅ですか?」
奥方
「うぇええええぇえええええええ!
鶴が!鶴がっ人の言葉をっ!
あんた~早く来ておくれ
途方もない事が家の玄関先で起こってる~!」
旦那
「なんだ母ちゃん何をそんなに大声で、
おやまぁびっくりだ。
なんでここに鶴がっなんだいこの鶴はっ!」
奥方
「なんだかあんたにお礼がしたいんだって、
それで来たらしいけど、
あんたいったい何やったんだい?!」
鶴
「おぉこれはご主人様
せんだっては本当にありがとうございました。
本日はその時のお礼をと思い
お伺いさせていただきました」
旦那
「あぁあああああ!
あぁ~あんときの鶴かぁあああ
人の言葉を話すとは腰が抜けそうだ。
野犬は危険だから追い払っただけ。
たまたま居たお前に、
恩など売った覚えもないが
興味はある。
何をお礼してくれるんだい?」
鶴
「私は鶴の中でも
もっとも珍しい種族の末裔でございまして
人の言葉も話し、
秘伝の能力もあり
このふわりと軽くしかし頑丈なこの羽で
特別な反物を編む事が出来るのです。
今日はそれをお礼にとぉ」
すると鶴、
バサッ
自慢げにその羽を大きく広げると、
二人はその美しい羽をまじまじと見つめ、
互いを見てその目にキラキラした光が
有るのを見て頷き合った。
旦那
「そうかそれほど言うなら貰ってあげても良い。
で、その反物はどこに?
早く見たいんだ」
奥方
「あんたー寝耳に水ってのはこんなことを言うのだろう?
あんたが旦那で本当に良かったよぉ
鶴の反物なんて、
見世物にして見料取って儲けてもいいし、
売り払っても相当な金になりそうだよ?
早く見せておくれ」
鶴
「あ。いえ。これから作るのです…」
旦那
「え…これからぁ………
そうなのかい?で、
作るのにどれくらいかかるんだい?」
鶴
「そうですねぇ約一年は…」
奥方
「はぁああああああ一年?…
そ、そうなのかい…
ちょっとがっかり、
物が出来たらまた来てくれるんだろう?
じゃないとお礼にならないものね…
お礼なんだから…だよねあんた!」
旦那
「じゃー鶴反物出来たらまた来ておくれ。
約束は守ってくれよな?」
この世の春とばかりに貰う気満々な二人に鶴は続けた。
鶴
「えーっと反物は、
ご自宅の一部をお借りしての作業となりまして、
出来上がるまで居候と言う形になるのです」
するとそれを聞いた途端、
ガラガラガ ガッシャン
ピシャリと引き戸を閉じカンヌキまでかけた二人。
鶴
「あれ?あれ?あれぇえええ!
あの~どうされたんですか?
何かお気に触ることでもありましたか~?!
もしもーし」
どんなに声をかけても
反応が無くなってしまった彼らに鶴は
少しの間一方通行な問答を繰り返したが、
バッサバッサバッサバッサ
大きく落胆しついに諦めどこかへ去って行き、
その様子を節穴から見ていた二人。
旦那
「詐欺鶴め遂に諦めて帰って行ったか!
物の怪め!
言葉を話す鶴など居るはずもない
あれはきっと化け狸!
家を乗っ取る策略!
もう二度と来るな!」
奥方
「あんた~しかしびっくりな一日だったねぇ
早めの夕飯にして
今夜はたらふく食って寝るしか…」
旦那
「金づるならず詐欺づる…
そうだなこんな事一日も早く忘れよう。
飯だ飯!
あーそれよりだ、
ぱーっとこの話を肴に村の連中と
酒盛りすっかー母ちゃん!
どぶろぐまだあったよな?」
奥方
「あいよぉ~あるさあるよ~
久しぶりに鶏鍋でも作って…
あーだめだよあんた。
口の中が涎まみれ
あははははは」
旦那
「お前こそ。
あははははは」
小さな漁師町で小さな宴会が始まった頃鶴は、
納得がいかぬまま空を飛び、
物の怪の類ではあったが
悪意など微塵も持ち合わせて居ない鶴。
大きく孤を描き一鳴きすると
地平の彼方へ消え、
鶴の恩返せなかった話その2は、
これにて
おしまい




