権力差逆(けんりょくサギ)
サークルの集まりで、先輩・千島智和はいつものように場を仕切っていた。
「嘘はよくないよ、仲間を欺くなんて、最低だ・・・」
彼の声は強く正義感に満ちて聞こえた。
皆が黙り、頷いた。標的にされたのは中本和也。理由は小さなこと。
提出期限を一日勘違いしていただけ。
それを「故意に隠していた」「サークルを軽んじている」と言いふらされ、いつの間にか「嘘つき」という各印をおされた。
和也は必死に説明した。「本当に間違えただけです」誰も彼の言葉を受け入れることはしない。正義を掲げる千島は、空気を鎮まらせるほどだ。
代々こんな関係が継承されていた。
心優しい真子は空気に従い、口をつぐむ。夏目聖子が、口を開いた。
「和也は嘘はついていない、あなたが勝手に決めつけているだけ」
その瞬間、場が凍り付く。
「正義を否定するのか、君まで嘘つきの仲間になるのか?」
和也の胸に何かが弾けた。
「正義を口にする人が、いつも正しいわけじゃない」
声は震えていたが確かに届いた。沈黙していた真子が小さく頷いた。
春音が勇気を振り絞って言った。
「私も和也が嘘つくとは思えない」
場の空気が変わった。
「正義」は脅迫、恐怖、沈黙に支えられていただけなのだった。
その壁が今、はがれ始めていた。
千島は顔を赤らめ、言葉は失踪した。もはや、以前のような圧はなく、燃え尽きた灰のようだった。和也は深く息を吐いた。
本当の正義は誰かを支配したり、追い詰めたりするためのアイテムではない。
その思いは胸に残っていた。
この物語は「正義の思い込み」がどれほど、傷つけるかを描きました。
どんなに立派に見える人でも、間違えることもあれば、誤解、勘違いもあります。
「この人だからすべて正しい」と信じ切るのは危険です。
本当の正義とは、他人を裁くことではなく、相手の言葉や、真実に耳を傾け一所に乗り越えることです。
最後まで拝読感謝申し上げます。
じゅラン 椿