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海の子供たち

作者: 月臣
掲載日:2025/08/10

 これはわたしが体験した話だ。


 中学校一年生の時の夏休み、母と叔母と妹の四人で海に行った。

 その日は夏休みシーズンで遊泳客が多く、海も砂浜もとても賑やかだった。海も空も真っ青でとても美しかった。


 五歳年下の妹は泳げなかったので、母と砂浜でお城を作ったり、貝殻を拾ったりして遊んでいた。わたしと叔母は泳ぐのを楽しんでいた。


 学生時代水泳部だったという叔母の泳ぎは見事なもので、平気で沖まで泳いでいた。海水浴客はたくさんいたけど、叔母ほど奥まで泳いでいる人は少なかったと思う。


 わたしももう少し沖までいってみようかな。


 そう思って叔母の方を見た時だ。わたしは奇妙なものを見た。

 沖にぽつんと浮かんだ叔母の周りを、ぐるぐると何かが回っていた。


(何だろう、あれ。子供?)


 よく見ると、叔母を囲んで回っているのは四人の黒い子供だった。影のような黒い子供は、ぐるぐる、ぐるぐると叔母の周りを回り続けている。

 

 小さな子供が、あんな沖まで泳げるはずがない。


 わたしはとても怖くなった。

 叔母を助けないと。そう思うのに、なぜか体が動かない。

 

 気が付くと、叔母も黒い子供たちの影に加わっていた。五人でぐるぐる、ぐるぐると円を描いて泳いでいる。


 いつの間にか、叔母の姿が海の中に消えていた。

 沈んでしまったのだ。わたしは真っ青になった。


(助けに行かなくちゃ……!)


 慌てて、叔母が沈んだ所まで泳いでいこうとした。

 その時、叔母の周りを回っていた黒い子供たちが、今度はこちらに向かって泳いできた。


 影のような真っ黒な体に、爛々《らんらん》と光る眼と三日月みたいな真っ赤な口だけが浮かんでいる。

 子供たちは満面の笑みを浮かべて、わたしに向かって泳いできた。

 わたしは怖くなって、すぐに砂浜に向かって泳いだ。

 

 もしも追いつかれたら、わたしも海に沈められてしまう。そんな気がしたのだ。

 

 なんとか捕まることなく、わたしは黒い四人の子供たちから逃げられた。砂浜に戻ると、わたしはすぐに母に「叔母が沖で姿を消した」と伝えた。


 母は最初は半信半疑だったが、わたしがあまりにも必死なので、監視員の所に行って、叔母を捜してもらった。 


 叔母は沖の海底に沈んでいた。すぐに心肺蘇生をしたが帰らぬ人となった。叔母の足には小さな黒い指の痕が無数についていた。


 あの夏以来、わたしは二度と海では泳いでいない。



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