悲鳴が聞こえてきた
2030年、今から50年前にそれは起こった。
世界各地で突如として「ダンジョン」と呼ばれる異空間が発生した。人類は最初、それを地殻変動による地割れや未知の洞窟と考えた。しかし、内部に踏み込んだ者たちが目撃したのは、異様な世界だった。
ダンジョンの中には「モンスター」と呼ばれる生物が棲息し、それらを倒すことで金銭や素材、時には超常的な力を秘めたアイテムが手に入る。また、ダンジョンには宝箱が点在し、中には貴重な装備や財宝が眠っていることも判明した。
各ダンジョンは階層構造になっており、上層ほど敵は弱く、深層へ進むほど強大な脅威が待ち受ける。そして、世界に存在する最も深いダンジョンは150階層に達し、その最奥には未だ誰も辿り着いたことのない未知の領域が広がっているという。
こうしたダンジョンの存在が、ある一つの文化を生み出した。
それが**「ダンジョン配信」**である。
探索者たちは自らの戦いを映像として配信し、視聴者と共に冒険を楽しむことができる。モンスターとの激戦や財宝発見の瞬間をリアルタイムで共有し、時には視聴者のコメントに反応しながら攻略を進める者もいた。その中には、高難易度ダンジョンを突破することで名声を得た者や、ユニークな戦術で人気を集める配信者も現れ、今やダンジョン配信は一つのエンターテイメントとして確立されていた。
こうして、人類はダンジョンの脅威と富に魅了され、探索者と呼ばれる者たちが生まれた。
新たな時代——ダンジョン時代の幕が上がったのだった。
そんな中、ここには異彩を放つダンジョン配信者がいた。
「なぁ、これってどれくらい価値あるんだ?」
〝たぶん6000万円くらいでない?〟
〝いやいや少なくとも1億はいくだろ〟
〝前例がないから分かるわけないやん主なんでもかんでも俺らに丸投げしないで〟
〝そうそう、少しは自分で考えることも覚えて〟
「え、なんだよこれもしかして新発見だったりするのか?」
〝そう言ってる〟
〝そう言ってるだろぉ!〟
〝もう諦めようぜ、主になに言っても無駄なことくらい俺たちなら思い知らされただろ?〟
〝まぁそれはそう〟
「なんだよ、まぁいいや、てことはこれ金にならん可能性あるってことだろ?なら捨てるわ」
〝待て待て待て待てマジで待て!俺が買い取るから捨てないで!3000万!3000万でどうだ?〟
〝抜け駆けは卑怯よ!私が買い取るわ!私は5000万!〟
〝はぁ、ほんとにこの人たちは…(呆れ)〟
〝初見です、主さんはなにしてるんですか?〟
「あー初見さんいらっしゃい。えーと今は探索してる。あと悪いな、これは身内向け配信みたいなもんなんだ、普通の人が見ても多分”見えない”と思うから興味なかったらすぐブラウザバックしてくれ」
〝???…どういうことですか??〟
〝初見さんどうも、ほんとに主の言っている通りだから気にしないでくれ〟
〝てか多分見てても面白くないと思うわよ〟
〝???…あのーマジでどういうことですか?〟
「さて、今日は結構進んだし、帰るか」
そう一言告げ、俺は”203階”から帰る準備をする。
〝あ、初見さんまだいたら画面隠した方がいいわよ〟
〝え、どういうことですか?〟
〝簡単に言うと、ありえない速さで走るから見てると高確率で吐く〟
〝??どういうこt…うわぁぁぁぁ〟
〝あ〟
〝あ〟
〝あーあどんまい〟
今俺は198階、いや、197階を降りている。
その時俺はやらかした
「あ、初見さんもしまだいたら画面を見ない方がいいぞ」
〝もう手遅れよ〟
〝判断が遅い〟
〝まぁ久しぶりの新規だししょうがないと思うぞ〟
「そうか、すまない。」
そう言っていつものメンバーと駄弁りながら帰ってると——
「きゃああああーーー」
女性のような悲鳴が突如聞こえてきた
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