第90話 赭、うずもれた脳漿の海
【報告者】レポート②開戦と第一波
征暦997年360日12時01分~12時07分
ダンジョン発生と同時に女神領域外の宇宙圏から18体の竜が落下襲撃した。付近にいた冒険者と衛兵隊、および貴族が竜と応戦を開始、第一次戦闘(以下、第一波)が発生する。教会系貴族や衛兵隊の尽力により第一波首魁とみられる識別名:【隕鉄】落石注意!!!(レベル999相当)をふくむ10体を討伐するも、天空の貴族邸群および浮遊街に甚大な被害が発生し、マルチウェイスター家当主リンド・ソラシド・マルチウェイスター、教会派S級冒険者【保育士】【法律家】【関税官】【宇宙飛行士】の4名、貴族や衛兵隊員、街民含め合計4,298名が戦死。
またこの戦いで【錬金術師】イヴァポルートが、浮遊街を循環していたマナを全使用したことで浮遊街は機能を停止し、落下した。
赭。
赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭。
彼は気が付くと床の上で倒れていた。冷たい大理石の上に横たわる大勢の人々。老若男女問わずほぼ同時に目覚めた彼らは自らが置かれた状況が理解できず、きょろきょろと周囲を見回した。
その百人以上。
「ここはどこ?」
「冒険者ギルド?」
「なんだこれ?」
そこはまるで浮遊街のマルチウェイスター冒険者ギルドの受付のようであった。金の装飾がいたるところに散りばめられた上品なエントランス。呼び出された人たちは、全員が全員突然、連れてこられて混乱して首を傾げた。
『全員注目しな、こっちだよ』
ギルド中に響く大きな声。
一同が振り向くと、受付のど真ん中で体格のいい女性が腕組していた。逆らう気にもならないほど強そうなその女性はジロリと全員をみて、よくきたなと豪快に笑った。
有名人なのだろうか、その顔はどこかで見たことのある……のだが、残念ながら皆、なぜか思い出せないようで苦笑いをしている。そんな迷い人たちの様子をみて、彼女は不敵に微笑んで受付の奥を指さした。
女性の指さした先には、ズラリとギルド職員の恰好をした人たちがずらりと並んでいた。
『『『ようこそ、赭の間へ』』』
綺麗にお辞儀をする職員たち。迷い人たちが意味が分からず困惑して固まっていると、職員たちの中からひとり男の子がぴょんとスキップしながら飛び出した。
歳は10かそこらの神託には程遠い幼い少年。
少年はそのまま迷い人の中を進み、一人の見すぼらしい恰好の男性の前で止まった。
『はじめまして! 僕はあなたの担当のチャートトニアだよ!』
にこにこと男性を見つめながらぺこりと頭を下げる。見すぼらしい男はしばし固まった後、ゆっくりと身をかがめた。
「えーと、俺は【靴磨き】です」
『しってるー、いこー』
男の子が【靴磨き】を名乗ったその男の手を引きながら受付を抜けてその奥のギルド内部へ向かう。彼らが内部に姿を消したのを確認したあと、ギルド職員たちはぞろぞろとそれぞれの担当の元へ進んだ。
『担当の【木樵】リスチャです……』
『担当を勤めます【気球操縦士】アロと……』
『【道化師】スリザルでーす』
何百の人たちが自己紹介をしあう中、ふたりだけで先行した【靴磨き】と少年は大理石の廊下を進んだ。少年がまるでスキップをするように廊下を駆け抜ける。彼は楽しそうに笑いながら歌を歌っていた。
『とんたった、とんとんたたたー。うみに沈んだー、まっかないのりー、ここはるつぼー、いのちのるつぼー』
少年の歌に返事するように、窓も扉もない下り坂の裏から歌声が聞こえる。
『みんあでひとつになりましょう』
『ひとつでみんなになりましょう』
『ここは赭の間、血色舌禍の命の坩堝』
合唱するように、少年と【靴磨き】しかいないはずの廊下中に無数の囁きが響く。
歌の意味も、自らが置かれた状況もまったくもって状況が理解できていない【靴磨き】は首を傾げながら廊下をくだるが、延々と続く長すぎる下り道に耐えられなくなったように少年を呼びとめた。
「あのー? 僕? ここはどこ、マルチウェイスターなのか?」
『ここ? ここは赭の間だよ』
「赭の間って?」
『うーん? そうだ! 外みたらビックリするよ!』
チャートトニアが廊下の隅にあるシャッターの降りた小窓を指さす。頭も通らないほど小さな窓に、シャッター、さらに鉄格子のはめられたあまりに厳重な小窓。言われるがままに【靴磨き】が金属製のシャッターを開けると、外から信じられないくらい強烈な鉄臭さが吹き込んだ。
「血?!」
『ふごいでひょ』
チャートトニアが自分の鼻を摘まみながら返事をする。
あまりの匂いに【靴磨き】が窓を閉じようとしたその瞬間、
がしりと手が外から【靴磨き】の腕を掴んだ。
血塗れの骨のような腕が【靴磨き】をきしむほど締め付ける。
「な! なんだ!!」
『はやくひなひゃ、千切れるよ』
【靴磨き】が本気で振り払ってなんとか腕から逃れる。血まみれの腕は窓の外から何度も何度も腕を打ち付け入ろうとしてくるが、小窓は人が入るには小さく、ただただ血が飛び散るだけだった。
ニコニコと笑いながらチャートトニアが窓の外に手をふると、外からギチギチと歯軋りのような音がして腕はそのままずり落ちていった。
『いっちゃった』
「な、なんだよ……おどろかせやがって」
小窓を閉めようとおそるおそる格子に近づき、試しに【靴磨き】が窓の外を覗くと、彼は異様な外の光景に固まった。
赭。
真っ赤な空と、心臓のように脈動するぎらつく太陽。
眼下いっぱいに広がる血、血、血、血。
何千、いや何万人もの人間の血肉の海。彼がギルドと思ったその建物は血の海に浮いている浮遊街そのものだった。あまりにも悍ましい光景、だがなにより恐ろしいのは血の海から這い上がる何万もの㞔く人の死体達が何度も何度も手や体を打ち付けながらこの建物をよじ登ろうとしていることだった。
べちゃっと飛沫が上がり、近くをよじ登っていた血まみれの死体の手から血が飛び散る。
「は……?」
『外に出なかったら大丈夫だよ』
「は?……ここはなんだよ」
『でちゃったら坩堝の仲間入り! 何人か探検にいって帰ってこなくなっちゃった』
外の様子に驚いて、固まってしまった【靴磨き】を押しのけ、チャートトニアがぴしゃりと窓を閉める。
【靴磨き】が窓から後ずさりする。少しずつ、少しずつ離れるたびに彼はここに来る前の記憶をとりもどしたのか急激に顔を真っ青にした。
「俺は死んだのか……ここは女神様?」
『女神様の白の間じゃないよ。ここは赭の間』
「そほ?」
『乾いた血と脳漿の海』
少年に指さされるままに【靴磨き】が自分の頬を撫でる。さきほど飛び散った血はもう乾いていた。
血が固まって赭色の指。少し擦るとそれは赤黒にかすれて、ぼろぼろになって崩れた。
『ここは【死霊術師】の赭の間』
チャートトニアはニコっと笑って【靴磨き】を手招きした。
『僕らと契約してみんなで【死霊術師】になろうよ』
さきほどまで大理石で美しかった廊下はいつのまにか暗く変化していた。
鉄格子の扉がずらりと並ぶ。そこはまるで監獄。
赤黒の扉の裏から死霊たちの歌っているのが聞こえる。
ここは赭の間。
赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭『みんなでひとつになりましょう』赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭『〈死霊契約〉』赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭赭。
【靴磨き】は俺の手をとった。
〈死霊契約〉:【死霊術師】ナイク⇔【靴磨き】オローランド他320人
契約した死霊は物理干渉能力を持ちます。
『「契約成立。期限は【雅樂】溶け合う緑の心臓の討伐まで」』
俺は【靴磨き】に、そして他の契約してくれた死霊たちにマナを与える。さじ加減を間違えたのか、自分の中が空っぽになるほどごっそりとMPがなくなった。
『「さぁお料理の時間だ」』
MPの変化を感じたのか【蝸牛】の竜がキシャーとこちらに向かって威嚇する。竜が頭を持ち上げると扁平な体の裏にある、何層も幾重に蠢く口が姿を現した。
うねうねと揺らめく緑の触角が脈動し、竜の巨体が突進してきた。
何十もの人間の肉を削ぎ落した歯舌と、触手が俺の目の前で軌道を変える。竜は横から何かに押されたように傍の壁に激突した。
即座に振り返った【蝸牛】の粘性の口から歯舌が伸びる。
それは俺に触れる直前で誰かに掴まれたように止まった。
『たらたったったたたたたたーん』
「おりょうり! おりょうり!」
「たんたたたーん」
俺の周りに浮かぶ何十人の契約死霊たちが手を伸ばして舌を掴む。何もかも削ぎ落す鋭い歯舌といえども実体のない死霊たちは削げない。竜は必死に歯を振動させるが、まるで金縛りにあったように死霊たちの手で動きを封じられた。
『「まずは塩」』
「しおー」
「おっしおーもってきた」
「しおでもんで」
「もみもみ」
「じっくりこねこね」
何人かの死霊たちが街から集めてきた塩を数百の死霊たちが手分けして【蝸牛】の体に塗り込む。全身をありとあらゆる方向から引っ張られ、塩をもみ込まれたその竜は少しずつ縮んでいく。俺は目の前で動けず震えている【蝸牛】の口に㞔槍を突き立て、〈刺突波〉で一番危険な歯舌をバラバラに破壊した。
何十もの人間を削ぎ殺してきたであろう歯舌はあまりにもあっけなくボロ屑のような筋の束になった。
『「硬い身をほぐす」』
「バラバラー」
「いっぽんいっぽん筋トリ、トリトリ」
「すりこみすりすりー」
「たんたたたーん」
死霊たちに舌を毟られ、ありとあらゆる傷に塩をもみ込まれ【蝸牛】の体から水が抜けて干からびていく。全力で暴れようとした【蝸牛】が殻の内側から新しく触手を生やそうとした。
〈槍投げ〉
新たな触手を即座に〈槍投げ〉で縫い留める。
『「筋きり」』
「くしざし、くしくし」
「きずぐちにもしおー」
「ぬりぬりー」
「まだまだあるよ」
死霊たちがどこからか集めてきた槍を次々に渡してくる。
〈槍投げ〉
首を持ち上げたので鼻先を突き刺す。
〈槍投げ〉
尾をふろうとしたので地面に貼り付けにする。
俺は竜が動こうとするたびに、そこに槍を投げて串刺しにした。
「くしざし、くしくし。ぼくもやるー」
「ぼくもー」
「ナイ坊も俺にもかして!」
死霊たちが槍を足に、胴に、頭に突き立てる。俺も彼らに促されるままに竜に何本も槍を投げつけた。
頭に〈槍投げ〉
殻に〈槍投げ〉
尾に〈槍投げ〉
目に〈槍投げ〉
「くしざし、くしくし」
「くしざし、くしくし」
「くしざし、くしくし」
「くしざし、くしくし」
『百本めー!』
俺は動けない【蝸牛】の脳天を槍投げでつらぬいた。
『「胸を開く」』
「てんぴぼしー」
「ばっさりひろげる」
「わたぬきー」
「殻もぬぎぬぎー」
死霊たちが【蝸牛】の全身に刺さっている槍を持ち上げる。【蝸牛】の体が、びちびちと震えながら無様に浮かび上がり、広げられた。死霊たちの手で背中の殻がぶちぶちと音をたてて剥がされていく。
「かえして、からだかえして」
【靴磨き】の死霊が【蝸牛】の胸に刺さっている槍をつかんで、そのまま竜を一気に縦にひき裂いた。
裂けた腹からぼとぼとと無数の人の肉のそげた白骨がこぼれ落ちてくる。死霊たちは遺体を救い出し、そして【蝸牛】の体の中から内臓を引き抜いていく。彼らの手で【蝸牛】から胃腸が抜かれ、唾液腺がもがれ、産卵管が握りつぶされた。
「わたぬき」
「もつぬき」
「全部いらないー」
「ばっちいからすてるー」
腹を真っ二つに裂かれ、内臓をことごとく抜かれた竜は、死霊たちによってふたたび槍でひっぱられて薄くなった体を広げられた。
『「つぎは焼く」』
「ふぁいやー」
「あいやー!」
死霊たちが街中から燃えた岩や、木を持ってくる。彼らは塩ですっかり縮んで、穴だらけになった竜に火を押し当てた。肉の内側に巣食っていた【雅樂】の蠕蟲が宿主から逃げようと暴れるが、どこに行こうとしてもありとあらゆる方向から押し当てられる火の中に逃げ込むだけだった。
『じっくりにこんで』
「じか火でことこと」
「じゅわー」「じゅわー」「じゅわー」
「じゅわー」「じゅわー」「じゅわー」
「じゅわー」「じゅわー」「じゅわー」
「じゅわー」「じゅわー」「じゅわー」
「じゅわー」「じゅわー」「じゅわー」
「じゅわー」「じゅわー」「じゅわわ」
びちびちと暴れまわろうとするが、突き刺さった槍で全身をぶらさげられている竜はもはや寸分も動くことなく焼けた。声にならない【蝸牛】の悲鳴と共に磯が焼ける香りが広がる。
竜の脈打つ触角の心臓は、火から逃げようとするように必死に、より力強く蠕動した。
そしてまるで泣き声のような大声をあげて、竜は自らの首を千切った。
『さぁできました。ごはんのじかん』
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
【蝸牛】が死に経験値が入った。
転がった【蝸牛】の首、二本ある触角の片方、心臓のように脈打つ緑の物体から【雅樂】が飛び出して襲い掛かってくる。
〈叩きつけ〉
槍で【雅樂】ごと片方の触角と緑の心臓を叩きつぶす。
さきほどまで竜の体を屠っていた死霊たちがあつまってきて【蝸牛】の竜の首を持ち上げる。彼らは楽しそうに頷きながら、潰れた触角から生の脳味噌を引き出して、そのまま脳と結びついた逆側の触手の緑の心臓を抜き出した。
「できた」
「完成。ナイク用」
「【雅樂】【蝸牛】の脳の活け作り」
まだ生きているのか脳の中に蠢く緑の血管が見える。
「俺は喰わないぞ」
『せっかくつくったのに』
『食べ物に対する冒涜だ』
『食べないとMP回復しないぞ』
死霊たちが不満そうに首を振る。食べるならせめてこちらではなく体の方にしようと、吊るされている肉を見るも、竜の体は死霊たちによってすでに跡形もなく食い尽くされていた。
「めしあがれ」
彼らが持ってきた緑の脳をおそるおそるかじる。
まだ生きている【雅樂】がいたのか、命が潰れる感覚がした。
「まずい」
残りの脳を足で踏み潰す。
経験値を得てレベルがあがった。
征暦997年360日12時10分~13分
【雅樂】溶け合う緑の心臓、レベル117相当。【死霊術師】ナイクによって討伐。
あとがき設定資料集
【死霊術師】(冒涜)
※HP 5 MP 10 ATK 4 DEF 3 SPD 5 MG 3
〜死は眼に出る。瞳孔が拡散し、焦点がずれて、そして最期は色を失う〜
簡易解説:
戯:これはこれでた・の・し・み!! メメちゃん!!いい仕事するね!! さすが私!!
メ:いっしょにするな
救:一個人に肩入れしすぎるのは神の振る舞いとしてはよくないと思います。
テ:緊急事態やん、これくらいはええんちゃう? てか自分は神じゃなくて一個人のほうやんけ。
メ:是非はあとでいいの! 『勇者のこころ』頂戴!
戯、救、テ:おーばー!!
メ:……




