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響け過去の聖女へと  作者: 時雨 悟はち
十代目勇者ネル・レルキナーゼ
7/18

此の記憶に、持ち主は居らず

「……じゃあ、改めてすまなかった。君さえよければ、俺と一緒に旅に出てくれないか?」

「……ふんっ。気付くのに遅すぎなのよあんたは。まあ……うん、いいわよ」

「ありがとう、本当に」


後日。怪我を治してもらった後、モモイに改めて話す場を設けさせてもらった。

俺はそこで、モモイの努力を知ったこと。モモイの強さを知ったこと。何も知ろうとせずに断ったこと。そして、それらすべてを含め、謝罪と、俺と一緒に旅に出てほしいと伝えた。

モモイは、そんな俺も許してくれて。その上で彼女はその申し出を快く受け入れてくれた。


「それから、ムカゼ。その……俺はまだ、人生経験も、人格も、全部が未熟だけど、それでも俺に……俺と一緒に、その……」


ムカゼにも、俺は謝罪をしなければならないのに。俺は何を言っていいのかさっぱり出てこず、言葉がぐちゃぐちゃに出てきた。


「……わかった。わかったからもう喋んな。お前が口開くと、余計なことを口走りそうで怖い」

「……す、すまん」


俺はしょんぼりしながら、長々と語られる説教に耳を傾けることしかできなかった。




こうして。


俺、ネルと。

戦士、モモイと。

魔導士、ムカゼと。

今世紀の、魔王討伐のパーティが決まったのだった。



そう。これが、すべての元凶で、始まりだった。



俺らは永い旅を経て。知識も、戦闘も、実力も。何もかもレベルアップさせていった。

決して楽なだけな旅路じゃなくって。それでも、楽しい旅で。きっと、魔王と戦うという使命さえなければ、俺らはもっとずっと。仲良くなれてたはずだった。


「あ……あ…愛しき……我が王よ……。憎き人間は、こんなにも____」


そう言って、幹部の一人は消えていった。


「……っ」

「……ネル。行くわよ」

「モモイ……でも、お前……」


俺は、モモイを反射的に止めようとする。しかし、モモイは止まろうとしない。


「モモイ!お前……!」

「大丈夫よ……利き手は元々、右だからね。こんなの、布でぐるぐるまきにしとけばいいのよ」

「お前……ムカゼが死んだからって!」


そういった瞬間。俺の目前にはモモイの斧が迫っていた。


「なっ!」

「……それとこれとは、関係ない……!」


それだけ言って、彼女は斧を背中に担いで奥へと進んでいってしまった。


「……っくそ!どうして……」


俺は、そばに置いていた仲間の亡骸をもう一度抱えながら、そうぼやいた。

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