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響け過去の聖女へと  作者: 時雨 悟はち
そこに眠るのは、伝えられし竜
17/18

切り開く先、巨大な影が蠢く

未開拓区域 ?層


「……妙だな」

「妙ね……」


あのじめじめした雰囲気から一転。神秘的で幻想的な、不思議な雰囲気の廊下が一本伸びていた。

先ほどまで死ぬほどあったトラップが一切なくなり、嵐の前の静けさといった感じだった。


「……あれ、ネルさん。あの先、なんかありますよ」

「ん?どれどれ……」


ヨネルさんに言われ、奥の方を見たものの、なにがあるのかは全く見えなかった。

むしろ、その先は行き止まりだった。


「先って……この先、行き止まりじゃないの?」

「え?いや……この先、繋がってますよ」


そう言いながら、ヨネルさんは行き止まりの壁を進んでいった。

うん、進んでいった。文字通り、すり抜けて。


「……へ?」



「なんでこんな妙なところで勘が働くんだ?」


壁をすり抜けた先は、やけに広く、薄暗い場所だった。

自分で見つけたはずのヨネルさんは、なぜか自分から入ったそこに震えていた。


「おそらく、今まではこの道を見つけれた人がおらず、結果的にエンカウントしたモンスターたちに消耗させられ続けて倒れていったんだろうな」

「ということは、この先を攻略すれば、ここを完全クリアになるってことだな」


ここがおそらく最下層。このダンジョンをダンジョンたらしめるボスがいるはずだ。


「……なあ、勇者さん達?」

「どうした?モルト」


急に彼は、やけに真剣な目を向けてきた。思えば、途中から彼は、剣を振るうたび、何か思うとこありといった顔をしていた。もしや、剣に何かあったのだろうか。体に不調とか、なければいいんだが……。

と、思っていたが、考えるだけバカだったらしい。

なんせ、つづけた言葉は


「腹が減ったんだが、飯はないか?」


だったから。

こいつ、緊張感ってもんがないのか?


「……ムカゼ、なんかわかることはあるか?」


俺は、モルトを無視することに決めた。どうやらムカゼもそうすることにしたっぽい。


「なんか食うもん……」

「ここら辺の草も花も。あまり見たことないものだ」

「無視か……?無視はひどいんじゃ?」

「これでも食っときなさい!」


耐えかねたモモイが、そこら辺の草をちぎり取ってモルトの口にねじ込んでた。

不気味な風が渦巻く空間。その奥に、何かが見えるような……。


「……デカくね?」


紅い閃光が二つ。まるで、ギラギラと光らせた目玉のような……。


「……グルルルルル!」

「まずいっ!下がれ!」


叫びながら、俺と声に反応したモモイが、その場にいた他三名を抱えて後ろに飛び下がった。

飛び上がった刹那。俺らがいた足元はドロドロに溶けた地面が赤黒く光っていた。


「おいおいおい……マジかよ……」


その紅い閃光の正体。のっそりと立ち上がったそれは、首の長いトカゲに翼を生やしたような見た目をしていた。


「なんでこんなとこにドラゴンがいるんだ!?」


ここを守る主を見た俺の叫びに呼応するように、ドラゴンはその地鳴りのような叫びで墓全体を揺らした。



「ハワワワッ!ど、ドラゴンなんて初めて見ましたよ!ど、どうするんですか!?」

「どうするもなにも、こうなった以上倒すほかないだろう!」

「ネルさん、倒せるんですかこれ!!」

「やるしかないんだ!腹括れヨネル!」


ドラゴンを前に弱音を吐くヨネルさんに活を入れながら、俺らは臨戦態勢に入った。

俺含めた全員。少し震えていた。


「……とりあえず、隙を見てダメージを与えていくんだ。攻撃のパターンがわかるまでは無理に突っ込むんじゃないぞ!」

「「「了解!」」」


それと同時に、俺らとドラゴンとの戦闘が始まった。

正面から飛び込むと、ドラゴンは前足を大きく振りかぶり、鋭いかぎ爪を振るってきた。

避けた先にあった崖が、斬撃で削れていた。


「こりゃ、当たったらひとたまりもねぇな……」


正面からの攻撃はなしだ。かすっただけでも死ぬだろう。モモイがドラゴンの気を引くように攻撃をしてる隙に、後ろに回り込む。


「まずは一発!うおっ!」


ふるった剣は、角度・勢い・力の入り方すべてにおいて完璧なクリティカルヒットだった。はずなのに。

バキッ!と嫌な音を立て、剣が折れてしまった。


「うっそぉ……」


唖然とする間もなく、ドラゴンはその尻尾を思いっきり振ってきた。


「あっぶ!」


身にまとう鱗が固すぎて、モモイもネルも碌なダメージを与えられていないように見える。


「くっそ……なんか弱点ないのかよ……」


ムカゼとモモイも戻り、どうすればいいのかとドラゴンを見ていたが、どうやらそんな余裕はないらしい。


「ネルさん達!大丈夫ですか?」

「ヨネルさん、ありがとう」

「いえ。それより、どうやってあのドラゴンを倒すんです?」


皮膚は鱗に覆われて攻撃が通らない。ならば顔か?とも思ったが、見た感じ顔の鱗も相当固そうだ。それに、顔に飛び込んであの炎を受けてしまえば、即お陀仏だろう。


「グルルルルルル……」


所々口から

漏れ出ている炎が、もうそろそろ限界のようだ。吐きだす準備をしてる。


「まずいっ!離れるぞ!巻き込まれたらたまったもんじゃない!」


モモイ達が俺の声に合わせて離れる中、なぜかモルトだけはさっきからずっと微動だにしなかった。


「モルト!止まってたら死ぬぞ!」


俺がそう声をかけても、依然としてモルトは動かない。

遠くを見つめ、まるで何かを見つける前のような顔をしていた。

しかし、ドラゴンは変わらず、その口から漏れ出そうな炎を吐きだそうとしていた。

既に俺が踏み出している距離からして、あのまま炎を出されたらとてもじゃないが間に合わない。


「まずい間に合わない!モルト!」


俺の声が発せられる前に、ドラゴンが炎を吐きだした。

一直線にモルトに襲い掛かる。さっき地面を赤黒くしたのを見るに、人が食らえばまず致命傷だろう。


「モルト!」


俺が手を伸ばすまもなく。ドラゴンが放ったその炎は、モルトに直撃した。

ゴウゴウと燃える火の海。モルトはその炎に飲み込まれてしまった。

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