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響け過去の聖女へと  作者: 時雨 悟はち
城壁の影に奔るもの
11/18

玉座に跨るものの依頼

「ふぅ~。やっと着いたわね~。ウォルキンダム」


1週間程度かけて向かっていたのは、城塞都市ウォルキンダムというところだった。

初代勇者が誕生したころから、勇者の目標地点及び魔物からの襲撃の最終防衛ラインの役割を果たしている街だ。


「順に都市を訪ね回るべし……か。一体どういう意味なんだろうか……」

「多分、順にこれば、段々と強くなったりするんじゃないですか?」

「え、そうなの?」


ヨネルさんの発言にそう尋ねると、彼女はあ……といった顔をして


「も、もしかしたらですよ?あんまり、本気にしないでください」


といった。

すると、俺らの下に、やけに大きな集団がやってきた。

高級そうなものを身にまとい、堂々とした人物が一人。そしてそれを取り巻く何百人もの護衛。

なるほど。国王直々、ってことね。


「ようこそ。10代目の勇者様と、そのお仲間様たち。城塞都市ウォルキンダムの国王、キンダム13世です」

「どうも。10代目勇者のネル・レルキナーゼです」

「はるばる、遠方の地からありがとうございます。どうぞごゆっくり、この街でお過ごしください」


そう言いながら、キンダム13世は手を指し伸ばした。だから、俺はその手を握り返した。



その後、俺らはキンダム13世の用意した宿に向かった。

すると、俺らの下に、キンダム13世の隣にいた側近のような人から話があると言われ、俺らは王宮に向かった。


「ネル殿。実は、この地には代々、勇者に渡すよう言われている伝説の武器があるんだ」

「伝説の武器、ですか?」


キンダム13世からの話を要約すると。

この場所、ウォルキンダムには、歴代の勇者が継いできた伝説の武器「エクスカリバー」というものが眠っているらしい。それはなんでも、勇者にしか手にすることはできず、そのほかの物は触ることすら無理だという。だが、万が一魔王のみが生まれ、勇者が生まれなかった時の為、勇者がいない間はずっとエクスカリバーの眠る場所に建てた研究所で研究がなされているらしい。

しかし、その場は最近「コアユピル」という魔物の成す魔物の群れに襲撃を食らってしまい、以来ずっと魔物の巣窟になっているそう。

そこで、勇者である俺に、討伐作戦を依頼したいとのこと。その報酬は、そこにあるエクスカリバーと、追加の金一封だそうだ。


「近頃、魔王誕生から徐々に、魔物の力が高まってきています。我々も人材を送り込んでは見たのですが……。最早対処できるのはあなたがた勇者様たちだけです」

「……わかりました。どのみち、困っている人たちを、見過ごせはしませんし」

「おお……ありがとうございます……!」


そんな感じで、俺らは研究所奪還のクエストを引き受けることになったのだった。




「……」


ネルさんがキンダム13世と話しているのを見ながら、私はあの夢のことを思い出していた。



あの夢で見たこと。まず、目の前の13世は裏切り者だ。どういう手立てかはわからないが、あの研究所に何か細工をしたのは間違いなく彼だ。

そして、そのせいで亡命を余儀なくされた人が一人。彼は最期、ネルさんたちに着いて行って、その先でコアユピルに殺される。

と、私が介入しなかった場合のシナリオは、こうだ。


「……私が、変えてやる」


彼はその未来で、とても苦しそうな顔をしていた。泣いていた。私は、そんな未来を変えるために、着いてきたんだ。

そんな決意を抱いていることを。私はまだ、ネルさんに伝えられていなかった。




王宮を出て、俺らは宿に向かいながら話していた。


「……ん?」


ふと、道中で気になるものが目に入った。

大通りのような通りの路地裏で、女の人が男二人に絡まれているように見えるところだ。


「ごめん、ちょっと先帰ってて」

「え?どうしたネル」

「あー……ちょっとトイレ」


それだけ伝えると、俺は来た道を戻ってあの路地に入った。


「このっ……放しなさい!私はこの国の……」

「あーはいはい。あのね、その話が本当なら護衛の一人二人は……」


会話のテンションを聞く限り、やっぱ俺の勘違いじゃなかったらしい。


「おい。何してんだ」

「あ?今お楽しみ……って、え」

「な、なんでここに勇者が!?」

「たまたま見かけたからな。それより、早くその手を放せ」


そういうと、男らは「チッ……」と舌打ちしてどこかへ行った。


「あ……あ、ありがとう、ですわ……」

「じゃ、これで。気を付けて帰ってね」

「あ、ちょっとお待ちくださいまし!」


帰ろうとしたが、呼び止められてしまった。


「あー……大丈夫。お礼とか、全然」

「し、しかし……」


振り向かず、俺は帰路に着いた。

なんせ勇者は、ああいう市民たちからの血税の下で成り立っている。それこそ、サービスの無償化だったりとかは、毎年国別に納められてる勇者税で賄われてるんだ。お礼なんて、もうとっくに間に合ってるし、実質これは俺のお礼みたいなもんだ。

だから、俺は何かお礼される前に帰ろうと思ったのだ。




「い、行ってしまいましたわ……」


何やら、急いでいたようにも見えましたが……。


「お嬢!?」

「あ、爺や!よかったですわ……」

「一体なぜこんなところに……それより、大丈夫でしたか!?」

「ええ……とっても素敵な、勇者様に助けられましたの」


ほっぺたが熱い……。久しぶりの感覚ですわね……。

さっそうと現れて、さっと助けて。そうして何も見返りを求めずにお帰りになられる……。


「爺や。今すぐお礼しに行きますわよ。勇者殿の宿泊宿を調べておくんなまし」


次に会ったときには、どんなお礼をしましょうか……。

そんなことを考えながら、私は馬車に乗り、王宮へと帰宅した。

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