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トイレを覗かれた話

作者: イトー
掲載日:2024/05/28

 いきなりおっさんの下ネタですまんな。

 特異な嗜好の話でもない。


 たまにはエッセイでなにか書くことはないかなと考えて、何年か前にあった出来事を。


 エッセイ向きではないし、これという学びも面白さもざまぁもオチもない話ですが。

 言うなれば、単なる思い出話。



 実在の店舗なので念のため一応伏せ字にしますが。

 休日だったその日は大手スーパーであるイOンに行きまして。

 買い物を済ませ、帰る前にまあトイレに寄っていこうと。


 洋式の個室に入ると、誰かが入ってきたような足音がして、隣に入ったのが鍵の音で分かりました。


 特には気にせず荷物を置き、ズボンを下ろして便座に腰掛けると、

「こんにちはー」

 と頭上から声がしました。


 ギョッとして見上げると、 目の前の壁と天井の間のスペースから、8、9歳の男の子がこちらに顔を出していたのです。


 壁に両手を掛けていたので、便器のタンクか何かの出っぱりを足場にしてよじ登ったのでしょう。

 現在は改装されて狭くなっているかもしれませんが、当時はその隙間が結構広かったのです。


 驚くと声が出なくなるというのは本当のことで、

「え、ちょ、あ」

 と、言葉が出てこない。


 1番近いのは、アニメのドラゴンボールで物凄い強敵を目の当たりにしたときなどにキャラが出す、

「あ……あ……ぁ」

 という、あれです。


 見るな見るなあっちいけ、という感じで手を振るのが精一杯。

 たしか5秒ほどで、相手は顔を引っ込ませてトイレから駆け足で出てった模様。


 トイレに1人残され。

 いたずらで覗かれた怒りよりも、理解不能なモノと遭遇した、恐怖に近い感情が湧いてきました。


「しょせん子供の悪ふざけだ」

 などと余裕ある対応や気分にはとてもなれず、

「なんでなんで、さっきのあれなんだったんだ? 普通に考えて、人がトイレにいるところ覗くか?」


 正直、軽いパニックを起こしました。

 だってショックを受けるでしょう。

 見ず知らずの人に自分のお股を、それも用を足そうとしている瞬間を見られるのですから。


 無邪気にああいった行動ができる子供を、つい大人の常識ではかってしまい、ドン引きでした。

 ドン引きを超えて、なんというか、短時間で死ぬほど落ち込んだ。


 みんな覚えておこう。

 ジーンズとトランクスを足首まで下ろした姿を赤の他人に見られると、人間は落ち込むんだ。


 また誰かが覗き込んでくるんじゃなかろうかと。

 やたら上を気にしながら用を足して、すぐに出ると、その子供が食品売り場の遠くのほうで、母親らしき女性と一緒にいたのが見えました。

 シャツの柄と眼鏡と髪型、間違いない。


 ここはきちんと追いかけてでも注意するか、と1度は思いましたが。

 覗かれた証拠などはないですし、厄介なおっさんがわけ分からん難くせをつけてきやがった、と母親に店員や警備を呼ばれたら大幅に不利。


 何より買い物客が大勢いる中で怒声まじりの口喧嘩にでも発展したらみっともないこと、この上なし。


 たとえ正当性を主張して言い合うにしても万が一、子供が言い逃れのつもりで、

「自分のほうが何かよからぬことをされた」

 なんて言おうものなら、証拠もなしにこちらが問答無用でお縄です。

 ポリスマンにしょっぴかれます。


 SNSには変態中年男性と酷いヘッドライン付きでトピックスとして流れ、炎上して家や職場まで焼き尽くされることでしょう。


 「買い物中の母子」と「当てもなく店内をぶらぶらしてる孤独なおっさん」では、まずおっさんは信用されません。


 子供は嘘をついたりするはずがない天使。

 対して、おっさんはその場にいるだけで有害。

 そういう偏見が支配する世の中です。


 このおじさんは悪人ですと叫ばれたら、釈明もできずに周りから袋叩きにされるのがオチです。

 ただでさえ、何かしらの理由をつけて無責任に他人を殴りたい奴で世間は溢れていますからね。

 まったく恐ろしい世になったものだ。


 前例として、突然犯罪者呼ばわりされ、取り押さえられた男性が亡くなった事件もありますしね。

 絶対同じようなことが起こらないとも言えず。


 いろいろ考えましたが、結局なにも言えず、トボトボとその場を立ち去ることになったのでした。

 チクショー釈然としねえ、と思ったのを今でも覚えています。


 当時ならまだギリギリのギリで子供のいたずらで済みますが、あの子供が覗き魔などになっていないことを心から祈ります。


 あと親、ちゃんとしつけて。

 こうやって笑い話で済んでるうちにな。

 こういう場合、うちは放任主義だから、とかさ、そういう理屈は通用しないぞ。


 終わり

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