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超絶美幼女先輩たん  作者: 和
第1章
7/14

6話 幼女先輩たんと水族館

 ゴールデンウィークもちょうど半ばの金曜日。

 気温も春にしては大分高く半袖を着ている。


 俺は目的地の水族館行きのバス停の近くのベンチに一人座っていた。


 現在時刻は13時ちょうど。集合時間である。

 すると、どこからともなくドタドタっと足音が聞こえ、振り向くとさゆ先輩が居た。


「遅れたか!?」


 少し息を切らしているが、定刻通りである。


「いえ、遅れてませんよ」


 一度先輩をベンチに座らせ、息を整えてもらう。


 先輩も今日は半袖のようだ。綺麗なタマゴ肌も顕になっている。

 また、膝下までのスカート、前回とは少し違ったキャップも先輩の可愛らしさを引き出していた。

 今日は全体的に色素の薄いコーデでまとまっている。


 絵になるなあ、と呟くつもりはなかったが声に出てしまったらしい。先輩が、そうか、と帽子を深く被る。


「あと十分程で次のバス来るみたいですよ」


「そうか、楽しみだな」


 先輩は爪先を地面につけたまま踵をふわふわと揺れ動かす。こういう所や明るい表情は先輩らしい無邪気だなと再確認する。


「優も楽しみか?」


「水族館なんて小学生ぶりで楽しみですよ」


 それは良かった、と軽やかな口調だった。余程楽しみだったのだろう。




 バス内でも雑談をしながら、街中の面白味のない景色も見ながら、気づけば水族館は目に入っていた。


 中に入ると少し冷房が効いているようだ。肌寒く感じる。先輩をチラッと見るが、寒そうにはしていなかった。

 もとより先輩が気を取られていたのは、人の多さだ。


 単独、家族連れ、カップル様々な人が訪れていた。ゴールデンウィークの真っ只中だ。ある程度は予想していたが、これほどまでとは思わなかった。


「人、多いですね」


「ああ、私もこの多さには驚愕だ」


「離れないようにしましょう」


「そうだな」


 順々に中を巡っていく。

 内装は綺麗なものだった。床まで透明にしてまるで海の中にいるような感覚を味わったり、同種の魚が群れを率いて大きな水槽をグルグル回っていたりと、昔とはまた違う楽しさを味わう。


 先輩は特に海月が好きなようで、じっと見ては優しく微笑んでいた。


「こんなに綺麗なのに触れば毒とは酷いな」


 1匹の海月しか入っていない水槽を長め呟く。

 あまり見た事のない先輩の表情に見入るも、会話を途切らせないよう知識不足なりに返答する。


「美しい物には総じて毒があるものですよ」


「それでも美しくあるなら一度は触れてみたい」


「......一度お手洗いと休憩しましょうか」


 いつもと違う先輩に調子を狂わされてしまわないよう、ちょうど見渡せばお手洗いがあったので提案する。


「では、この場所で集合するとしよう」




 男女共にトイレは混んでいたが、俺は比較的早く戻ってきた。女性の方は更に列が長くなっている。


 戻ってくるまで、スマホで時間を潰しながら待っていた時、ストンっと何かが落ちた音がする。


 視線を音の鳴るほうへ移動させると、財布が落ちていた。その先には少し慌てた人物。

 その人が落としたもので間違いないだろう。

 俺は財布を拾い、すみません、と呼びかけるが向こうは振り向かない。


 やっとの思いで追いつき肩を叩く。


「落としましたよ」


「あ、ああ、ありがとう」


 大の大人が忙しなくキョロキョロしている。


「どうしたんですか?」


「娘とはぐれてしまって......」


 スマホをチラッと見ると先輩から『少し遅くなりそうだ』とメールが入っている。『俺も少し遅くなります』と返す。


「一緒に探しましょう、どんな子ですか?」


 相手は動揺しているが、一緒に探した方が早いです、と言い切って共に探す。


 ........................。


「あ、ありがとうございました!」


 結局、迷子センターにて親子は再開を果たし、俺は集合場所に戻る。


 かなり時間がたったことに気付き、真昼よりかは減った人の中を早足でかき分ける。


「先輩!」


 先輩は先程と同じ海月をじっと眺めていた。


「......大丈夫か?」


「はい......すみません! 遅くなって......待ちましたか?」


「大丈夫なら構わん。私はお腹でも下したのかと思っていたぞ」


 口調にいつもの明るさが少ないことには容易に気付けた。相当待って退屈にしていただろう。


 時間を見るともう夕方ごろ。予定していた帰る時間まであと僅かだった。


「......もう時間だな。残りは少し急ぐか」


「はい」


 それ以上は何も言えず、歩き出す。

 すると、後ろから引かれる感覚がある。


 さゆ先輩が俺の手をグッと握っていた。


「......一人は慣れているが、ちょっと寂しかったな、と......」


 先輩は俺の手を掴んでいる逆の手で帽子を深く被る。しかし、今度ばかりは赤いことが丸分かりだった。


 申し訳なさや、嬉しさ相まって俺も特に手を離す理由はなかった。ただ、先輩とは違い、俺は恥ずかしさをあまり感じなかった、と思う。


「じゃあ、行きましょ」


 並んで歩く姿は、周りから見ればさながら......いや、自分にはらしくないと否定し、残りを早足でかける。




「楽しかったか?」


 水族館を出たあと、先輩がこちらを見ずに聞いてくる。


「もちろん、また来たいくらいです」


 率直に楽しかったことを継げる。先輩も満足のいく返答だったようだ。嬉しそうだ。


 歩いてバス停へ向かうが、着く頃にはいつの間にか手は離れていた。


 帰りのバスでは真逆の景色を見る。

 先輩は疲れたのか、目を瞑っている。


 集合した駅につくと、起こさずとも先輩は目を開く。寝ていたわけではなかったようだ。


「じゃあ先輩、さようなら」


「ああ、またな」


 先輩の後ろ姿を見送ってから、俺も帰路に着く。


「今日は本当に暑いな」


 一人でボソッと呟く。

 特に夕陽が差す時間ではなかった。

作者は照れる女子が大好きです

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