プロローグ
「おい後輩、邪魔だ。そこを退け」
後ろから甲高い声で高圧的な態度で話しかけられたと振り向くと、そこには誰もいない。
「聞こえなかったのか?もう一度言う。そこを退け」
声がする下を向くとそこには高校生らしからぬ風貌をしたこの学校一有名な『幼女先輩たん』がいた。
有名ではあるが俺──平 優は幼女先輩たん──天宮 さゆに出会うどころか見たことさえ初めてだったが、この小ささは噂のその人しか考えられなかった。
「お主、耳が悪いのか!?そ、こ、を、ど、け!」
そこまで一音一音ハッキリ言われなくても、とうの前に気付いているのだが......。
「す、すみません。『天宮先輩』がいらっしゃると思わなくて」
「うむ、初対面の私を『先輩』と呼称する者に悪い人は居らぬ。その、ついでと言ってはなんだが、そこにある本を取ってはくれないか?」
そこにある本。俺は今図書室にいるので、本があるのは間違いないが、幼女先輩たんが指さしたのは高校生一年生男子平均身長の俺が手を伸ばして届く高さである。
俺がいなければどうやって取るつもりだったのだろうか。台はあれど、補助程度にしかならないだろう。
「お主今、私には台があっても届かぬ、なんて考えなかったか?」
訝しげな顔をしてしまったためか苦言を呈される。
「いえいえ、この本、パッと見ると難しそうだな、と」
苦し紛れの言い訳だが、難しそうなのは本当である。高校では習わないであろう物理学の本だ。
「ふふん、私には丁度良い難易度である。どうだ、私の凄さが分かるか?尊敬しても良いぞ?」
尊敬、という言葉がどうにも似合わない。
小学生に自慢されても、凄いね凄いねと愛らしくなる程度である。
「ええ、凄いですね、天宮先輩は」
「そうだろう......ところで私はお主に名を名乗ったか?」
名乗られたことはなくてもその幼女さは有名です。なんてことは言えない。
「先輩は顔が広いんですよ。一年生は天宮先輩の事を皆知ってますよ」
これは事実である。
すると、幼女先輩たんは満点の笑顔で
「そうか!私は有名人か!」
と、屈託のないその姿に俺は不覚にも動揺した。
美人、いや違うな......。美少女、この言葉が近いだろうか......なんというか、『美幼女』であった。
「おっと、私はこの本を借りておいとまするとしよう。ではな!」
「え、ええ、さようなら」
俺は少し幼女先輩たんに興味が湧き、もう少し話たいな、とは思ったものの、別段話題がない。
仕方がない、また今度会えたらいいな、なんて耽っていた矢先に、幼女先輩たんが振り返る。
「そういやお主、名はなんという?」
「た、平 優......です!」
「そうか、優か。この礼はまた今度する!」
幼女先輩たんは俺に告げると足早にカウンターへと向かっていった。
それに見惚れていた訳ではないが、その場から微動だにしなかったのは事実である。
「また今度、か」
幼女先輩たんが有名になるのがなんとなく分かった気がする。
それは体格だけでなく、あの笑顔は人の目を引くものがある、直感がそう言う。
幼女先輩たんも図書室から出ていった後に俺も帰ることにし、扉に手をかける。
ふと、頭を過ぎったのだ。
「超絶美幼女先輩たん......かな」
初投稿作品です。
どうぞ暖かい目で作者と超絶美幼女先輩たんを見守ってください。