表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/220

No.08:即刻連絡をとれ!

 

 夜の9時半過ぎ。

 タイムカードを打刻して、誠治と2人で裏口から出る。

 ほどよい疲れと火照った頬に、夜風が気持ちよかった。


「そういえば瑛太、例の美少女と連絡取ってんの?」


「いや……特に取ってないけど」


「おまっ、なんでだよ!」


 いや、そんな勢いで言われてもな。

 

 あの日の夜「今日は本当にありがとうございました!」っていうメッセージが来て、適当な返事を返してからそれっきりだ。


「瑛太、今彼女いないだろ? あんなアイドルばりの美少女なんて、そうそういないぞ」


「いやまあ、そうかもしれんけど。そういう誠治はどうなんだ? あのエリちゃんって子と、連絡取ってるのか?」

 俺は話題をそらす。


「あったりまえだろ? あんなに可愛いJK、放っておくなんてことできるか。ただあのエリちゃん、結構手強いんだ。のらりくらりとかわされてる。案外男慣れしてるのかもしれん」


 この誠治を翻弄するだと?

 それはすげーな。

 エリちゃん、恐るべし。


「オレのことはいいんだよ。瑛太、このチャンスを放っておくのか?」


「いや、チャンスなのか? それに向こうだってどう思ってるか……俺はただちょっと助けただけだし」


「もうこれだから瑛太は……」


 やれやれ、のポーズを取る誠治が、果てしなく鬱陶しい。


「あの子の表情見たか? アレは恋するオトメの表情だぞ。それに彼女だけじゃなくって……あーもう、いいや! とにかくこのまま連絡しないのは罪だ! 即刻連絡をとれ!」


 なんか知らんけど、誠治がまくしたててきた。


 俺は「……善処する」と返すのが精一杯だった。


        ◆◆◆


 お昼休みにお弁当を食べた後、私はスマホ片手に文章を一生懸命考えていました。


「まだ送ってないの?」

 

 隣りでエリが呆れています。

 エリは同じクラスで、いつも一緒にお弁当を食べています。


「そんなこと言ったって……」

 そんな簡単に送れたら、苦労はしません。


「大好きです、チュッ♡ って送ったら?」


「で、できるわけないでしょう!」

 たまにエリは意地悪です。


「でもエリもびっくりしたわー。あのとき明日菜があんな風に男の人のLime聞くなんてさ。今までそんなこと一度もなかったじゃん」


「それはそうだけど…」


 エリの言う通り、いままで男の人の連絡先を自分から聞こうとしたことは一度もありませんでした。

 でもあの時……このまま会えなくなってしまうなんて、絶対にイヤ!って思ったんです。


 せっかくLimeを交換したのに……

 あの日お礼のメッセージを送った以降、私はまだ瑛太さんに連絡が取れずにいました。

 Limeの文章を書いては消しての繰り返しです。

 男性に特に用もないのにメッセージを送るのが、こんなに難しいことだったなんて知りませんでした。


 やっぱり何か口実が必要でした。

 だから昨日チーズケーキを焼いてみたんです。

 とても上手に焼けました。

 生モノなので、早めに届けたいです。

 あとはLimeで連絡をして届けるだけなのですが……。

 

 昨日からずっとメッセージを考えてました。

 でもまだどう書いていいのか、迷っています。


「そういえばエリは、誠治さんって人とは連絡を取ってるの?」


「うん。向こうから速攻でメッセ来たよ。こっちも適当に返事返してるけどね。あの人見るからに遊び人だからさ、だからまあ付かず離れずみたいな感じ? でも家の車をたまに運転してるらしいから、いざってときにちょっと便利かも」


 そうでした、エリはこういう子でした。

 決して悪い子ではないんですよ。

 でも割り切っていると言うかなんというか……今は彼氏はいないらしいんですけどね。


 私がスマホとにらめっこする時間は、もう少し続きそうでした。

 早く送らないと……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 普段の友達との会話は敬語じゃないのに、地の文は敬語なの違和感あります
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ