No.38:約束です!
食事をしながら、俺たちはいろんな話をした。
大半は誠治のどうでもいいウンチクだった。
ナポリにナポリタンはないだとか、ミラノにドリアはないだとか、ジャワ島にジャワカレーはないだとか、本当にどうでもいいような話だった。
しかし何故か、JK2人には好評だった。
ランチタイムのサービスとして、メインを頼めばワンドリンク無料だ。
俺と誠治はホットコーヒー、女性陣は2人ともアイスティーで締めた。
会計は前回のマクドと同じ、俺は明日菜ちゃんの分を、誠治はエリちゃんの分を支払った。
2人とも恐縮していたので、井の頭公園で彼女たちにアイスをご馳走してもらうことにした。
幸い今日は、お昼間の気温が高い。
「詩織さん、カッコよかったです」
「うん、そういうお客さん多いよ」
そう、詩織さんは女性客にもモテモテなのだ。
店を出た俺たちは、吉祥寺の駅を抜けて井の頭公園へ向かう。
丸井の横を左に折れ、七井橋通りを抜けていく。
おしゃれなカフェや画廊を目にしながら進むと、突き当たりがもう井の頭公園だ。
黄色く色づいたイチョウの木が目に入った。
赤、黄色、緑のコントラストが美しい。
休日なので、やはり人通りは多い。
池のほとりの売店で、小ぶりのカップアイスをJK2人に買ってもらった。
人が多すぎて、座れるベンチがない。
俺たちは池の周りの柵にもたれながら、横一列になってアイスを食べ始めた。
「冷たくておいしいです」
俺の横で、明日菜ちゃんは満足げにそう言った。
「瑛太さんの実家の方だと、もっと紅葉が綺麗なんじゃないですか?」
「ああ、こんなもんじゃないよ」
そう、俺は長野の実家で見慣れているので、この程度の紅葉だと期待外れなのだ。
「10月ぐらいから徐々に色づき始めるんだけど、ピークになると本当に綺麗なんだ。山全体が色づいて、ちょっと感動モノだよ。毎年見てるけど、見飽きなかったなぁ」
「えー、そうなんですね。見てみたいです」
「いつか見においでよ」
「え? いいんですか?」
「うん、ていうか秋もいいけど、夏もお勧めだよ。川遊びもできるし、バーベキューとかしても楽しいと思う。来年の夏休みとか、皆で企画しようか?」
「えーっ! 本当ですか!? 絶対ですよ!」
俺はこんなに明日菜ちゃんが食いついてくるとは思わなくて、驚いてしまった。
「約束です!」
明日菜ちゃんは、可愛らしく小指を立てた手を出してきた。
俺は自分の右手の小指を立てて、明日菜ちゃんの小指に絡める。
彼女の小さな小指の感覚に、俺の心臓はちょっと落ち着きをなくした。
「嘘ついたら、唐揚げ千個食べてもらいます」
「微妙な罰だな」
それを見ていたエリちゃんが、「なになに?」と聞いてくる。
明日菜ちゃんが説明すると、「えーっ、エリも行きたい!」と乗っかってきた。
「よし、じゃあ来年の夏は長野ツアー決定だな。瑛太の実家って、オレたちが泊まれるような部屋はある?」
「ああ、古い家だけど無駄に広い。部屋はいくつか余ってるから、そこは大丈夫だ」
母親が掃除が大変だってボヤいているのを思い出した。
まあ皆で避暑に行くのであれば、お金もかからないし良いプランだと思う。
「なんだか楽しみになってきました」
明日菜ちゃんの目が、期待に膨らんでいた。
「といっても、所詮は田舎だからね。若い女の子が楽しめるような所があるかどうかは、疑わしいよ」
「いいんです。瑛太さんのご実家に行くことに、意味があるんです」
「だってさ、瑛太」
誠治が茶化してきた。
横でエリちゃんも、ニヤニヤしている。
俺たちは公園内を移動した。
池の橋を渡ったりして、いろんな角度から紅葉を見て回った。
俺的には色合いが若干不満だったが、JK2人は楽しそうだ。
その後歩道橋を渡り、自然文化圏という小さな動物園のような場所に移動した。
リス園があったり、カピバラなどの動物がいて家族連れで賑わっていた。
ここでもJK二人はテンションが高く、スマホで何枚も写真を撮っていた。




