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33/220

No.33:元カノさんの来襲です


「これは由々しき事態です!」


 お好み焼きをいただいて、瑛太さんのアパートからの帰り道。

 私は胸元で拳を握り、小声でそう言いました。

 石垣の上の猫が、不思議そうに私を見ていました。


 元カノさんの来襲です。

 瑛太さんはお友達になった、って言ってましたが、元カノさんはきっとそれ以上の関係を望んでいるのではないでしょうか。


 瑛太さんの元カノさんです。

 そんなの綺麗な人に決まっています。

 きっと女優さん並みに綺麗で、モデルさん並にスタイルがいい人です。

 元カノさんはまた瑛太さんと、恋人同士に戻ったりするのでしょうか。

 あのロフトの上で、そ、その、エッチな事をするようになるのでしょうか。


「そ、そんなの、耐えられません!」


 瑛太さんと、もっと親交を深めないといけません。

 そもそも……


「そもそも瑛太さんは、私のことをどう思っているのでしょうか」


 瑛太さんは優しい人です。

 でも私に対する視線は、恋人に対するそれとは違うような気がします。

 なんていうか……妹を見ているような。

 そういえば、瑛太さんには兄弟姉妹はいらっしゃるんでしょうか。

 今度聞いてみましょう。


「どうすればいいんでしょうか……」


 私自身、いままで恋愛経験が皆無です。

 いいなぁと思うような男子も、ほとんどいませんでした。

 そんな私が、積極的になるというのは無理がありますよね。


「やはりここは、イベントを重ねて距離を縮めていきましょう」


 一緒に遊びに行く計画を立てましょう。

 二人きりだと、瑛太さんも来にくいかもしれません。

 ここはエリに頼んで、誠治さんも誘ってもらいましょう。

 そうです、ダブルデートです!


 それに……毎週日曜日、こうやってお好み焼きを食べさせてもらってます。

 しかも、瑛太さんと二人きりです。

 今はこれだけで、十分ですよね。

 それに今度、家にご飯を食べに来てもらいましょう。


「よし! 頑張れ、私!」


        ◆◆◆


 11月に入ると、朝晩は少しずつ寒くなってきた。

 大学の学食でも、温かいものを食べる機会が多くなった。


「瑛太、再来週の連休の件、明日菜ちゃんから聞いてるか?」


「ああ、昨日Limeが来たよ」


「行くよな?」


「ああ、俺はいいんだけど……」


「問題は、綾音だな」


 そうなんだよな。


 昨日、明日菜ちゃんからLimeが来た。

 

 明日菜:こんばんは。瑛太さん、再来週の3連休のどこかってお時間ありますか? 紅葉が見頃なので、どこか紅葉狩り(もみじがり)へ行きませんか? エリにも話をしたのですが、よかったら誠治さんや綾音さんも一緒にどうかなと思いまして。


 誠治のところにも、エリちゃんから同様のLimeが来たようだ。


「綾音は三連休、北海道に帰るだろ?」


 誠治の言う通り綾音はいとこの結婚式があって、その連休は北海道に帰ると聞いている。


「ああ、そうなんだ。とはいえ、黙っておくのもできないだろ? 後からどうせ分かることだし」


「ま、そうだな。じゃあ瑛太、よろしく」


「えっ? 俺が言うのか?」


「そりゃそうだろ? メインで誘われてるの、瑛太だし」

 

 誠治はそう言ってニシシっと、ちょっといやらしい笑いを浮かべた。

 そして俺の背中越しに視線を向けた後、トレーを持って立ち上がった。


「んじゃぁ、俺行くわ。あとよろ~」


 立ち去ろうとする誠治と入れ違いに、綾音がやってきた。


「あれ? 誠治、もう行くの?」


「ああ。綾音、瑛太が話あるってよ」


 面倒をブン投げて、誠治は行ってしまった。


「何?」


「え? いや、あのだな……」


 仕方ない……。

 俺は一通り説明する。


「ええーっ! ウチだけ仲間はずれ?」


 思ったより、反応が大きかった。


「そんなこと言ったって、仕方ないだろ? 綾音は北海道に帰省するんだし」


「それはそうだけど……」


「また機会はあるって」


「もう……でもさ、ウチも一緒にどうですか?って、明日菜ちゃんだっけ? 聞いてくれてたの?」


「ああ、そうだ」


「ふーん……いい子だね」


「まあ、そうだな」


「もう……嫌いになれないじゃん……」


「え?」


「なんでもない。わかった。その代わり、瑛太」


 綾音は体を乗り出して、顔を近づけてきた。


「ウチとも、紅葉を見に行ってよ? 絶対に」


「紅葉をか? 綾音、北海道に帰るんだろ? あっちの方が、紅葉ならよっぽど」


「行・く・の!! これはもう決定事項だから」


「えっと、まあ、はい」

 決定事項らしい。


「よろしい。なら許してあげる」


 綾音は少しだけ、機嫌がよくなったようだ。


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