時計
「父ちゃんありがとう。」
健太は小学6年生。
誕生日のこの日、父親から贈られたのは古い腕時計だ。
「どうだ、古さがかっこいいだろ。」
「うん、ちょっと重いけどこんなの持っている友達はいないと思うよ。」
「手巻きだから、ほかっておいたら止まるからな。」
「あっ、そうか電池入ってないんだ。」
「当たり前だろ、そこが良いんだ。」
「え~、めんどうじゃん、どうして?」
「確かに今の時計は簡単で正確で便利さ。
でもな、ちょっと味気ない…、そうだな、この竜頭を毎日巻いていれば止まることはない筈だ。
で、竜頭を巻く時にだな、この時計を作った人のことを考えてみろ。」
「うん、りゅうずってこれのこと?」
「そうだ、こんな感じで巻くんだ。
それと裏蓋は簡単にはずせるから見たくなったら開けてやるぞ。」
「こわしちゃうかも。」
「はは、そんなこと気にするな、壊れたら思いっきり分解しても良いし。」
「あ~、分解なんて面白そうだけど、なんかさ、これを作った人に悪いんじゃない。」
「はは、まぁ細かいことは気にするな、この時計の中には男のロマンがいっぱいつまっているからな。」