プロローグ4 幽霊ライフ2
ー幽霊生活4日目。
他人とのコミュニケーションに飢えていた私は、またもあの子はの部屋へと向かった。
お邪魔しまーす。と壁をすり抜ける。
あの子は今日も窓の外を眺めていた。
「おーい」
彼女に呼び掛ける。
「…また来たの?」
「また来ちゃった。」
はぁ、と彼女は呆れながらもなんだかんだ私の話に付き合ってくれる。
優しい子だな。何で怨霊なんてやってるんだろう。
でもそれは聞いたらダメだろうな。
そんな事を考えながら彼女を見つめていると、彼女が口を開いた。
「この間から思っていたけれど、あなた、変わった格好ね。そういうのが今の流行りなの?」
「えっ…」
そんな変かな…と自分の格好をあらためて見てみた。
あっ、これ死んだときの格好のまんまだ。
便利グッズの入ったリュックを背負い、手にはバール。見えないけど、きっと頭にはヘルメットを被ったままなんだろうな。
なんか、馴染み過ぎてて気づかなかった。
バールを手から放そうとしたけど、離せない。
体の一部になってる!?
「うわっ気づかなかった!別に流行りじゃないよ!」
「あら、じゃあ貴女の趣味なの?変わってるわね」
「違うよー!!でもこの格好だと人を脅かしても怖がってもらえなさそうだよね」
そう言うと彼女は少し笑った。
怨霊も笑えるんだなー。
…人と話してると時間がすぐに過ぎるな。
ー幽霊生活5日目。
夜はなんとなく迷惑かなと思ってあの子の部屋から出ている。
でももうそろそろ行ってもいいかな。
そう思い、あの子は部屋へと向かう。
ーあれ?玄関のドアが空いてる…
風?そんなので空くようなドアじゃないしなー
もしかして、私達みたいな肝試しの人達だろうか。
…危ないんじゃない?
あの子が人を襲うなんて、信じられないけど、前例があるしな…
あの子の部屋に行く前に何とか追い返さないと。
そう思い、私は侵入者を探した。
あっ、いた!
黒い服を着た数人の男と巫女さんの服を着た女の子だ。
怪しい集団だな…
オカルトグループかな?
まっすぐあの子の部屋に向かっている。
止めなきゃ!
……?
あっ!
止める手段がない!
仕方ない、あの子に移動してもらおう!
そう思い、隣の部屋からあの子の部屋に侵入した。
「あっ、ねえ!ちょっとこっちの部屋に…」
…えっ…?
あの子の顔を見ると、今まで見たことがないような表情をしていた。
「恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい」
ぶつぶつとそう呟きながら侵入者たちを睨んでいた。
やばい… もうどうにもならない。
そう思い呆然としていると、侵入者たちは何かの儀式を始めた。
…なにあれ、呪文…?
「……還りたまえ!!」
巫女さんがそう叫ぶと、あたりが光った。
えっ、超能力者!?
すごい…
なんて思っているうちに、私の体がとけだした。
あれ、これ成仏するやつ?
ちょっと予定が早まったなーなんて思いながらあの子に目を向ける。
あっ、巫女さんに襲いかかろうとしてる!
「麗華ちゃん!駄目!」
私の声に反応して麗華ちゃんの動きが止まった。
良かった。聞こえてたんだ。
私は今にも成仏しそうだけど、麗華ちゃんはぜんぜん平気そうだな。
霊力?の違いかな。
麗華ちゃんは驚いた顔をして私を見た。
そして私の手を握った。
「駄目…いかないで…!」
…ここで私の意識は途切れた。