プロローグ2 死んだ
ーあれ、私どうなったんだっけ?
愛香ちゃん、先に帰っちゃったのかな?
私も帰らなきゃ。
立ち上がると、体が妙に軽い。
寝たからかな。
あれ?なんか、透けてる?
なにこれ…?
私はとりあえず家に帰ろうと、お屋敷のドアを開けようとした。
ーしかし、触れることができない。
その瞬間、私は先程までの事を思い出した。
…もしかして…私死んだのかな…?
そっかー…
パットしない人生だけど、楽しかったのにな。
なんだか、悲しさよりも申し訳なさの方が大きい。
まだ受け入れられていないからかな…。
お母さん、お父さん、せっかくここまで育ててくれたのに、ごめんなさい…。
あ、部屋片付いてないや…
呆然としてしていると、後ろから声がかかった。
「意外と、冷静なのね。」
振り向くと、女性が立っていた。
きつく巻かれた髪に大きなつり目がちな目の美人な女性だ。同い年くらいだろうか。
愛香ちゃんとは方向性が違うけれど、同じくらい整った顔をしている。
「あなたは?」
「私は東海林麗華。この屋敷の主で、貴女の命を奪った、張本人。」
「え…」
じゃあ、この人がさっきのぼんやりした「何か」…?
しばらくぼんやりと彼女を見つめていると、彼女が不快そうに眉をひそめて口を開いた。
「…あなたは、自分を殺した相手を目の前にして、怯えるとか、憤るとか…しないの?」
怯える…確かにさっきまで「何か」だったときは怖かったけど…今、しっかりと姿が分かるようになってからは特に怖いとは思わない。もう死んでるから殺されることもないしね。
憤るっていうのもないなあ。
そういえば、思い返してみると、今まで本気で怒ったことってないかもしれない。
死んだっていうことに対する寂しさはあっても、怒ることはないなぁ。
実感が沸いていないからかもしれない。
そんなふうに考えていると、彼女はため息をついた。
「貴女みたいな人、初めてよ。理解できないわ。」
そう言われても…
「…貴女は、もうすぐ消えるわ。もって1週間といったところかしら。残り僅かだけど、この屋敷を好きに使って良いから。」
そう言って彼女は去っていった。
1週間か…。短いような、長いような。
うーん…このお屋敷からは出られないんだよね。
とりあえずお屋敷を探検してみようかな。