「ヴァンパイアは闇に嗤う~第2幕~」 IDEECHI51 【推理】
2月14日のバレンタインデー当日、メリッサ包囲網をひいてからというもの、ここ1ヵ月はアリフによる殺人事件はまったく生じなかった。不自然なことにも、アルクファミリーによる騒動もまったくみられないラプラス市だった。
ゴードンとジョンたちメリッサ包囲網にもどこか緩みがあった。交番巡査員も夜には帰宅させ、ゴードン率いる科学班の者達はモニター室で談笑を交わした。
モニター室には1週間まえにラプラス市警に届いた手紙がそっと置かれていた。
『科学も真の狂気のまえでは憐れに十字をきる。身の程を知れ』
ゴードン部隊からは「強がりだ。野暮な野次に過ぎない」と受け取る声ばかり溢れた。マイク・ゴードンも御自愛の熱いコーヒーを飲んで悠長に構え始めた。
そのときにサイレンが鳴った。ゴードン達の眼前に何者かが現れた。
「アリフか!? おい! どうした!? 応答しろ! ジョン威嚇しろ!」
「は、はい……!! 何者だ!! そこを動くな!!」
何者かは電柱上に居たが、颯爽と飛んで動きまわった。ジョンは自らの判断で発砲したが、何者かはそれを避けてメリッサたちを目がけてきた――
ゴードンは無線越しに科学班のモニター室から激しい銃声と悲鳴を耳にした。そして首元に激痛を感じ、意識を失った――
銃を構えながらも、後ろを振り向いたジョンは目にした。マイク・ゴードンがメリッサ・パンサーによって吸血されて死にゆく様を――
「かはっ、まずい、まずいわぁ、年老いた男の血など」
メリッサはしりもちをついたジョンをみてニタリと嗤った。
「お前たちは若い! どちらからでも美味くいただけそうだなぁ!」
ジョンはしりもちをついたまま失禁をしてしまった。もう手元には銃もない。しかし彼女の言葉が気になった。お前たち?
迫りくるメリッサ、ジョンは目を閉じて神のご加護をただ願った――
目を開ける。そこには母と抱き合うアリフ・パンサーがいた。
そして激しく咳き込むメリッサを彼は突き放した。
「がはっ……よくも私をウラギッ……ア……ア……ガアッ!?」
メリッサの顏の色はみるみる枯れ果てた。そして彼女は息をひきとった――
よく見るとアリフの手には血塗られたナイフが握られていた。そこにおそらく致死性の高い毒が塗られていたのだろう。ジョンも始末するのだろうか? 彼は目を閉じて今度こそ逃れられない「死」を覚悟した。もう失禁してしまっているワケだし、これ以上格好悪くなることはない。父へむけて懺悔を呟いた。
「アーメン」
その言葉が耳に残って3分後、目を開けると、そこにアリフの姿はなくなっていた――
その数分後、襲撃を受けた科学班と無線をとる。どうやら科学班を襲ったのはアルクファミリーの派生組織だったようだ。おそらくメリッサ・パンサーが雇い、計画したものだったのだろう。
ゆっくりと……ジョンは立ち上がった――




