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玄冬のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 玄冬のミステリーツアー参加者一同
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「THE DAY DREAM AFTER~第5幕~」 IDEECHI51 【SF】

 俺は保健室で目を覚ました。体を動かすと少し痛い。



「あら? 目を覚ましたのね。階段で転んで気を失ったみたいね」

「そんなことあったのですね……」

「見覚えないの? 疲れすぎじゃない? 勉強も部活もほどほどが1番よ」

「そうなのかも。あの、今何時です?」

「16時よ。もうみんな下校しているけどね」

「え? みんな下校? 俺、部活の部長と大事な約束したのですけど……」

「あ、そっか、君は知らないのね」

「はい、何も知らないですよね?」

「今日自殺未遂があったのよね~」

「え!?」

「幸い命に別状はなかったみたいだけど。後遺症は残るでしょうね」

「あの……詳しく話を聴かせてくれませんか?」

「ノー、プライバシーの侵害よ」



 保健室の先生は立ち去った。



 飛び降り自殺を図ろうとした生徒がいたらしい。それは俺と同じクラスの森福だった。昼休みの時間に3階の図書室から飛び降りたのだと言う。



 学校はこの事件を受けて1週間休校となった。皮肉にもそのまま冬休みに入ることとなり、終業式と卒業式だけ慎ましく執り行われた。俺の部長任命もその日、その最中で行われた。西森元部長の熱意もあり、部の存続も何とか決まった。



『er02に怒りを! デデキント切断!』



「er02って何だよ……訳がわからねぇ」



 俺は1人になった部室で謎のメモ帳を眺めた。俺がこのメモ帳にこの文言を残して昼寝した日から何かが狂いはじめた。そして俺はいっちゃいけないところにいこうとしていた。3年生になった俺達のクラスに森福は戻ってこなかった――



 3年生になり、卒業が近づくにつれて進路のことで悩む奴は多いらしい。まぁ、俺は俺のやりたいことを貫きたくて、親にもしっかり話した。担任教師の日村が三者面談で俺に助太刀を入れてくれた。これが切れ味抜群だったらしいな。俺は夢にむかって悠々自適に走り始めていた――




 腐れ縁って言葉は嘘じゃないのだろうな。3年になっても、俺と灰原と田森は一緒の班になることが続いた。ここに森福がいないぶんで、工藤っていう平凡な野郎が加わるようになった。俺達はその性格が相まってほとんど話をしたことがない。しかし教師休養による自習時間にてクラスが賑やかになったときに、俺は灰原に話かけられた――



「ねぇ、具志堅君って小説を読んだりする?」

「え? 小説?」

「ほら、ゲーム制作部っていうじゃない。ノベルゲームとかも作るでしょ?」

「ああ~そういう意味では読むのかな?」

「私、小説書いたの。読んでくれない?」

「はあ? 何だよ? 突然」

「嫌かな……」

「わ、わかったよ。読むよ。落ち込むな」

「ありがとう!」



 灰原の書いた小説は『U.F.O.』っていう小説というよりは詩にちかい作品だった。というかコイツ、こんなに腹黒いのか。そして何気に工藤のことが好きだったのか。色々ツッコミどころ満載だったけど「面白かった」と言っておいた。



「ありがとう! 秘密だからね!」

「ああ、内緒にはしておくよ~!」

「ばらしたら許さないから」

「え?」



 灰原の顏は今までみてきた恐ろしい顏のなかで2番目に恐ろしい顏だった。



 それから俺と灰原はよく話すようになった。元々腹黒だった彼女の本性が周囲に知られていったのか、彼女は女子から嫌われだし、俺と工藤と仲を持つようになった。すると不思議なことに、それまで根暗で浮かなかった田森が急にお洒落系な女子になっていく。彼女はもう俺達底辺には関わっていない。そうなると、俺達の班に1つの空席が空いた。




 そしてこの物語を読んでいるあなたはここから何が起きると思う?




 その前日、俺はやっと1つの真相に辿りつく。PCに残した謎の文言、あれはパスワードを言い替えた造語であった。元々のパスワードは「イイじゃん坊主に怒りを! でてきても切断!(これをローマ字表記にする)」という西森が作った、センスがないパスワードだ。これに押韻を被せるようにして「er02に怒りを! デデキント切断!(これをローマ字表記にする)」という新たに俺が編み出した新パスワードだった。俺の記憶に違いはなく、このファイルを開くとクリーチャー化した西森のイラストが山のようにでてきた。俺ってばユーチューブを観ているばかりじゃなかったのだな。



 でもやり方は西森部長の踏襲だ。やっぱり俺は尊敬していたのだろう。



 しかしどうにも解けない謎がこの日また俺を悩まそうとしていた。



「え~、今日から転校してきた生徒を紹介する。天海麗華さんだ。みんな仲良くしてくれ。天海さんからも挨拶を」

「東京八王子から来ました天海麗華です。卒業まで短い期間ですけども、宜しくお願いします」



 俺は美しい彼女と目が合って困惑した。それは彼女が美しいからではない。



 俺の横の席は皮肉にもあの時と同じで空いている。



 俺は何かも全てハッキリ思いだしたのだ――


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