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玄冬のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 玄冬のミステリーツアー参加者一同
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「THE DAY DREAM AFTER~第4幕~」 IDEECHI51 【SF】

 朝、目を覚ますと何かが違う気がした。テレビニュースをボーっと眺めている親父に家事で大忙しのお袋。立丸孝史がNNJの改革を訴え続けている。



 あれ? 何かおかしくないか?



 何か言葉にならない疑問を感じたまま、俺は通学した。



 俺の隣には灰原という女子が座っている。灰原は仲良くしている他の班の女子たちと談笑していた。根暗な俺と森福と田森。田森はずっと文庫本を読んでいる。



 いつもと変わらない日常なのか? こういうものだったか?



 部室に行くとゲームプレイに勤しむ西森がいた。相も変わらず俺に絵の製作を急げと監視するばかりだ。でも今日はどことなく作業に集中できた。なんだかさ、今日はユーチューブをみる気力すら起きなくて。



 努力の甲斐もあってか、依頼された絵の大半が出来上がった。



「お~やればできるじゃないか! 具志堅氏! そんな君に話がある!」

「えへへ、今まで時間かけちゃって、すいませんでしたよ。え? 話?」

「ああ、俺のこの部活でのカリキュラムは終わった。廃部の話もあるみたいだが、可能な限りは卒業まで協力する。だからこの部活を……具志堅氏に託したいな。明日、一緒に生徒会室へ行かないか? 部の存続も一緒に訴えよう」

「え? それって?」

「部長の任命だよ!」



 願いは叶った。あっけなくも。



 でも何だろうな。心の奥底では虚しさのようなものを感じていた――



 火曜日、今日は西森部長と生徒会室に行って、手続きを済ませてく日だ。それ以外は何も変わらない。何も変わらないのに何故か俺は屋上にむかっていた。



 いた。パーマのかかったお洒落な女子が。気がつくと後ろに森福もついていた。もしかしてコイツもアイツのことが忘れられなかったのかな。



「お久しぶり。私のこと覚えている?」



 笑顔をみせる彼女はすごく眩しかった。



「ああ、覚えているよ! アンタ、本当に何者だよ?」



 俺も笑顔で彼女との再会を喜んだ。



「何者? ごく普通の女子高生だよ」

「嘘つけ」

「嘘じゃないよ。あ、でもここにいる時はそうじゃないのかも」

「ここにいる時?」

「難しい話はしないよ。どうしてここに来たの?」

「どうしてって、アンタに会いたくなったからさ」

「そう、じゃあこっちにおいでよ」




 俺はこの時になって初めて気がついた。俺達3人以外に誰もこの屋上にいないことを――




 彼女は指を鳴らす。すると空は赤くなり、無数の鴉が俺達を囲んだ。



 彼女は爽やかな笑顔で俺達を迎えてみせた。



 しかしこの光景がどうにも気持ち悪くて仕方なかった。


 挿絵(By みてみん)



「嫌だ! そっちにはいかない!」



 俺は襲い始めてきた鴉を必死で取り払った。



「どうして? いっぱい願いを叶えたじゃない! 君は!」

「お前の力なんか借りなくたって、願いは叶えられる!!」

「僕は行きたい! 僕はそっちに行きたいよ!!」

「森福!?」



 森福は女へ駆け寄って女と抱擁を交わす。夥しい鴉が彼らを包んでいく。俺は急いで屋上の出入り口に走り込んだ。そして階段を転がるように落ちた――

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