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玄冬のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 玄冬のミステリーツアー参加者一同
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「THE DAY DREAM AFTER~第3幕~」 IDEECHI51 【SF】

 朝、目を覚ますと両親がテレビに釘づけになっていた。



 何なのかみてみると、NNJがスクランブル放送を決定したのだという。目をこする。立丸孝史が満面の笑みで勝利宣言をしていた。



 これは朝から茶の間を湧かせるバラエティー番組じゃない。現実に起きた事を日本中に知らせるニュースだ。何度頬をつねったってその事実は変わらない。




 学校もこのニュースで騒いでいた。クラスに絶世の美少女が来たって言うのに、もう誰も天海麗華に興味を示す者はいなくなっていた。



「具志堅君」

「え?」

「今日も昼休み来るよね?」

「お、おう……」

「楽しみにしているから!」



 授業の間で天海は俺にさらっと話しかけてきた。



 偶然なのか? 彼女の力が本物なのか? にわかに信じ難かった。



 昼休み、俺はまたも天海と屋上で一時を過ごした。そして森福もいるんかい。



「さぁ、今日はどんな願い事を叶えてみる?」

「そのまえに聞きたい」

「何?」

「天海さん、アンタは一体何者だ?」

「何者? ごく普通の女子高生だよ」



 そりゃそうか。仮に何か特殊な人間だとしたら、その正体を明かしたりしないだろう。俺は半信半疑から彼女の持つ何かへ興味が湧いてきた。そしてその何かなるものが俺の心を動かしはじめていた。



「ゲーム制作研究部の部長に俺を任命させろ」

「ふうん、昨日の願いより軽いね?」

「俺にとっちゃ軽くはないさ」

「らじゃ」



 天海は指パッチンのおまじないをした。



 放課後、俺は西森にイラストの製作が全然進まないことを問い詰められた。



「具志堅氏、わかっているの!? これはテストプレイを担当する実況者さんと約束を結んでいる案件なの!! テストプレイの実況日は明後日だぞ!?」

「はい……すいません」

「君の絵なんて、我が部活動ぐらいしか活用できない品物だろ!? せっかくの機会をユーチューブなんかばかり観て失って。みっともないと思わないのか!?」



 俺は我慢ならなかった。噛んだ唇から血の味がした。旨くない。



「黙って聴きゃあ、勝手なことばかり言いやがって! そんなに絵が早く必要で急いでいるなら、自分で描けよ! 金も何も貰わずに俺はここで作業やっている! ゲーム実況者? 視聴者もいないアンタの無職兄貴の遊びだろうが!!」



 意外にも西森は怯んでいた。俺は怒りがとまらなかった。



「俺は明日でも生徒会にいって退部届でもだしてやる!! 自分で頑張ってお金貯めて、必要な物買って、自分で自分の作りたいゲームを創るからな!!」



 俺はパソコンの作業を途中にしたまま、荷造りして部室を去った。



 それから家に帰って床に就くまでは、あっという間のことだった。




 翌日、俺は生徒会室に呼び出され、西森が立ち合いの下でゲーム制作研究部の部長任命を受けた。西森は涙を溢れんばかりに流して俺に謝った。そして卒業をするまで俺主体のゲーム制作研究部に協力していきたいと願いでてきた。



 願いは叶った。あっけなくも。



 昼休み、天海に部長就任の報告をした。彼女は自分の事のように喜んでくれていた。やっぱりそこには森福もいた。コイツ、何でここにいるのかな……それが気になりつつも、俺は俺の願いを天海に託した。



 金曜日、俺に彼女ができた。幼馴染で俺がずっと恋焦がれていた木村って女子だが、同じクラスの彼氏とその日のうちに別れ、下校がたまたま俺と重なり、話しているうちに「付き合おう」って話になった。



 土曜日、俺は学校の各種テストで100点をたたきだす手ごたえを感じられた。結果は月曜日に知ることとなったが、ほとんど100点の成績に違いなかった。



 日曜日、俺は両親とテーブルで向き合いながら将来のことを話し合った。これまでこういう話をはじめると、やたら理容師の道を押しつけるところがあった。しかし俺がゲームクリエイターを目指したいと話すと、それを応援していきいと返事してくれた。おまけに俺がずっとありつけたかった物を口にする事もできた。



 日曜は学校にいくことはない。明日にむけて何でも叶える天海に俺のお願いを託したいと思ったが、日曜だから仕方ないとベッドのなかで眠りに就いた――


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