「探偵には温泉宿がよく似合う (問題篇)」 真波馨 【SSミステリー】
本作品は、拙作「2分間探偵の思い出」シリーズの世界観です。問題篇は600字以内に収めているので、1分程度で読むことができます。ぜひ「1分で読み、1分で謎を解く」2分間探偵に挑戦してみてください。
「所長。駅前の福引で温泉旅行の招待券が当たったので、よろしければ一緒にいかがですか」
助手の潮くんに誘われ、二つ返事で「行くよ」と答えた。探偵という仕事にも慣れてきた時期だが、こういうときこそしっかり骨休めをして体力を温存しておく必要がある。
ローカル線のバスを乗り継ぎ辿り着いたのは、山奥にひっそり佇む旅館。潮くんのリサーチによると、露天風呂に浸かりながら楽しめる雪見酒や、現地で採れた食材の味を堪能できる冬季限定の料理が売りらしい。
だが悲しいかな。たまの贅沢を実感する暇もなく、探偵とその助手は事件に巻き込まれてしまった。宿泊客のひとりが夕餉の最中に突然苦しみ出し、意識不明の重体に陥ったのだ。
その場に同席していた女性によると、救急搬送されたのは落合貴之。食事の真っただ中に突如嘔吐し、さらに痙攣を起こしたという。落合に持病はなく、したがって料理に毒物が混入されていた可能性も考えられた。
テーブルの上に並んでいたのは、旬の食材をふんだんに使ったちゃんこ鍋と、天ぷら定食。天ぷらといえば私は蕗の薹の天ぷらが好物なのだが、落合もまた大の天ぷら好きらしい。口福を得ている最中の悲劇だったのだ。
「待てよ……ということは、あの食材が原因ということもあるのか」
だとすると、疑わしいのは食事の支度を担当していたスタッフだろう。
Q:「私」が怪しんだ食材とは?




