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カルテ0 潜行(オペレーション)3

時は20XX年。人類の科学的進歩は飛躍的に進んだ。再生医療、ビッグデータ、再生エネルギー、そしてVRヴァーチャルリアリティー


とりわけVR技術はかつてないほどの隆盛を迎えていた。医療技術、工業技術への転用はもちろんのこと、巷に流通する仮想現実体験型のゲーム、ゲーム、ゲーム!


ゲーム技術の圧倒的ブレイクスルーに降ってわいたゲームバブル。そんな恐ろしくも巨大なビッグウェーブを背景に、数年前の俺や黒桐のようなVRゲーム専門のプロゲーマーも誕生。ゲームによる世界大会はW杯並みの盛り上がりを見せ、有史以来最大の一大ゲームブームが起こったのだ。


そんな中ネットワーク上で作成者不明のVRゲームプログラムがリリースされた。

その名も胡蝶(Dream)の(Of)夢(Butterfly)、略称DOB。DOBはフルダイブ型VRにしてゲーム世界を自分好みにデザイン・レイアウトし、自分の為だけの世界を作れるゲームだった。


たちまち世間はDOBに熱狂。全世界で3000万人の熱狂的ユーザーを獲得した。

しかし、このブームの陰では一つの社会問題が生じることとなる。


———引きこもり。


従来の自室に引きこもる物理的な引きこもりではなく、DOBにて自身で作り出した世界に引きこもる電脳的な引きこもりが爆発的に増加していた。

しかも外部から強制的にシャットダウンした場合、ユーザーはそのまま昏睡状態に陥る。


まるで最初から引きこもり状態を想定していたDOBの仕様。

引きこもったユーザーを助け出す手立てはただ一つ———


×××


馴れない浮遊感から解放され、そっと目を開ける 。

辺りには切り立った岩山が三つ。その隙間一面に敷き詰められた雲海。


その向こうにはうっそうと茂る緑地が小さく見えていた。そして彼方地平線より輝く太陽の煌き。橙色、俺の一番好きな色彩。その光を顔一面に浴びる。


「……」


 思わず息を飲んだ。浮遊感同様、この経験も四回目だが、未だその圧倒的感覚に魅了される。


どこかで、飛龍と思わしき鳴き声がこだまする。このどこまでも作りこまれたリアリティ。これが虚構だと一体誰が信じられるというのか。だが———


 ———確かに今、俺はユメの中にいる。


引きこもったBODユーザーを助け出す手立てはただ一つ。ユーザー自身が作り出したゲーム世界にクラッキングし、ゲームを完全攻略。そしてゲームエリアの最奥にいるユーザーの意識をサルベージすることだけだ。



そうこれは謂わば、俺たちゲーマーとメディカルスタッフによる手術(オペレーション)なのである。


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