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灰色の花  作者: 彩霞
第4章 大蛇との戦い

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83/128

83、焼きサンドイッチ

ミアム中佐がほっとした表情で頷いたとき、「失礼します」と言ってギャルソンが入ってきた。手には二つの大皿を持っている。


「お待たせいたしました、ご注文頂きました焼きサンドイッチです。只今、人数分お持ちしますので、先にお二人分だけ置いておきますね」

「ありがとう。先に、彼らに置いてもらっていいかな」

 ミアム中佐は、ギャルソンに分かるようリックス少将とジムルの方を手で示す。そして同じ騎士の部下とグイファスの方をちらりと見ると、彼らは笑って頷いた。ミアム中佐は先に彼らから先に料理が運ばれることを、部下に確認したのだった。

(例え部下であっても、その配慮は欠かさない、か)

 リックス少将はミアム中佐の部下思いの優しさに、心の中で共感を覚えるのだった。

「わあ!美味しそう!」

 メレンケリは目の前に運ばれた「焼きサンドイッチ」を見て、小さな歓声を上げた。きつね色に焼けた食パンが半分に切られ、その間にはち切れんばかりに千切りされたレスタチーカ(レタス)と熟したメリル(トマトのような色が黄色い実の野菜)、カリカリに焼けたベーコンが挟められている。他の食パンには半熟の卵が挟まっていたり、マーガリンとベリーのジャムが塗られているという、三種類が皿の上には載せられていた。

「だけど、私、こんなに食べれるかしら?」


 どれもおいしそうだが、量が男性に合わせてあるせいで、メレンケリには少し多い気がした。

 するとミアム中佐がうっかりしていたというように、少し申し訳なさそうに言った。

「あ、そっか……気が利かなくてすまなかったね。いつも男ばかりだから、これくらいぺろりと食べてしまうものだから。注文する前に聞けばよかったね」

「あ、いいえ!そんな!ミアム中佐は何も悪くありませんよ!」

 すると、それを聞いたギャルソンが、微笑んでこう言った。

「残ったら、お持ち帰りすることもできますよ」

「そうなんですか?」

「ええ」

 メレンケリはギャルソンの提案にほっと胸を撫でおろす。

「良かった。だったら、そうします」

 ギャルソンはにこっと笑うと、頷いた。

「でしたら、食後に包みますので申し出ください」

「ありがとうございます」

「では、ごゆっくり」

 そう言ってギャルソンが出ていくと、リックス少将は朝食を見て言った。

「では、頂こうか」

「はい」

「いただきます」

 メレンケリはベーコンが挟まったサンドイッチを頬張って食べることにした。

 幸いにも手が汚れないように、紙に挟まれていたので、メレンケリは両手を使って食べることができた。彼女はサンドイッチを手に取ると、分厚くなった食パンをぎゅっと押しつぶして、ぱくりと一口食べる。

「――っ!」

 香ばしい食パンに、野菜とベーコンの味が相まってとても美味しい。しかも、何か特別なソースを使っているのか、余韻に甘酸っぱい果物のような爽やかな味が残る。

 周囲の男たちが、「美味しい!」「美味い!」と言っている傍で、メレンケリは黙々と食べていた。すると、隣に座っていたグイファスがメレンケリの顔を見て微笑み、そして尋ねた。

「どう?美味しい?」

 メレンケリはグイファスの方を見て、顔を綻ばせた。

「うん!とても美味しいわ!」

 グイファスはメレンケリの心からの笑みを見て、「美味しい食事は偉大だな」と内心思いながら、彼女の笑顔を見れたのはとてもラッキーだったと思った。

「そう。それは良かった」

 グイファスは嬉しそうに頷くと、メレンケリの隣で自分も焼きサンドイッチを頬張った。彼女とするサーガス王国での初めての食事は、仕事中ではあるし、他の騎士もいたけれど、グイファスにとってとても楽しいものだった。


 美味しい食事で腹が大分満たされたころ、ギャルソンはメレンケリの残ったサンドイッチを包んで袋に入れてくれ、そして彼らに熱い紅茶を持ってきてくれた。


「これから巡回も後半戦ですが、前半は特に何も異常はなかったように感じましたね」


 ミアム中佐の意見に、騎士たちが頷く。


「確かに、特にこれといって問題はなかったように思います。人々も、ちゃんと大蛇のことを気を付けていて、一人で出歩かないようにしているようでしたから」

「そうだね」

「ミアム中佐」

「はい、何でしょう」

 リックス少将の呼びかけに、ミアム中佐が振り向いた。


「大蛇に襲われた人たちのことなんだが、その被害場所について詳しく聞かせてくれないだろうか。昨日、大蛇に血を吸われた人の話は聞いたんだが、場所については聞いていなくてね」

「でしたら、これからの巡回で行きましょうか。大蛇に対するけん制にもなると思いますし、案内しますよ」

「そうか。助かるよ」


 そう言って、彼らは『カッハル』で紅茶を急いで飲み干すと、大蛇の被害にあった場所を巡ることになった。

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