74、血を吸われる人々
「大蛇とは言われてはいるが、今は既にその姿を取ってはいない。街中に出て、人として過ごしているようなのだ。グイファスが貴国に赴いて、封印の石を探しに行ってから、五件の被害が出ている。内、男性が襲われたのが四件、女性が襲われたのが一件となっている。いずれも首のところを噛まれていてな」
ギオルグは自分の首筋を人差し指と中指でトントンと叩いた。
「血を吸われているのだよ」
「血ですか?」
リックス少将は聞き返した。
「ああ。大蛇に襲われたというのは、その傷を見ただけで分かる。血を吸った場所に歯型が残っているのだが、それは人の歯型ではなく、蛇に噛まれたときと同じ傷だからだ。被害にあった人々はいつも干からびた状態で見つかっている」
ギオルグの淡々とした説明から状況を想像し、ジルコ王国の軍人たちは息を飲んだ。
「彼らが襲われた時間帯などは分かりますか?」
その中で唯一平然としていたリックス少将が、ギオルグに質問をする。
「夕方から夜にかけてだ。どうやら大蛇は夜になるにつれて活発に動くようなのだ」
「成程」
「それ故に、城下の人間にはできうる限り夜は出歩かないように注意はしているのだが、今度は警備に回っている者が襲われているのだ」
「だから男性の被害が多いのですか?」
「そうとも言えるが、大蛇に襲われるのは最初から男の方が多い」
「そうですか。被害にあっている人たちの生存は?」
「ほとんどが失血死していまっている。被害にあったのは、全体で二十人以上いるが、生き残ったのは三人だ。だが、そのうち誰も目を覚ましておらん」
「ということは、目撃情報はないということでしょうか?」
「うむ。被害者の証言は得られんだろうな。だが、怪しい人物として何人かは現在の大蛇と思われる姿の目撃情報がある」
するとリックス少将は少し前のめりになって尋ねた。
「それはどんな姿なのですか?」
「薄汚れた麻の布を頭から被り、その顔を見せないようにしているというが、どうやら女の姿をしているらしいのだ。そして、髪は栗毛色の長髪。それから肌が色白で、顔にあざのようなものがあるという」
「あざ?」
「具体的にはよく分かっていないのだ。目撃者も、何となく目を合わせてはいけないような気がして、すぐにその現場を立ち去ったといっていたからな」
「そうですか」
リックス少将が、顎に手を当てて考えるしぐさをすると、グイファスが手を挙げて発言をするため主張をした。




