7、独房
「君は…」
メレンケリは軍事警察署に隣接する拘置所へ赴いた。
中は薄暗く清潔とは言えない独房には、片膝を立てて無造作に座るグイファスの姿があった。両足には鎖が付いており、抜け出せないようになっている。外の空気が入る空気穴からは、わずかに日の光が入ってきていた。そんな殺風景な場所にメレンケリが現れたからだろうか。グイファスは幻を見ているかのように、金色の瞳を大きく見開いた。
「昨日はどうも」
メレンケリは、グイファスを見下ろして素っ気なく挨拶をした。捕まっている男たちには心を開いたことなど一度もない。いつものように振舞えばいい。
「確か、メレンケリと言ったね」
グイファスの声は、取り調べを行っていた軍人たちの前とは全く違った。柔らかく、爽やかな風が吹くような声。
しかし、メレンケリは淡々と答える。
「ええ。そうよ」
「石にする力を持っている」
「その通り」
「私を石にするつもりで来たのかな?」
グイファスが真剣な表情で、メレンケリを見つめた。
「違うわ」
「じゃあ、何のために?」
「仮釈放をするため」
「仮釈放だって?宝石を盗んだのに?」
「ええ」
メレンケリはポケットから鍵を取り出すと、鉄格子の鍵を開けた。
「その代わり、私が監視として付きます」
「……なるほどね」
メレンケリは、グイファスに繋がれた足かせもはずす。
「あなたは賢いようだから分かっているでしょうけど、逃げようとしても無駄だから」
グイファスは金色の瞳をすっと細める。彼は視線の隅に、軍人が見張っていることに気づいたようである。
「そのようだね」
グイファスは立ち上がって、ぐっと上に手を伸ばした。
「大人しく君に従おう」
メレンケリも立ち上がり、グイファスに牢屋から出るように言った。
「では、こちらへ。あなたが泊まる部屋を案内するわ」