6、己の力は王国の為に
不思議なものだ。
リッチャー大佐が帰った後、テーブルに残された書状と許可証をメレンケリは手に取る。この紙切れ二枚で、力を使った際に犯罪になるかならないかが変わってくる。力はいつでも行使できるのに、そこには自由はない。
「メレンケリ」
父に呼ばれて、メレンケリは顔を上げる。
「分かっているとは思うが、お前のその力は自分の為にあるのではない。王国のため、そしてこの家のためにあるのだ。自分のために力を使えば、それは他の人にとって脅威になる。しかと肝に銘じよ」
メレンケリは頷いた。
「はい、父上」
「よろしい」
父は手元にあったカップを持って、母に言った。
「すまぬが、もう一杯熱い茶を頼む」
「…分かりました」
母は納得していないようだったが、致し方ないことだと思っているのだろう。この生活があるのも、夫と自分の娘が軍事警察署で働いているお陰だと分かっているのだ。
メレンケリはコートを羽織り、昨日と同じくスカーフを首に巻いて、茶色い革のショルダーバッグを肩にかける。
「メレンケリ?」
母が声をかける。
「仕事に行きます」
「…そう。気を付けてね」
曇った表情の母を心配させないように、メレンケリは精いっぱいの笑みを顔に作る。
「ええ」
冷たい風がメレンケリの白い肌を撫でる。秋も終わりに近づいていた。紅葉が過ぎた木々は寒々しく、枝をむき出しにしている。数枚の枯れた葉は風に揺られながらも耐え忍んでいる。いつ落ちるのか、まるで競い合っているようだった。
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