33、見透かされていた心
「さて、どこから話そうか。いや、お前は何が知りたい?」
フェルミアに聞かれて、メレンケリは考えた。
「何…と聞かれると、ちょっと…。具体的には考えていませんでした。そもそもこの力のことについて話って聞くことができるのでしょうか。
私は父や祖父、そして曾祖父から受け継いで来たものだったので、父の子の誰かがこの力を受け継ぐのは当たり前なことでしたし、その中で私が受け継いでしまったことは仕方ないと思ってきました。だからこの右手の力が、フェルさんが言うような『我々が招いてしまった出来事』によって生まれてしまったという話は何と言うか意外で…アージェ家に流れる血には特殊な能力が備わっているのだと…そう思ってきたものですから…」
メレンケリは膝の上で手を握ると、フェルミアの方を向いた。
「でも、話してくださるのなら教えてください。私は父からこの右手の力について何も聞いて来ませんでした。そして本当に最近になって、呪術師の方の存在を知って、この力をなくしてもらおうと思ったんです…。今の『石膏者』の仕事が嫌だったから…」
「メレンケリ…お前、やっぱり…」
メレンケリがマルスに視線を向けると、彼は心配そうに見ていた。
「ごめんなさい、マルス。本当は辛かったんです。『石膏者』の仕事なんてしたくなかったんです。でも、父から言われたことだったし、兄のトレイクもいつも私を見て眩しそうにしていましたから…何と言うか期待を裏切りたくなくて、ただただ取調室の隣に立って必要な時に男たちを石にしていただけなんです」
「……」
「それに、あなたに言ったら心配をかけてしまうと思ったんです。心配をして変な気遣いをさせてしまうと」
「そんな―」
「それに」
メレンケリはマルスの言葉を遮るように言った。
「それにきっと兄に言うでしょう?上官にも相談するかもしれません。あなたは優しいから、きっと私のことを案じて色々気を回すだろうと思ったんです。それにきっと兄に話すと思ったから…。でもそれは私が望まないことでしたから…だから言いませんでした」
「……」
マルスは初めてメレンケリの心の内を見た気がした。『石膏者』としての仕事をした後の彼女はいつも辛そうだった。だから励ますことが出来たらと思い、話を聞いていたつもりだった。もし辛いというのなら、自分が何とかして守ってあげようと思っていた。そして彼女が言う通り、身内にも相談するつもりでいた。
(全て見透かされていた…。そしてそれは彼女が望まぬことだった、か)




