122、衝突
「大変だ!消火だ!」
誰かが叫んだ。木から炎がこれ以上燃え移らないように、一部の人々が大蛇を倒すことから消火活動へ移行していく。
だが、その間にもグイファスは大蛇に剣を突き刺したり、斬ったりを繰り返す。
そして、ようやく大蛇の炎の攻撃から解放されたマルスたちは、一斉に大蛇へ斬り掛かった。
(皆……!)
メレンケリは祈った。大蛇の傍にいるというのは、確かに大きなダメージを与えられることができるが、逆に言えばすぐに相手の攻撃を受けることにもなる。
グイファスをはじめ、マルス、リックス少将、クディル、そして軍人に騎士たち。皆は、とにかく大蛇を弱らせようと必死だった。
そして、グイファスが大蛇に飛びつき、深くその剣を突き刺して大蛇の体を引き裂いた時だった。
大蛇の体がぐらりと揺れ、尻尾の動きが鈍くなる。
(今だわ!)
メレンケリは走った。
大蛇の元へ一直線に。
大蛇はメレンケリとは反対側の方を向いていた。
このまま走れば、触れられる。
大蛇の体が目前に迫る。手が届く距離にあと5歩で近づく間に、メレンケリは右手の手袋を外し、まさに大蛇の体に触れようとしたときだった。
「えっ……!?」
メレンケリの右の視界から、大蛇の尻尾が勢いよく向かってきており、その中にぶつかってきた人達がメレンケリに向かって飛んできていた。そして、そこにはグイファスの姿もあった。
(ダメ、このままだと、グイファスに右手が当たってしまう……!)
とても短い時間の、出来事のはずだった。
だが、メレンケリにとっては、とても長い時間に感じた。数秒の出来事が、まるで何十分の長さに感じるほど長かった。
メレンケリはその間に大蛇の方をちらりと見た。すると、大蛇はメレンケリを見て、にたりと笑っていた。それを見て、メレンケリは悟った。
(大蛇は私が近づいてくるのが分かっていたんだわ……!)
だからグイファスをこうやってメレンケリの方に投げて来たのである。
(どうしよう……!)
考えが迷ったとき、メレンケリが再びグイファスの方を見た。彼はさっきよりもずっとメレンケリの近くにいたが、それ故にその表情がはっきりと見えてしまった。
「……!」
グイファスの笑っている顔を。
ああ、グイファス。
その顔は、このまま、大蛇に触れろっていうことなのね。
そしてまるで言葉が通じたかのように、グイファスは頷いた。
だから、メレンケリはそのまま大蛇に触れた。その次の瞬間、グイファスはメレンケリにぶつかった。