第7話
始めはどうなることかと思ったトナカ村への馬車の旅は前半のドタバタが嘘のように後半はのんびり馬車の旅を楽しむ事ができた。
そしてやっとトナカ村に辿り着いた。
しかし、なかなかトナカ村の入り口付近から動く気配がない。
「もう、降りても良い?」
「もう少し待ってくれないか?先にトナカ村へ視察の件を知らせに行った兵士がまだ戻ってこないんだ。」エドワードはもう一度外を見る。
そんな話をしていたら戻ってきた兵士とドルファンが馬車の外で何か話している。
コンコン
馬車の扉が開きやっと出られると思ったのにドルファンの顔は物凄く怖い。
「エドワード王子。どうやら例の病がトナカ村で流行し始めているようです。」
「なに!?」
エドワードも眉間にシワを寄せて身を乗り出した。
「王子、これ以上ここにいれば病が移るかもしれません。急ぎ王宮へ戻りましょう。」
「仕方あるまい。ハルカも無駄足にさせてしまった。申し訳ない。」
「え?ここまで来てるのに病人の様子も全然見ないの?」
「ハルカ・・・。残念だが、この病はかかると死ぬ者が大半だ。ここに長居して王宮から来たものの誰かが感染してしまい、王宮や下町に持ち込んでしまえばグラント国は終わりだ・・・。」
すると外の方が騒がしくなる。
「王宮からの使者の方ですか?助けて下さいー!」
「助けて下さい!!」
村人達が助けを求めてやって来たのだ。
「あ、こら近寄るな!!」
足元に着た村人を槍の棒で押し返す兵士がいた。
私は思わず、馬車から飛び出した。
「ハ、ハルカ!?」
村人がいる方へ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「村人に対して何て事するのよ!!」
私は兵士をキッと睨み付ける。
「ハルカ!?」
エドワードも駆け寄ってきた。
私は今度はエドワードの方を向いて怒りをぶつける。
「いくら、原因が分からないからって、自分の国の人に対してこんな乱暴な事をするなんて許せない。エドワード、貴方は王子でしょ?もっと貴方にはこの状況に対して出来ることがあるんじゃないの!?」
その場がシンと静まり返る。
エドワードは始めは驚いた顔をしていたが、スッと真面目な顔になり
「ハルカ、君の言う通りだ。私が王子としてもっと積極的に動かねばならなかった。」
「そこの、トナカ村の方、我が王宮の兵の無礼な振る舞い、本当に申し訳ない。」
そう言って、エドワードは倒れていた人に手を差し出し立ち上がらせた。
「エ、エドワード様・・・。」ドルファンが止めに入ろうとするのを鋭い目付きで睨む。
その姿は王子としての威厳を放っていた。
「村長にお会いしたいのだが、誰か健康な者で案内をしてくれるものはいないか?」
村人達にはいつものニコやかさを忘れない。
「あ、俺が案内します。」
10才位の少年だった。
「では、少年頼む。」
「私も行く!」
「ハルカはダメだ!ハルカが病にかかってはこの国は救われない。」
「それは、エドワードも同じでしょ。それに私はこの病がなんなのか気になるの。これでも将来は医者になる予定だからね。」
「なんと!?そうなのか!?」
「では、ハルカはこの病からこの世界を救う為にきた救い人ないね。」
そう言って微笑んできた王子にドキドキしたことは気づかなかったことにしよう。