第5話
馬車にずっと座ってるのも結構キツイ。
お尻も痛いし、向かいにはエドワードがずっとこちらをニコニコしながら見てくるし。
ドルファンはニコリともせずにエドワードの隣に座ってるし。
そんな2人の向かいに座らないといけない年若い侍女のエミリーはずっと緊張していて、固まっている。
1週間ずっとこんな状態なのかな・・・?
「エドワードっていつもニコニコしてるけど、そうゆうのって疲れない?」
「うーん、慣れましたよ。」
またニコッとする。
慣れたって・・・。いつもニコニコタイプは実はストレス溜め込んでてその内、大爆発するんじゃないかなー。
「反対にドルファンはいつも恐い顔してるね。」
「ドルファンも昔はもっとにこやかだったんだけどね。僕が暗殺されかけたり、誘拐されかけたりって色々あったから恐い顔になっちゃったんだよ。」
エドワードは穏やかに話してくれるけど、実際は怖い想いをいっぱいしてるんだろうな。
「王子様ってやっぱり色々大変なんだね。」
エドワードは目をパチパチさせて、キョトンとした顔をする。
「大変なんですかね・・・?僕はそれ以外の生き方を知らないので、大変なのかは分かりませんが、王子として生きるのは楽しいので、今の所、不満はありませんよ。それに僕の周りの人達の方が大変そうです。僕に何かあるといつもバタバタと忙しそうだし。ね?ドルファン。」
「私もこの生き方しか知りませんので。」
更に眉間にシワを寄せて答えるドルファンだが、その声はいつもより優しくて、エドワードの事を慕っているのがよく分かった。
1日目の宿につく。
部屋に案内されたけど・・・。
「なんで、私とエドワードが同じ部屋なの?」
「そうか、ハルカにはまだ教えていなかったね。ハルカには僕と結婚していずれはこのグリント国の王妃となってほしいんだ。」
「は?なにそれ?私は救い人としての役目を終えたら元の世界に帰れるんじゃないの?」
「もちろん。ハルカが元の世界に戻ることを望むのなら私達に止める事は出来ない。でも、もしグリント国に留まってくれるのであれば、僕と結婚して欲しい。」
「いやいや、私、帰るよ!向こうに彼氏もいるし!」
「彼氏・・・ですか・・・。そうですよね。ハルカはこんなに魅力的な女性ですから、そういう方がいて当然だよね。」
エドワードは凄くしょんぼりして悲しそうな表情でそれでも笑おうとしてくる。
そんな顔されたらなんかこっちが悪い事してる気分になるじゃん!
そんな顔されても流されないんだから!!
「とにかくエドワードと同じ部屋では寝れないから私、別の部屋で寝る!侍女さん達に仲間に入れてもらうから。」
「僕が別の部屋で休むから、ハルカはこの部屋を使って。」
えーめっちゃ豪華でどう見ても王子仕様の部屋に私だけ泊まるのは・・・。
「部屋なら私が移動するから。エドワードがこの部屋を使ってよ。」
「ハルカにそんな事をしてもらっては紳士として恥ずべきこと・・・。どうかハルカがこの部屋を使って。」
頭を撫でられ微笑まれた。
赤面してしてしまう。
「わ、わかった!有り難く使わせてもらいます。」
エドワードが部屋を出て行って、ドキドキする心臓を静めるように大きく深呼吸した。
エドワードは美青年でちょっと微笑まれたらクラクラしちゃうけど、私には中津先輩ないるんだから!
改めて心に言い聞かせる。