第10話
トナカ村には全部で3人の患者がいた。
私には医者としてのちゃんとした知識があるわけではないし、この国の医療がどのようになっているかも分からないので、とりあえずこの周辺を巡回しているという医師を呼んできてもらうため数人の兵士で探して貰いに行った。
それとは別に王宮からも医師に来て貰うようエドワードに手紙を書いてもらい兵士に早馬で届けてもらう。
村の中へ入らなかった他の兵士達には他の村へ食料や日用品の調達をしてもらいに行ってもらう。
他の村から避けられて食料の確保が出来ない事や逆に感染の恐れがあるかもしれないトナカ村の人が、他の村へ行き感染させる可能性をなくすためだ。
侍女達には病人向けとみんなの分の食事の準備や洗濯を村の外で行って貰い、手の空いている時にマスクや病人と接触する者が着る用の着脱しやすい服を縫ってもらった。マスクや服は言葉で説明しずらいので、私が絵を描いた。
ジョイ以外の騎士の2人には村の外の全体的な指揮をとって貰いつつ今は近くの村で食事や洗濯、寝泊まりをしてもらっている侍女達や兵士の為の仮説の家を作ってもらう。有りがたいことに手伝ってくれる職人も隣村で見つかった。
エミリーは村の中で私の手伝いをしてくれると立候補してくれたので病人の衣類や寝具、私が病人の看護を行うときに着る脱ぎやすいワンピースや口元、髪の毛を隠すための布の洗濯をしてもらう。
空き家を仮設の診療所とし、そこに患者を移動させたが、今の私にはそこからどうするべきなのか分からない。
出来ることは栄養のある食事、清潔な環境、あと無意味な祈りを捧げるのは止めてもらいその分休んで貰いたいのに、私の目を盗んで祈りだすので
「みなさんもう神に祈るのは止めなさい。みなさんの祈りが通じてこうして私が来たのです。みなさんはもう救い人の加護を受けている。もう神に祈る必要などないのですよ。」
「す、救い人さまー!!」「なんと神々しい!!」
ハハハ、どんどん神のように祭り上げられてるけど、とりあえずこれで無意味な祈りの時間がなくなるなら良いや。
薬もとりあえず万能薬だというイガニの葉を磨り潰して飲んでもらった。
病人がいた家族には他の人との接触はしないようにしてもらい必要なものは朝、家のドアにメモを貼ってもらい届けるというシステムにした。
2日後、巡回の医者が見つかり来てもらった。
本当は来たく無さそうではあったが、エドワード王子からの呼び出しだと言われしぶしぶ来たのだろう。すごく微妙な顔つきだ。
私は、病人達に1番触れている為、すごーく距離をとっての面会となった。
エドワード王子は私と医者の間に座って話を聞くようだ。
「エドワード王子、お初にお目にかかります。マケルと申します。この周辺を巡回する医師をしております。」
「わざわざ呼び立てて悪かったね。今日はあちらの救い人ハルカ様がこの国の医療について詳しく知りたいそうだ。」
「はじめまして。この国の救い人ハルカと申します。」
「す、救い人様ですが!?なんと!?そんなことが!!」マケルは手を合わせて拝み始めた。
もう、この流れも慣れた。
「マケル医師、今日はこの村で流行り始めている発疹が出る病について教えて欲しいのです。マラドナ国で流行っているというあの病。」
「は、はい。あの病は医師の間ではイガニが効かない事で死の病と言われています。実際、マラドナの高尚な医師が育てたイガニでも治ることはなかったそうです。かかればどうすることもできない。」
「あの?イガニは医者が育てているの?どこかに生えてるんじゃなくて?」
「はい。イガニの葉を育てることが出来るのはその血筋をもった人だけです。イガニの葉を育てるには栽培者の気が関係していると言われています。その気を発することが出来るのは医者の血筋の者だけなのです。」
もしかして、それが魔法的な物じゃないのか!?
「イガニの葉は万能薬だと聞きましたけど、その他に例えば、頭が痛いとかお腹が痛いとか咳や鼻水が出る時はなにか別の葉を使うのですか?」
「いえ、すべての病にイガニの葉は効きます。切り傷にもイガニを磨り潰したモノを塗り込んで置けば治ります。」
イガニの葉は本当に万能薬なんだ!イガニの葉で今までは全ての病気が治せたから新しい薬を開発する必要もない。
医療が発達しなかったのも納得できた。




