悶々… 裏門? 気になるもん!! ~2日目の1~
ハイテンションギャグ伝奇ラヴコメ、主人公の転校2日間に突入…
話が落ち着いたりは…しない
*
もう朝だ。
だ……だるい。
い……一睡も出来なかった。
なんて、一人でアンニュイなしりとりをしてる場合じゃない。
い……いや時間はたっぷりあるけど──ッてだめだ頭が混乱してきた。
だいたい昨日だけで色んなことがありすぎた。人生でもっとも濃い一日だった。
ベッドに入ってもずーっとイライラ、モヤモヤ、クサクサ、ムラムラし通しだった。
だってそうだ。想い人が、家の向かいのアパートで独り暮らしだなんて。
でも、その人はもう、私の知っている人じゃなくって……ああ、なんて近くて遠いのナルくん。
「くそー! いっそ殺せー!」
思わず叫んでしまった。
やばいやばい。階下の母さんに聞こえなかったろうな?
恥ずかしいのを紛らわすために、カーテンの隙間から外の景色を見た。
私の心のモヤモヤに天も同情したか、このどんよりとした曇り空よ……
参ったことに、私の部屋が通りに面しているせいで、ナルくんのアパートが丸見えだ。
これじゃまるで張り込みしている刑事だ。
そう、断じてストーカーではない。
するとビックリ。ちょうどナルくんが部屋から出てきたではないか。すごい運命を感じるよ。
とかなんとか勝手にトキメイていたら、通りに出たナルくんの眼が、私を見た。
ドッカン。
心臓が跳ねた──ドキンじゃないよ、ドッカンだよ。
しかしカーテンの裏にいる私に気づいたわけではなかったらしい。そのままナルくんはスタスタと、どこかへ行ってしまった。
……あれ? 今、ナルくん、学校の制服着てたよね。生徒の失踪のせいで、今日は臨時休校だったはず。
なのに、なぜ?
あ、分かった。
休校のことを知らないんだ。昨日のホームルームにもいなかったし、委員会もサボってるみたいだから、誰からも話を聞いてなかったんだ。
たいへんだ。ナルくんが閉ざされた正門の前で茫然とする前に、教えてあげなくちゃ。
関わるなって言われたけど、ナルくんが恥をかくよりずっといい。
そうと決まれば話は早い。
そして決断した私は速い。素速くベッドから飛び降りて服を着替えると、階段を駆け下りた。
ちなみに服は私服だ。
「ちょっと出かけてくるー!」
廊下を駆け抜けざまに、リビングに向かって叫ぶ。
玄関で靴を履いている間に、奥から返事が返ってきた。
「そうねー、部屋で悶々としてるよりはよっぽどいいわー」
うわ。バッチリ聞かれてた。
外に出てみると、案の定、ナルくんは見当たらない。
でも行き先は決まってるから、嫌でも追いつける。
ほら、かどを二つ曲がるだけで、ちょっと遠いけどナルくんの背中が見えた。
しかし、私の足はそこで止まってしまった。
女の子が一人、脇道から出てきて、ナルくんと一緒に歩き出したのだ。
しかも、五十川さんだった。
私のショックはイカばかりか。
と思いきや、そのあとから綾さん、伊深さんが次々に合流してきた。
四人が横一列に並んでズンズン歩いてゆく。
いやいや『G○ン』かっつーの。後ろから自転車とか来たら迷惑だろうが。
奇妙なことに、五十川さんたち三人は私服だ。
でも、ナルくんに休校のことを教えるわけでもなく、みんなで学校の方に向かっている。
どういうことだろう。私は好奇心に命じられるまま、距離を取ってあとをつけた。
辿り着いたのは、やはり学校だった。
しかし正門ではなく、裏通りに面した、普段は使われていない(っぽい)小さな通用門だ。
門の前には痴漢が服を着て立って──じゃなかった、モジャモジャが白衣を着て立っている。
ま、どっちでもいいか。言わずもがな虻内先生だ。
ナルくんたちが来ると、先生は門を少しだけ開いて、四人を中に通し、自分も校内に入って門をまた閉めた。
私が遠くの塀の陰から見ているのにも気づかず、みんな揃って、校舎へと消えてゆく。
わからないことだらけだ。
五十川さんたちが昨日言っていた委員会なのだろうか。それにしてもナルくん以外は私服だし、だいいち今日は臨時休校だ。
私は塀の陰から出て、門に向かった。
当然、施錠されている。
私はあたりを見渡し、ひと気がないのを確認すると……
「とうッ! あ、どっこいしょ」
そこそこ頑張って、門を乗り越えた。
普段の私からは考えられない行動力だが、すべてはナルくんの謎を解かんがためだ。
校舎の中は静まりかえっていて、人の気配はまるでない。
ナルくんたちも完全に見失ってしまった。委員会の活動だったとしても、会議室がどこなのかもわからない。
どこかで足音でも聞こえないだろうか。
こうみえて私は耳がいい。まして、これだけ静かなのだから、どこで物音がしようと響いてくるはずだ。
とりあえずテキトーにさ迷っていると、ある部屋の前で、私の地獄耳が、扉の奥から漏れる声を捉えた。
「犯人は、ネクロマンサーだというのかね」
その低めのダンディボイスの主を、私はすぐに思い出した。
校長の最中田印義先生だ。
ということは、ここは校長室?
そんなわけはなかった。顔を上げると、『理科準備室』の札が見える。昨日、虻内先生がカコウとかいう怖い女の子にぶっ飛ばされたところだ。
扉、もう直ったんだ。
「ほう。昨日の集会をサボったと思ったら、まさか手掛かりを得ていたとはな。愛い奴だ。褒めて使わそう」
ん? このよく通るアルトと、怪しい日本語に聞き覚えが……
「校長、怪しい人物か、呪術の気配にお心当たりは?」
「いや、ない。まさかこんなことになろうとは、知るよしもなかった……」
虻内先生の問いに、校長は声を震わせて答えた。
さっきから、一体なんの話をしているの……?
ネクロマンサーって〈死霊使い〉のことだよね。亡霊を呼び出して使役したりする魔術師だよね。
でも、それってファンタジーとかゲームとかの存在じゃないの? みんなでゲームの話してんの?
その時だった。
「ひ――――ッ!」
いきなり、私は身体を裏返されて、背を扉に押しつけられていた。




