再開! 再会? 好展開!? ~1日目の2~
運命の再会編。
じつはこの作品は「ギャグ書く」っていうのだけ決めて、プロットも先の展開も何も考えずに書いてました。
結局、私が転入先である、一年甲組の教室に辿り着いたのは、ホームルームが終わろうとしている、まさにその瞬間だった。
「お、来た来た」
初日から遅刻という失態にもかかわらず、教壇に立つ若い担任の先生は爽やかな笑顔で私を迎えてくれた。いい人だ。
真締蒼太。先だって理事長に挨拶に行った時に、この人にも会っている。
去年実習を終えたばかりの教師一年目というルーキー先生だが、真面目で優しくて賢くて面白くて、おまけに背も高くて容姿端麗という非の打ち所のなさで、生徒たち(主に女子たち)の人気と、同僚たち(主に野郎ども)の嫉妬を独占しているらしい。
「すみません、寝坊しました」
とりあえず、そう言って私は謝った。
さっきの事態を、この場でどう説明していいのか、咄嗟に判断がつかなかった。
「はは。春眠、暁を覚えず。ほどほどにね。でも、なにごともなくてよかったよ。途中で事故にでも遭ったんじゃないかって、心配してたんだ」
ほんと、いい人だ。目頭が熱くなる。
うん、でも遭いました──変態に。
それから、私は先生に促されるまま、教壇に立って簡単な自己紹介をし、最後に「よろしくお願いします」と添えて、お辞儀をした。
なにもかも慣れた所作だった。発声の具合といい、礼の角度といい、自分でもかなり洗練されていると思う。
転校の挨拶の大会があれば、私のベストフォー入りは間違いない。まぁ、そんな大会があっても、恥ずかしすぎて出ないけど。
あとはいつも通り、与えられた席に着くだけだ。
しかし、教壇から降りようとした途端、私の完璧は崩された。
一人の男子生徒が教室に入ってきた瞬間、私はドアの方を向いて固まってしまった。
ドッカン。
心臓が、胸を突き破りそうなくらいに跳ねた。
その子の背は低めで、そこそこの細身。
「気怠げ」と額に書かれたような顔は、小学生かと思うほど幼い。
そして、特徴的な癖毛──毛の房が三つ、まるで触覚のように立ち上がって、一周ぶんカールしている。
重力無視も甚だしい。もう、癖毛っていうか超アホ毛だ。ドアホ毛。
しかし、私の時が止まったのは、その子に一目惚れしたからではない。
それはもう何年も前に済ましていて、今も誠心誠意、継続中だ。
見覚えがあるどころではない。
知っているのだ。
六年前から全然、顔が変わっていない。
そう、信じられないくらいに変わっていない。まるで神様が私のために、彼の時間を止めてくれていたかのようだ──神様ありがとう!
……ただ、印象はちょっと変わってるけど。
「お、名瀬羽。今日は早かったじゃないか」
「どうも……」
半分寝ているような眼を擦りながら、彼はまるで幽霊のようにフラフラと歩いてくる。
「ナルくん」
そう呼んだ瞬間、彼はその寝惚け眼を、驚いた猫のようにまん丸く見開いた。
「……マコちゃん?」
その子こそは、私の幼馴染みであり、私がこの町で一番逢いたかった人。
……あと今朝の、ちょっとマヌケな夢のパートナー。
初恋の相手、ナルくん──名瀬羽成くんだったのだ。
「お? なんだ? きみら知り合いか?」
生徒同士の思いがけぬハプニングに、真締先生も意外そうな、そして少し面白そうな表情で、私たちの顔を交互に見た。