チュートリアル わたしはようやく『最強』を目にして……涙した
なお、サブタイの『最強』は「げんじつ」とルビを振る感じです
終わったー、と。称号【闇の妖精に好かれし者】の取得を告げるインフォが流れるのを見て、思わず叫んだ。叫ばずにはいられなかった。それぐらいにはストレスがマッハだった!
もう、ダメだよ! こんな真っ暗闇で50時間とか! 部屋から出ちゃダメ、【スキル】使っちゃダメ、モンスターと戦っちゃダメ、ダメ、ダメ、ダメダメダメだめーッ!!
「むきーッ!! ああもう、志保ちゃん、外行こう! 太陽見よーっ!!」
「はいはい、どーどー。今、外出ても夜だから太陽無いよ? というか、『アーテー』に太陽は――……あー、無いことも無い?」
ならばそこだ! って、特に深く考えることなくビシッ、と指差して言えば、親友のエルフ少女――鍵原 志保ちゃんは、わかる人にはわかる、ほんのり苦笑したような雰囲気になって、「じゃあ、とりあえず、このダンジョン出よっか?」と。地面に広げていた暇つぶしの盤上遊戯をしまって、立ち上がった。
で、わたしは逸る心の滾りのままに通路の途中で出会ったガイコツどもをぶっ飛ばし。両手の短槍を振り回して、アーツを思いのままに使って、スッキリ。……ふぅ。
「で、で? 常夜の廃都アーテーにある『太陽』って、なに?」
「あ、理性が戻った?」
はい、『これ』が夜の街にある『太陽』、と。そう言って見せてくれたウィンドウにあったのは、この街の中央にある転移結晶から行ける場所に封印されてるっていう『イベントボス』――その名も『堕ちた太陽の申し子』の画像データで。つまり、今から『イベントボス』を見に行くってこと?
……えっと? 志保ちゃんの表示してくれた『堕ちた太陽の申し子』の情報の一番上に表示されているモンスターのレベルが40なんだけど? わたしたち、〈初級斥候Lv.25〉と〈初級魔法使いLv.24〉なんだけど……これ、明らかにレベル帯があってなくない?
「たぶん、みはるんは『イベントボス:堕ちた太陽の申し子』の調査とかしてないと思うから、ざっと情報をかいつまんで説明しちゃうと――あれは、いわゆる『レイドボス』かな?」
『レイドボス』――つまり、最大六人のプレイヤーからなる『パーティ』を複数投入して戦う大規模集団戦闘――『レイド』によって戦う『ボスモンスター』、ってこと?
「まず、この『アーテー』にあるダンジョンへの入り口――4つの転移結晶周辺以外はフィールド扱いで、普通に敵モンスターがポップする、っていうのは知ってるよね?」
うん。それは学校で志保ちゃんに聞いた。
たしか、試験版でもプレイヤーが拠点とする街にモンスターが攻め入ることがあったらしいけど、今回はそのときに襲撃してきたモンスターと同じ『スケルトン』と『ゾンビ』が街なかでもポップ。で、そのレベルが1から20までの、ダンジョンや他のフィールドなんかとは違ってレベル帯がバラバラ。出現するのも『スケルトン』と『ゾンビ』の混合する、数もレベルも完全にランダムポップっていうレベル上げには最悪の環境で――ああ、だから『レベル差で経験値減少』の仕様を限定条件下で解除できるようになってるのかな?
出現するモンスターのレベルが1から20だと、『安定して狩れるレベル帯』でパーティ組んだら、どう頑張っても『経験値減少』の仕様に引っかかりそうだし。パーティに一人以上のレベル1桁のプレイヤーを組み込んでのレベル上げも、フィールドでなら意外と捗る?
「で、そんな街の中央にある転移結晶で行ける、いわゆる『ボスフィールド』は、驚くことに『アーテー』と同じ広さ――というか、設定上は『並行世界のアーテー』らしいから、たぶん本当に同じだけの広さだと思うんだけど、それはさておき」
……え? ちょ、ちょっと『並行世界』とかって単語に心惹かれるんだけど、置いとかれちゃうの?
「この『アーテー』と『ボス空間のアーテー』の間に『可能性の間』っていうのがあるんだけど。そこには――はい、これ。クラン『薔薇園の守護騎士』用のPASS」
そう言ってわざわざメッセージを介して送ってきた文面には、16桁の『共通語』でできた……『パスワード』?
「それ、転移結晶で跳べる『可能性の間』を選別するためのPASSで。そこに入るだけなら人数制限は無いけど、『ボスの居るアーテー』に入れるのは最大で100人までなんだって」
だから、軽はずみに他の人に教えないように、と。そう告げる親友に「は、はぁ……?」と首を傾げて返すわたし。えっと……よくわかんないけど、なんでまたそんな面倒な仕様に?
「で、話を進めるけど。この『イベントボス:堕ちた太陽の申し子』なんだけどね……困ったことに、『どこかの世界のボスモンスター』を倒された瞬間――設定に曰く、『その勝利に数多ある可能性が確定される』んだって」
だから、誰もがボスの初討伐を狙っていて。だから、誰も彼もが『ボスを最初に撃破できそうな団体』――最大100名しか入れない『ボス空間』を狙ってるってわけ、と。そこまで言われて、ようやくさっきのパスワードを入力してまでボスと戦えるエリアを別ける理由がわかった。そっか、100人て『多い』って思ってたけど、『先着100名』ってなるといきなり狭き門に思えてくる不思議。
「もっとも、イベント期間中は『堕ちた太陽の申し子』戦自体は継続して挑戦可能なんだろうけど。でも、そんな設定を、わざわざ誰もが触れる『仕様説明用の石碑』に明記する辺り、きっと『初回討伐報酬』みたいなのが設定されているだろう、って。≪掲示板≫なんかでは騒がれてるの」
なるほど、それはあり得るかも、と。情報通の相棒に頷き、ほかのゲームなんかでは割とありふれた『初めてボスを討伐したプレイヤーたちだけの特別な報酬』という魅惑的なワードに瞳を輝かせて思う。
うん。そりゃあ、そんな報酬は欲しいし、みんなが『最初に倒せそうな団体入り』を狙ってるんなら、『最前線』の『攻略組』であるクラン『薔薇園の守護騎士』と同じエリア入りを狙うよねー、と。しみじみ、成り行きで所属することになった自分の所属するクランの偉大さを知る。
――なんて、ほのぼのとしていられたのも、次の志保ちゃんの台詞を聞くまでだった。
「そして、一番重要な情報なんだけど――現在、ミナセさんがその『イベントボス:堕ちた太陽の申し子』と戦ってるの」
それも、本来なら私たちと合流予定だった16時過ぎから、現在進行形で。……最低でも3時間以上、ぶっ続けで。
「っ!? そ、それ、おじーちゃんが……!」
血相を変える。血の気が引く。
思い出すのは、あの日の――AFO稼働初日の、目の前で倒れていく少女の姿で。わたしの『わがまま』で無理させて、強制ログアウトさせちゃったおじーちゃんのこと。
あの日。あのあとで。おじーちゃんが意識不明に陥ったということを知ったおにーちゃんたちに、わたしは……すごく、すごく、すっごく怒られた。
それどころか、そのことを聞きつけた親族一同に何度も何度も責められて。なじられて。……それでわたしは、ようやく水無瀬家にとって『水無瀬 修三』の存在の大きさを知った。
だから――……本当は、再会するのが怖かった。
わたしの軽はずみな言動で、また『水無瀬家の至宝』を傷つけるのを恐れて。……また、親族一同に嫌な目を向けられたくなくて。
だから、わたしは……本当は、嘉穂ちゃんのことを抜きに、おじーちゃんから距離を置こうとしてた。
それなのに――
「もう、もう、もう……! あれだけ『無理しないで』って言っておいたのにッ!!」
急ごう、志保ちゃん! と、親友を促して駆け出し。胸中では、もしまたおじーちゃんに何かあったら、と怯える。また、おにーちゃんやみんなに怒られる? と、胸をしめつけるような痛みに顔が引きつる。
志保ちゃんは「うん、急ごう」って、わたしがおじーちゃんの身を案じる『良い子』だと思ってくれてるみたいだけど――違う。違うよ、志保ちゃん。
わたしは、たしかにおじーちゃんを心配してるけど……そうじゃない。わたしが心配してるのは、だって、『わたしのこと』なんだもん。わたしが、ただ怒られたり責められたりするのが怖いだけだもん。
だから――
「大丈夫だよ、みはるん。ミナセさん、今回は直前にログアウト休憩挟んでるって話だし。ミナセさんは凄く強いから、大丈夫だよ。きっと」
――……違う。
違うよ。そうじゃない。
おじーちゃんが『強い』とか、『弱い』とか……そういう問題じゃなくって。……そもそもわたしは、おじーちゃんを心配する『良い子』じゃなくって。
わたしは……。
……わたし、は。
「大丈夫。ミナセさんは、まだ『最前線』で戦ってる」
果たして、そんな親友の言葉の通り。不安に圧し潰されそうになりながら、志保ちゃんがパスワードを入力するのを待って。跳んだ、『可能性の間』という広場で。
――わたしは、初めて『最強』の姿を目撃した。
[ここは、アーテーの『可能性の間』です]
そんな視界端に映る、現在地を教えてくれるインフォなんて見えない。見る暇なんてない。
まるで決闘場のような、競技場のようにぐるりと周囲を囲うみたいに観客席があって。その真んなかに見世物みたいな台座に乗った、『ボス空間』を縮小表示しているのだろう立体映像があり。流星が降り注ぐ宇宙のような夜空の下、数百人のプレイヤーの抱える広大な空間。
そんな『可能性の間』で。もしかしたら、全員の視線のさきに居るのが――赤い髪の女の子。
その子は、まるで呪いの装備みたいな禍々しいデザインの甲冑を纏い。自身の身長より長く、大きな鎌を手にして。たった一人で、『ボスモンスター』だろう怪物と戦っていた。
「し、志保ちゃん、あれが『イベントボス』?」
「うん。その『第三形態』だね」
…………はい?
思わず、隣の相棒を見れば、彼女はわたしには見えないウィンドウでも操作しているのか。指や視線を忙しなく動かしながら、「あー……、また随分と呆れることを」と言って。言葉の通りに呆れるような雰囲気を纏って、チラリ、わたしの目を見て言葉を継いだ。
「じつは、主人公くんの差し金なんだけどね。クラン『薔薇園の守護騎士』のメンバーが事前にこの『イベントボス:堕ちた太陽の申し子』のレベルや攻撃モーション、その他を調査してたんだけど、クランお抱えの【看破】持ちが伝えた、残存HPの4割――合計5本もある、ほかのモンスターなんて比べようもないHPのバーを2本――削りきった、その瞬間に『あれ』は『変身』。レベルが46以上になっちゃったらしくって。途端に何もかもが読み取れなくなっちゃったらしいの」
で、主人公くんは、妹のローズを介したうえでミナセさんに『ちょっと視てきてくれない?』と依頼。
その結果が、連続5時間近い戦闘時間と、確認されていた『第二形態』を撃破しての、未知の『第三形態』との一対一というのだから、呆れるしかない、と。相棒のエルフ少女は軽く言うが、
「いやいやいや! それ、おかしいよねッ!? なんかもう、どこがどう、って次元じゃなくて、何もかもがおかしくない!?」
え? もしかして、わたしがおかしい!? と、頭を抱えて「うがー!」と吼えれば、「どーどー」と宥めにかかる相棒。
「うーん……、さすがにこうも間断なく攻防を繰り広げられたらメッセージで確認、ってわけにもいかないから、『コール』で確認しちゃうね」
ちょっと待ってて、と。やっぱりどこまでも冷静沈着な様子で告げる志保ちゃんに、わたしはちょっと混乱が収まりそうにない。
……え? というか、なんで100人は入れるフィールドで、レイドボス相手にタイマン?
台座の上の立体映像。そのなかの、おじーちゃんのことを注視していたら眼前に浮かぶウィンドウ。そこにはこれまでよりくっきりと見える、それまでわたしが目を凝らして見ていた、不気味な甲冑と武装を手にして戦う女の子と、その彼女を明確に殺そうとでもするように嘴を、爪を、腕を振るう全長4メートル近いだろうバケモノで。
こうして、遠くから見ているだけでもわかる。完全に、完璧に――わたしじゃ、この戦いに介入できない、って。
わたしは敏捷特化の回避主体のアタッカーで。手数で圧倒するタイプのステ振りだから、わたしが『絶対に避けられない』ような速度で、『受ければ即死だと知れる』威力の攻撃をされたり。ましてや、範囲攻撃じみた魔法まで使われたら手も足もでない。
そのうえ、周りには数十体からなる死霊系モンスターの群れが居て。ビックリなのが、そのなかに居る『黒いローブと杖装備の骸骨』までが魔法を使ってるみたいで……。
絶望的。と、誰もが思うだろう戦力差にあって、攻防を繰り返す一人と1体。
そう、驚くべきことに――勝負になっているのだ。
最大100名からなる大規模集団戦闘用のボスを。その取り巻きを相手に、一人で。防戦一方に見えて、その実、わずかに攻撃をしているのが見える。避けて、受け流して、反撃できている――わたしには絶対にできないのに。
……そうだよ。おじーちゃんは、『あの』イチちゃんの――最強のU14女子と名高い水無瀬 一の師父様だ。おじーちゃんの強さがわかんなくても、『あの』一ちゃんの強さなら知ってる。一ちゃんの試合を応援しに行ったり、稽古として試合をしてもらったこともある。だから、その都度「私なんて、師父様に比べたら、まだまだ」と零していたのを覚えてる。
だけど、わたしは知らなかった。
だけど、わたしは心のどこかで見下していた。
これまでも、おじーちゃんはVRMMOが本当に初めてなのだと知れるトンチンカンなことをしていた。普通なら知っているだろうことを知らなかったし、その度にわたしや志保ちゃんに説明されていた。そんなだから、どこかで『AFOでなら、わたしの方がすごい』って思ってた。
――それがひっくり返ったのは、いつからだろう?
嘉穂ちゃんのためにレベル上げをがんばって。
嘉穂ちゃんと一緒にダンジョンに籠るようになって。
それでイベント直前に見せてもらった≪ステータス≫の時点で、すでに遠くに行かれてしまっていた。
それが――
「悔し、かった……?」
思わずこぼれた、秘めたる嫉妬。それを口にして。耳にして。音をたてて血の気が引いた。
目を丸くして。額に汗して。それでも、眼前のウィンドウに映る『頂上決戦』から目を離せない。……否、おじーちゃんの『欠点』を探して目を血走らせている自分に気づいて、再度顔から血の気が失せる。
わ、わたしは、なんで……。おじーちゃんの『欠点』なんか探して……それで『勝って』、それで『見下したい』って……? わたしは、なんて…………醜い。
「…………嗚呼」
嘆く。悲しむ。
目の前で、ついには物理的な攻防が魔法を交えた戦闘となり。『イベントボス:堕ちた太陽の申し子』が闇の属性魔法だろう『槍』のような攻撃を弾幕のように連続で放ち続けるのに対して、おじーちゃんは瞬時に装備を変更。
一瞬の、換装による閃光のあとで、今まで纏っていた禍々しい武器や盾などを躊躇なく捨て去り、冗談のように両手に『ヌンチャク』なんて持って相対した少女は、それを振り回して迫りくる『槍』を両手のそれで迎撃し。躱し。観ていた誰もが息を飲むような絶技をもって、ほとんどすべてを相殺してみせた。
そんなおじーちゃんの姿が――妬ましい。
そんなおじーちゃんの強さが――疎ましい。
少女が『槍』を2本――嘉穂ちゃんが使っていた三俣の鉾と、さっきまで纏っていた禍々しい造形の鎧と似た『斧と槍が一体化したような長物』を手に、今までにない速さで駆け抜け。取り巻きの死霊系モンスターを壁にするように戦い出してからは、特に。……呆れたことに、『槍の二刀流』はわたしの戦闘スタイルだ、という醜くて悍ましい感情が湧き出し。心を染め上げていくようで。
……ああ、ダメだ。ダメだよ、もう。
気づいた。気づいてしまった。
わたしは、もうおじーちゃんを認められない。もう、嫉妬の熱がわたしを黒く、黒く、クロく、染めて――
「みはるん!」
肩をゆすられ、ハッと目を剥き。よろよろと隣を――志保ちゃんを見て。彼女に目元を拭われて、自分が泣いていたことにようやく気づいた。
「大丈夫。ミナセさん、ただ『私たちが来るのを待ってただけで、離脱自体はいつでもできた』って言ってたから」
そう抱きしめ、わたしを安心させるためだろう言葉に――『こころ』のもっとも柔らかいところから血が流れていくのを感じた。
「ほら、主人公くんが調査を依頼したって言ったでしょ? で、わたしたちがこれから行く、って先にメッセージで伝えてたから、『それなら、限界まで未見のモンスターの攻撃を引き出してみせる』って。……まったく、無理しすぎだよね」
…………嗚呼。
ああ、いたい。いたい、よぉ。
こころが……いたい。いたい。いたい。いたい。イタイ……!
「でね? そろそろ、装備の耐久値的に厳しくなってきたから、って――あ! ほら、見て! ミナセさん、『ケムリ玉』使って上手いこと離脱できたみたい」
ふふ。なんかね、ミナセさん。あの日、PK相手にケムリ玉でいろいろ助けられたから、ってね。絶対、1つは必ず持ち歩いてるんだって。『お守り代わり』なんだって。おかしいよね。
それにね。ミナセさん、地味に隠密系の【スキル】も充実してて。離脱するだけなら本当にいつでもできたんだって。
「なんか、ミナセさんが【看破】系の【スキル】で調べたらさ。あの『第三形態』のレベル、50もあったんだって。……すごいよね。そんなのと一対一とかさ」
彼女が抱きしめ、頭を撫でて告げるのは『身内のことを心配しすぎて情緒不安定になっている親友を慰める』ための言葉で。
そのために心の底から、貴女のお爺さまは凄いね、と告げているのであって。そこには悪意なんてなくって。優しさから出る言葉だってわかっていて。
……だけど。
それでも――
「みはるんの『自慢のおじーちゃん』は、やっぱり誰よりも凄い人だよね」
――気がつけば、志保ちゃんを乱暴に突き飛ばしていた。
それに驚いて、わずかに目を丸くする彼女から目を逸らして。自分でもビックリするぐらい冷静に。……いっそ何もかもイヤになったのなら即座にログアウトして。それであと腐れなくAFOをアンインストールでもすれば良いのに。わたしは女々しくも一々『パーティ』から脱退して。
混乱、困惑している親友に、わざわざ「大っ嫌い!!」なんて捨て台詞を吐いて。全力で駆けて『可能性の間』から逃げ出して。
……途中のことは覚えてないけど。とにかく、息を切らせて辿り着いた転移魔方陣広場で、『ログアウト』して。それで、現実に戻ったわたしは……無様に、みっともなく、泣いた。
…………もう、泣くしかなかった。




