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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト62 おじーちゃん、鉱山街『カベイロス』に再臨す?

 いったん、ログアウト休憩を挟んだうえで現実世界の22時過ぎに再びログインし。ダンジョンから外に出ながら、『フレンドリスト』を呼び出して嘉穂ちゃんのログイン状態を確認。……とりあえず、タイミングと場所的に間違いないじゃろうが、子猫に『フレンドコール』を繋いで、鉱山街の件を直接訊いてみることに。


 その結果、どうやら予想通り、嘉穂ちゃんが鉱山街『カベイロス』の発展に貢献したのは間違いないようで。今日までの――と言っても、現実世界では1日も経過しておらんし。体感時間が10倍となっていた儂ともまた経過日数が違うんじゃが――子猫の大冒険が語られることになり。


「カホは頑張りました!」


 転移魔方陣広場にて再会した黒髪褐色肌の猫耳メイド幼女は、そう胸を張って告げて。そこはかとなく瞳を輝かせつつ頭を差し出してくるので、「うむ。よく頑張ったのぅ」と褒めながら、その小さな頭を撫でてやれば子猫はご満悦の様相となり。なんとも……和む。


 ……ふむ。しかし、『ゲーム的な視点』として視るならば、この『発展度』というのは『一定数の鉱山街カベイロスに関する依頼の達成』が鍵で。嘉穂ちゃんが頑張って『お手伝い』をし続けたから、というのも嘘ではないのじゃろうが……この規模の変化は、当然、プレイヤー一人の功績で実現されるとは思えず。


 ゆえに、嘉穂ちゃんの言う「ミナセちゃんへの『プレゼント』だよ!」という言葉は間違いであって。鉱山街の職人ドワーフたちが儂に会いたがったがために転移魔方陣広場を開設することになった、というわけではないじゃろう。…………たぶん。


 なんにせよ、嘉穂ちゃんが言う通り、たった1晩滞在しただけの儂などのことを覚えていて。また会いたいと言ってくれて。そのためにいろいろと頑張ってくれたと言うのじゃから、ここは挨拶ぐらいはしに行くべきじゃろう、と。さっそく子猫を伴って転移魔方陣広場から鉱山街『カベイロス』――と、この『カベイロス』という名前は聞いたことが無かったが……あの街にも名前があったんじゃな――へ転移いどう


 果たして、『懐かしい』と感じるほど滞在したけでもないそこは、前回来たときとは随分と様変わりしているようで。……それ以前に、そもそも儂が訪れたときには転移魔方陣広場など無かっただけに、自分がどの辺りに跳んだのかわからなかったが、


「――おいぃ!? も、ももも、もしかして、ミナセか!?」


「あン!? なに、ミナセの嬢ちゃんが来たじゃとーッ!?」


「ふぉぉぉおおおおおッ!! ほ、本当に、ミナセが来た!!」


 ……はて? なぜに、ここまで歓迎されておるんじゃ?


 そして、隣の嘉穂ちゃんは何故「どやぁ!!」と言って胸を張っておるんじゃ?


「おお~い、とっとと姐さん呼んでこい!!」


「いや、むしろミナセの嬢ちゃんを連れて行こう!」


「宴会じゃ! 宴会じゃぁぁあああ!!」


 …………ふむ。儂、前回、なにかしたかのぅ?


 記憶力には多少なり自信があったんじゃが……ここまで歓迎され、AFO内の時間的には朝から宴会を開き、騒がれるほどの何かをした記憶が無い。それこそ、嘉穂ちゃんと同じく、多少の『お手伝い』をしたぐらいで……。街の貢献に、それほど寄与した覚えもないんじゃが、と。鉱山街カベイロス職人ドワーフたちに引っ張られ、なし崩し的に宴会へと参加させられながら、終始首を傾げ続け。


 とりあえず、ローズやイチのログイン時間である現実世界の23時まで、おおよそAFO内時間で2時間ほど宴会に付き合い。一通りの挨拶周りを済ませたうえで、儂は再びイベントの舞台である常夜の街『アーテー』へと戻ることにして。


 暗所と骸骨スケルトンたちが苦手な嘉穂ちゃんは、変わらず鉱山街『カベイロス』や山林に囲まれた街『アイギパン』の依頼を。美晴ちゃんと志保ちゃんは、儂が検証し、立証した称号【闇の妖精に好かれし者】の取得を狙って学校から帰ってすぐからダンジョンに籠ることにしたようで、イベント2日目の夕方までは別行動、と。


 加えて、イチまでもが「まだ、師父しふ様にお見せできる腕では無かったようなので、申し訳ありませんが最終日まで一人にしていただきたく」というメッセージを寄越してくれて。……どうやら、先日のスケルトン相手に見せた剣筋が、よっぽど気にいらなかったようで。せっかくの初イベントで、ようやく固定パーティを組むことになったというのに儂ら『幼精倶楽部フェアリーサークル』は、どうしてこう纏まりがないのか、と。呆れるやら悲しいやら、


「――代表リーダーとして、その辺はどう思うかの?」


「いえ、特に何も」


 果たして、転移魔方陣広場にて合流した深紅の巻き髪令嬢にそう愚痴れば、ローズは表情を特に動かすことなく「最終日だけでもご一緒できるのでしたら、それで良いのでは?」と返し。次いで儂に、特別やりたいことというのがないのであれば、今夜はレベル上げを手伝ってほしい、と。可能なら、支援補助サポートするので『レベル10開始ダンジョン』――『アーテー南の迷宮』の走破をしたい、と言い。


 どちらにせよ、ミナセさんには負担を強いることになるかと思いますが、と申し訳なさそうにしつつも頼ってくれた狐耳令嬢をまえに……現金なことに、儂の機嫌は即座に持ち直し。あらためて、二人組ペアでダンジョン走破するということで、まずはお互いの≪ステータス≫を表示して見せあったのじゃが――……なぜかまた呆れられた?


「あの……。なぜ、そこで不思議そうな顔して首を傾げているのですか?」


 ローズはそう言って、ため息を一つ。可視化された儂の≪ステータス≫を表示したウィンドウを指し示すので、それを見るが――



『 ミナセ / 初級戦士Lv.38


 種族:ドワーフLv.15

 職種:戦士Lv.23

 副職:探索者

 性別:女



 基礎ステータス補正


 筋力:4

 器用:10

 敏捷:10

 魔力:0

 丈夫:14



 装備:初級冒険者ポーチ、薔薇柄のスカーフ、デスティニー作JS制服セット



 スキル設定(6/6)

【強化:筋力Lv.3】【収納術Lv.26】【聞き耳Lv.28】【忍び足Lv.25】【慧眼Lv.4】

【潜伏Lv.22】



 控えスキル

【暗視Lv.26】【盾術Lv.24】【斧術Lv.23】【翻訳Lv.3】【鍛冶Lv.17】

【槌術Lv.24】【水泳Lv.25】【回復魔法Lv.9】【看破Lv.12】【罠Lv.12】

【漁Lv.11】【投擲術Lv.1】【調薬Lv.2】



 称号

【時の星霊に愛されし者】【粛清を行いし者】【七色の輝きを宿す者】【水の精霊に好かれし者】【贖罪を終えし者】【武芸百般を修めし者】【闇の精霊に好かれし者】   』



 ――……ふむ。特に、変なところもないようじゃが? と、再び首を傾げてローズの顔を見上げれば、


「いえ。普通に考えまして、現状、【〇〇の精霊に好かれし者】系の称号を唯一2種類ももっているプレイヤーであり。おそらくはこれから先、しばらくは唯一無二のままでしょうミナセさんの≪ステータス≫を見て、呆れてしまうのは仕方のないことだと思うのですが……」


 そう半目で言われてしまえば、「……ふむ? そういうものかのぅ?」と納得することにして。そう言えば、称号【闇の精霊に好かれし者】を取得してすぐにメッセージで報告した志保ちゃんにも呆れられたようじゃったが……それこそ毎回のことだったので特に気にしていなかったが、なるほど、あれはそういう理由から呆れられていたのか。


 なお、同じく称号【闇の妖精に好かれし者】の取得を狙って暗所に籠ることになった二人には「さぁ、美晴ちゃんと志保ちゃんも〈運び屋〉を『職歴』に加えようではないか!」と、半分ネタのつもりで勧めてみたところ、驚いたことに、すでに二人して〈運び屋〉に転職することは決めており。


 曰く、戦闘できず、生産もできず、下手に場所を移せない状況で『50時間籠らなければならない』なかでも〈職〉のレベル上げができるということで、儂に勧められるまでもなく『ほかの選択肢がない』ゆえに〈運び屋〉には就くことにしていたのだそうで。


 美晴ちゃんには「正直、【収納術】もだけど、そこまでレベル上げできる時間をこのさき取れるとも思えないんだけどねー……」と返され。志保ちゃんには「お姉ちゃんのように『固有技能スペリオル化』までもっていければ【収納術Lv.30】ぶんの容量が常態となるわけなので有用そうですが……おそらく〈運び屋〉と【収納術】のレベル上げをこの先、集中的にすることは無いかと」という旨の返信をもらったが、それはさておき。


 称号【闇の妖精に好かれし者】と【闇の精霊に好かれし者】の効果は、それぞれ――



〇 称号【闇の妖精に好かれし者】


・取得条件:50時間以上連続で暗闇のなかに居続ける。

・効果:暗所での行動にプラス補正。また、闇属性の攻撃の威力と効果を上げ、ダメージを減少させる。



〇 称号【闇の精霊に好かれし者】


・取得条件:200時間以上連続で暗闇のなかに居続ける。

・効果:闇属性の攻撃の威力と効果を上げ、ダメージを減少させる。また、暗さに応じてステータスが上昇し、MP回復速度が早まる。



 ――と、このようなもので。


 とりあえず、美晴ちゃんたち二人は、儂と同じくダンジョンの『広場セーフティゾーン』で時間を潰すことになり。……その暇つぶしのために、わざわざ事前に盤上遊戯ボードゲームを――聞けば、その手の『ミニゲーム』は≪メニュー≫に項目がちゃんとあり、選択すれば取り出せるという――幾つか用意しているらしい辺り、さすがは現代っ子。電子仮想世界ゲームのなかで盤上遊戯ゲームとか、儂には出ない発想である。


「しかし、儂はてっきりローズも称号【闇の妖精に好かれし者】の取得を狙うものと思っておったのじゃがな」


 なんだかんだで、美晴ちゃんたち小学生組は仲が良いようで。最近では昼食を毎日一緒にとっておると聞くし、てっきり今回も三人一緒に籠るのかと思っておったのじゃが、と。そう首を傾げて問えば、「……わたくしには、そんな余裕がありませんので」と深紅の巻き髪令嬢は寂しそうな微笑をたたえて答えた。


「美晴さん、志保さんは『体感時間が10倍となっている』今だからこそ『50時間』もの時間を称号の取得に充てられると考えたのでしょうが……わたくしはここで少しでもレベルを上げておきませんと、置いて行かれかねません」


 もっとも、同じように多忙そうなイチさんが参入してくださったことで、わたくしが最弱という状態にはならないのでしょうが、と。そう冗談めかし、肩をすくめて告げる狐耳令嬢に儂も苦笑を返し。……まぁ、イチにはこれといって急いでレベル上げをする理由も無く、それこそ『休む』ためにAFOにはログインしていると言うのじゃから、そうじゃろうな、と。もう何度目とも知れん、彼女たちの『遊ぶ暇もない日常』に疑問を感じずにはいられないが、それはさておき。


「……とりあえず、儂が先行してモンスターとトラップなどを手当たり次第片付けていくでな。ローズは、無理せんよう自分のペースでついて来ると良い」


 そう暗闇のなかにため息を隠し、告げれば。ローズは「……よろしくお願いいたします」と、初対面での『何を言っても噛みついてきた』彼女にしては珍しいほどの殊勝な態度でそう返し。儂としては、「そこまで今回のレベル上げ作業に思うことが?」と首を傾げたくもなるが、


「――さて。先導役の儂が『掃除』するのは当然として……とりあえず、何のレベル上げをしながら進もうかのぅ?」


 なんとなく、ここで何もかもを問い質すべきではないように思えて思考を自身のこれからに戻し。ざっと『職歴』を確認。


 今居るダンジョンは『レベル10開始』のもので、儂の素体レベルは15。


 そして、『職歴』に登録してある〈職〉は、それぞれ〈戦士Lv.23〉、〈運び屋Lv.25〉、〈学者Lv.9〉、〈鍛冶師Lv.10〉、〈漁師Lv.9〉、〈商人Lv.10〉、〈探索者Lv.9〉、〈治療師Lv.10〉、〈狩人Lv.14〉、〈薬師Lv.2〉、〈神官Lv.5〉、〈斥候Lv.5〉で。称号【闇の精霊に好かれし者】の効果で身体能力ステータスが強化されるゆえ、それこそ転職したてのレベル0であろうとも問題なく進めていけるじゃろうが……さて、何を『職種』として、どの【スキル】のレベル上げを優先したものか。


 とりあえず【強化:筋力】と、場所的に【暗視】は完全固定として。【聞き耳】のレベルが上限近い28だったので、これも常時セット、と。これに、【慧眼】があるゆえ不要な【看破】を優先的にレベル上げして、なるべく早く『固有技能スペリオル化』で【スキル】の空きを増やしたいところじゃが……はてさて。『複合スキル』に関してはレベル上げに時間がかかるゆえ、いつになることやら。


 そういう意味では、何気に宴会で〈学者〉に就いて、目に付く端から【看破】し続けたことで【翻訳】と併せてそれぞれ1レベル上げられたのは良かったのぅ。……もっとも、鉱山街カベイロスで宴会に参加した職人ドワーフ連中の〈職〉やレベルなんかを【看破】で視ることが出来ず。何気に、眼前の飲んだくれどものレベルが最低でも50以上と知って愕然となったが。


 ともあれ、悩む間も惜しいとばかりに『職歴』のなかでも最もレベルの低い、『モンスターとの戦闘によって経験値を加算させていく〈職〉』――〈神官〉と〈斥候〉を交互に上げていくことにして。


 まずは『職種』を〈斥候〉――そう言えば、この〈斥候〉に就いてすぐに美晴ちゃんと競争し始めたから、手に入ったSPのすべてを『敏捷』に振ったのじゃったな――に変更し、『副職』を〈戦士〉に設定。そのうえで、両手にヌンチャクを装備して、回避と攻撃回数でもって敵モンスターを粉砕していく、と。言ってしまえば、美晴ちゃんやダイチくんと同じようなスタイルで戦うのが、これまでの〈斥候〉に就いた際の戦術じゃったが……もうこのまま〈斥候〉は、〈商人〉に代わる敏捷特化型の〈職〉ということで良いか、と。あらためて、そう思えたころには――


[ただいまの行動経験値により【二刀流】を得ました]


 と、そんなインフォメーションが流れ。もはや、『どういったSP振りにするか』を悩み、決めかねている〈神官〉をそのままに、今回のローズとの狩りは〈斥候〉に就いたまま両手にヌンチャク装備での高速戦闘を続けることにして。


 これまでの『戦闘用セット』に、さっそく【二刀流】を加え。ローズが今晩ログインしていられるという『現実世界での1時間』――『ダンジョン内で10時間』という時間いっぱいを使って、どうにか20階からなる『アーテー南の迷宮』の走破、一歩手前まで来れた。


「……なんと言いますか、ミナセさんと嘉穂さんがどうしてイベント開始までに『カルマ』を減らしきれたのかがわかったような気がいたしますわ」


 そう、ボスモンスターが出現するという20階層の手前――19階の階段に最も近いと思われる『広場セーフティゾーン』にて、いったん休憩と『修復』の間を置いていると、ローズ。顔にはっきりと呆れの色を乗せてそう告げるのに対して「……ふむ?」と、首を傾げ。


「いや。そうは言うがの、ローズ。今回の場合は、途中で【二刀流】を取得できたことや、『敏捷』にSPを振り続けた〈斥候〉で居続けたことに加え、おまえさんが『付与魔法』を掛けてくれたことが戦闘時間軽減に大きく寄与していたと思うぞ?」


 それ以前に、嘉穂ちゃんとローズとでは戦闘における『役割』が違い過ぎる、と。『ブーステッド・フレア』という『筋力値が上昇し、アーツの使用時の消費TP減少』の効果でアーツを連打できたうえに、『エンチャント・アクア』という『攻撃力を上げ、「水」の属性を付与する』効果の付与魔法マジックをヌンチャクに掛けてもらったことで称号【水の精霊に好かれし者】の『水属性の攻撃力上昇』効果も併せて殲滅速度が目に見えて上がった、と。


 これに、【二刀流】がやはり強い、と。そう告げれば、この【スキル】を最初に発見して、試験版からずっと愛用しとる先駆者を兄に持つ狐耳令嬢はそこはかとなく嬉しそうな顔をして。……そんな表情を見せたくないと思ってか、顔を逸らして「そ、そそそ、それにしましても、【二刀流】は、てっきり〈戦士〉でのみ取得可能な【スキル】だと思ってましたが」と慌てて話題を逸らしにかかる少女を『視て』、そこはかとなく和む。


 と、それはさておき。「……さて、どうなんじゃろうな?」と、少女の態度には気づかぬふりをしつつ肩をすくめて返し。そもそも、先だって【二刀流】を所持していたダイチくんがβ版の頃から〈戦士〉一本で来ているので、〈戦士〉で取得できる【スキル】なのは間違いなく。そして、儂は基本、戦闘時は『副職』に〈戦士〉を設定していたゆえ、「果たして、〈斥候〉でも【二刀流】を取得可能か」という疑問に対して明確な答えを返せず。


 ……前提として、この手の試験版から発見されていながら使用者の極端に少ない【スキル】は、大概、取得に必要な経験値が大量であったりするゆえ、簡単には検証など出来ようはずもなく。しかしながら、〈斥候〉をメインにしておる美晴ちゃんも、よく槍を両手に戦っていたので、本当に〈斥候〉にて【二刀流】の取得ができるのであれば、あるいは、彼女が証明してくれるやも知れん、と告げ。


 さらには、この【二刀流】を【慧眼】で『視て』判明した『取得条件:同系統武器を両手に持って戦闘を行い、一定値以上の経験値を得る』という内容を教え。ここまで結構な数のモンスターを両手にヌンチャクという装備で屠ってきたことを告げれば、「短槍の二刀流も大概ですが、そこまでヌンチャク2つを振り回しているプレイヤーもミナセさんぐらいでしょうね」と、またも呆れ顔を頂戴し。


 とりあえず、今も二人っきりで暗闇の中『ミニゲーム』でもしているのだろう美晴ちゃんと志保ちゃんにも【二刀流】の取得条件や、効果の『同系統武器を両手に持って戦闘を行う場合、プラスの補正。また、アーツが両手用のものを使えるようになる』という情報をメッセージで報せることにして。たとえば儂の場合、【槌術】のレベル1で使用可能になるアーツの『ヘヴィ・ハンマー』が、【二刀流】取得後は『ツイン・ヘヴィ・ハンマー』という『一定時間、両方の武器が重くなり、攻撃力が上がる』効果のアーツが仕様できるようになった、とローズに語り。


 そのうえで、問題点として『この【二刀流】をセットしているときに使えるアーツは、【二刀流】のレベル以下の取得レベルのアーツまで』ということをあげ。つまり、【槌術】レベル3以上で取得したアーツは、儂の場合、現在の【二刀流Lv.1】の状態じゃと両手用のアーツが発生していない、と教えて。


 ここまで両手にヌンチャクを持って倒してきたモンスターの数と、それを行ってようやく最初のレベル1に上がったことから、やはり相当レベル上げに必要な経験値が多いのじゃろう、と話し。ここまでを聞いて「それはまた、なんとも……」と言って苦笑する狐耳令嬢に儂も苦笑して返して。


 ……まぁ、とにかく。レベルが非常に上げ難いというデメリットこそあれ、セットしておくだけで両手持ちでの攻撃の威力が上がるようになるゆえ、有り難い、と。また、増え続けるアーツに頭を悩ませつつ戦術を組む楽しみが生まれたわけじゃが――如何せん、控えスキルの空きが残り1つとなってしまった現状、少しばかりこの手の『レベル上げに必要な経験値の多いスキル』は、困る。


 なにせ、【スキル】の合計レベルが300を越えた段階で、ちょっと『合計レベル400以上』を狙ってみよう、と。おそらくは、これまでの仕様と同じで『合計レベル400以上達成』で何かが得られるのではないか、と。これから先、『上位ランクアップ化』や『固有技能スペリオル化』などで合計レベルを下げてしまうまえに、その辺を検証してみようか、と思い。そのために、称号【闇の精霊に好かれし者】の取得を狙って暗闇で籠っている間にいろいろと考えていたのじゃが……正直、【二刀流】を取得してしまった段階で幾つかの計画プランが消えてしまったからのぅ。


「……ふむ。まぁ、なんにせよ、じゃ」


 ちらり、現在時刻を確認し。そろそろローズがログアウトせねばならん時刻も近くなっているようじゃし、最後は本気で行こうかの、と。≪ステータス≫を操作して〈戦士〉へと転職ジョブチェンジし。久しぶりとも思える装備一式を取り出し、すこし動作の確認をする。


 ……ふむ。現実世界で言えば、まだ1日ほどしか防具を変えていなかったわけじゃが……体感時間が10倍というダンジョンにしばらく籠っておったでな。主観的には1週間以上ぶりに儂の持つ最強武装――『デスティニー作クラブアーマー』と『シールドセット』に『特殊武装:斧槌』――は、そもそも、常に半身を水に浸すことになる『蒼碧の水精遺跡』のなかで、称号【水の精霊に好かれし者】の効果で身体能力ステータスが強化されることを前提に、『筋力』の補正に『2』が加わる〈戦士〉に就いてギリギリ装備できる重量まで『強化』してしまっていたわけで。


 ゆえに、今日まで装備することが容易には出来ず。似たような効果を持つ称号【闇の精霊に好かれし者】を得たことでどうにか再び装備できるようになったわけじゃが……すこし、軽い、か?


 まぁ、『水精遺跡あちら』に籠っていたときに比べ、時間経過で【強化:筋力】のレベルが上がっておるでな。これからを思えば、どこかの段階で、また装備一式の『強化』をせんといかんのじゃろうが――


「さぁ、行こうかローズ」


「はい。頑張りましょう、ミナセさん」


 かくして、儂らのイベント初日最終戦である『アーテー南の迷宮』のボス戦は、レベル30のボスモンスターほか数体のスケルトンたちを相手に、ローズの支援を受けた儂が、終始『ヘイトアピール』の効果で敵意ヘイトを集め続けながら暴れ回り。称号の効果にレベル差が大きかったこともあって割とあっさりと済んでしまうのであった。



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