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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト59 おじーちゃん、初イベント『常夜の街の堕ちた太陽を撃破せよ!!』に参戦す

 運営の告知に曰く。現実世界で3日というイベント期間中は、パーティ内に一人でも『新規のプレイヤー』が居た場合、パーティメンバー全員が『レベル差6以上から取得経験値が減少される』仕様が適応されなくなるらしく。加えて、舞台となる廃都アーテーにあるダンジョンすべてが『中に入れば体感時間が現実世界の10倍になる』仕様のようで。


 今回はこれらの仕様を有効活用し、未だ称号【七色の輝きを宿す者】を取得していない者には、称号の取得を。そのうえで、可能な限りのレベル上げとイベント期間限定の専用クエストの達成を目標に頑張ろう、と。そう声をかけて激励するリーダーの言葉に頷き、さっそく転移魔方陣広場へ行ってアーテーに転移――しようとして、転移先が『アーテー東の迷宮まえ』や『アーテー南の迷宮まえ』など4種類もあったことにあらためて驚き。


 ともかく、まずはもっとも難易度の低いダンジョン――最初の階層に出現するモンスターのレベルが1の、『アーテー東の迷宮』――に、初めてAFOをプレイすることになるイチへの説明がてら皆で挑むことになり。


 果たして、辿り着いたさきは、本当に『そびえ立つ塔型の遺跡』――ダンジョンの転移結晶でいりぐちのまえ。そこに転移魔方陣広場を思わせる空いた平地と、ある種見慣れた魔方陣が地面にあり。どうやらダンジョンから出てすぐに別の街に転移いどうしたり、ログアウトしたりできるようだった。


「これは……なんと言いますか、是非ともエーオースも同じ仕様になって欲しいと思ってしまいますわね」


 そう苦笑して零すローズに、子猫と白鬼娘以外の皆が「たしかに」と頷き。ダンジョン攻略が主目的というクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』のメンバーとしては、転移魔方陣広場からほとんど直接ダンジョンに行ける今回の仕様は有り難く思えるのじゃろう――が、志保ちゃんに曰く、これはイベント期間限定の仕様で。おそらく、イベント終了後は他の街同様、中央に転移魔方陣広場が置かれ、エーオースとそう大差ない状態になるだろう、とのこと。


 ゆえに、残念に思われもするが……まぁ、それならそれで、と。そんな空気になってしまうのは、触れるだけで移動できる転移結晶まえでありながら、『塔』の周りに幾つかある転移結晶いりぐちに対して参加人数が多すぎるのじゃろう。初のイベントで、開始間もないということもあってか、たくさんのプレイヤーが居て混雑しており、並ばねばダンジョンに入れない状況ゆえか。


 加えて、


「あれ? うわ、君たち可愛いね」


「お、お、おお! なにこの子たち、クォリティたけぇ……!!


「ねー、ねー。君たちも今日からの新規組~? 良かったらお兄さんたちがいろいろと教えてあげようか~?」


 と、こうして何度目ともなるナンパ男たちに絡まれ。ローズと二人で牽制しながら志保ちゃんと美晴ちゃんが『ブラックリスト』に名前を登録していく作業を強いられるのが、なんとも……。


 見たところ『見習い服』や冒険者ギルドで買える100G防具を纏っとる連中が多く居るようで。ここが『アーテー』で最も難易度が低いダンジョンだからか、新規プレイヤーが他のところより多いようで。それに比例してナンパ男が増えているようなのが、じつに面倒くさいのぅ。


 ……もっとも、


「あ、『ブラックリスト』は≪メニュー≫を開いたあとで――」


「ちなみにAFOの『ブラリ』の仕様は――」


 それらナンパ男を半ば無視して嘉穂ちゃんとイチに『ブラックリスト』のことを教えておるのは、さすがと言うか何と言うか。


「この際ですからわたくしたちそれぞれが『ブラリ』した名前も登録しあいましょうか?」


 そして、そんな風に声を掛けてきた連中を事も無げに『拒絶ブラリ』し続けることで転移してすぐの頃より随分と閑散とし始めた周囲を見回して苦笑し。儂もまた、視界端に流れた[〇〇さんの写真撮影を拒否しました]というインフォメーションを見やり、『ブラックリスト』の登録談話に混ざることに。


「――と、すみません。先に1つ、質問をよろしいでしょうか?」


 果たして、そう断りを入れたうえで小さく片手を上げて質問を口にするイチ。


「あの……先ほど皆さんと『パーティ』、ですか? それの申請に『YES』と返答しましてから、視界に皆さんの情報が表示されるようになりまして……」


 正直、邪魔なので消したいのですが、と。そう告げるイチに「あ、わたしも!」と手を上げて追従する嘉穂ちゃん。


 そんな二人の言葉で、そう言えば初期設定のままじゃと『パーティ』を組んだ際、パーティメンバー全員の名前やレベルに職種、HPやMPにTPの横棒バーが視界隅にそれぞれ表示されるんじゃったか、と。その仕様を今、思い出したのは儂だけではないようで、さっそく美晴ちゃんと志保ちゃんの二人が『設定』の項でいろいろと表示される情報を弄れることを説明し始める。


「ふむ。儂などはパーティメンバーの名前だけは表示するようにしておるが……」


「はい、わたくしもです」


 以前にこの仕様の変更を教わった『主人公と愉快な仲間たち』の五人の場合、戦闘中などは味方の残存HPだけは表示しておいた方が良い、とか。『回復役ヒーラー』やパーティ全体を見回して指示する立場の人間の場合はMPやTPなども見れる方が良い、などと言っておったが……名前だけの表示でもクリック一つで全表示とできるのじゃから、儂は基本、『名前だけ派』じゃな。


「――それにしましても、この『ダンジョン内では体感時間10倍』という仕様は助かりますね」


 じつのところ、今日のところは顔見せだけで、現実世界の30分ほどでログアウトするつもりでしたが……、と。ダンジョンへの入り口である転移結晶に触れ、真っ暗闇の迷宮内へと突入しながら零すイチに「まったくですわ」と頷くローズ。


「実際、わたくしたち小学生組も明日の学校のこともあり、今日はあまりログインしていられないと話していたのですが……この体感時間10倍の仕様ですと予定通り1時解散でも普段より多くレベル上げなどができそうですね」


「あとあと、わたしも1回だけなら一緒にダンジョン行けそうだしね!」


「それに! 今回は『二つ名』なんて報酬が貰えるんでしょ? 燃えるよー!」


 そう追随する嘉穂ちゃんに頷き、美晴ちゃんの言葉には「そうか?」と内心で首を傾げる儂。


 それと言うのも、運営の告知に曰く、以下のようなイベント期間限定の『課題チュートリアル』が出題されており。その内容というのが――



〇 イベント期間限定:チュートリアルシリーズ


・チュートリアル1:期間中に1度、『アーテー』に行ってみよう!

・チュートリアル2:いずれかの迷宮を1人で走破せよ!

・チュートリアル3:いずれかの迷宮を制限時間内に走破せよ!

・チュートリアル4:アーテーの東にある迷宮を走破せよ!

・チュートリアル5:アーテーの西にある迷宮を走破せよ!

・チュートリアル6:アーテーの南にある迷宮を走破せよ!

・チュートリアル7:アーテーの北にある迷宮を走破せよ!

・チュートリアル8:イベントボスを討伐せよ!



 とりあえず、最後の『イベントボス討伐』は、今は無視するとして。『○○の迷宮ダンジョン走破クリアせよ!』などのクエストは、それぞれの難易度によって達成報酬である賞金が1000G、5000G、10000G、50000Gとあるのじゃが……どうにも、それぞれの迷宮ダンジョンには『制限時間』が設定されているようで。この時間内に走破したり、いずれかの迷宮を単独走破することで特別報酬――今回のイベントから実装された新要素である『二つ名』が取得できる、らしい。


 そして、この『二つ名』についてじゃが……AFOの公式ホームページに曰く、これを取得し、≪ステータス≫から設定することで『運営が用意した二つ名』をプレイヤーの名前のに表示できるようになるのだそうで。


 それぞれ、『チュートリアル2:いずれかの迷宮を1人で走破せよ!』を達成することで『二つ名:孤高の』が。『チュートリアル3:いずれかの迷宮を制限時間内に走破せよ!』の達成で『二つ名:俊足の』というのが手に入るようで。これらは先述の通り、取得後には≪ステータス≫でキャラクターの名前の前に設定できるという。


 ……つまり、たとえば儂が達成報酬である『二つ名:俊足の』を手に入れたあとで、≪ステータス≫でそれを設定すれば、儂の場合は『俊足のミナセ』といった『二つ名』付きの名前がそれ以降は表示されるようになるそうで。正直、愛称なども含めてその手の綽名のようなものに興味の薄い儂などは大して嬉しい仕様とも思えないのじゃが……ゲーマー組に曰く、この手のイベント期間限定の報酬は、ただそれだけで一種のブランド品のような扱いで。可能な限りすべての取得を目指し、誰よりも早く、誰よりも難易度の高い『二つ名』を取得して設定するのは全プレイヤーの目標であり、『攻略組トッププレイヤー』の義務、なんだとか。


 ゆえに、儂以外の四人もまた、俄然、やる気を漲らせておるわけじゃが……いやはや、まさか嘉穂ちゃんまで『二つ名』を欲するとはのぅ。


 この『二つ名』の仕様を聞き、瞳を輝かせて「か、カッコいい!」と子猫は言っておったが……それは果たして、暗い場所やお化けの類を普通以上に怖がるこの子が無理をしてまで欲する報酬じゃろうか?


「あ、イチちゃんもダンジョンの中じゃ目を開けといた方が良いよ?」


 視えているんだとしても【暗視】の取得とレベル上げのために、と。そう助言するワン子にあからさまに嫌そうな顔をする白鬼娘。……まぁ、イチは自身の瞳を見られることと言うか、目線を他人に読まれることを嫌っておるからな。


「……べつに、視えるのですから良いのでは?」


「いやいやいや。それを言うなら、おじーちゃんだって【暗視】要らないはずなのに取得してるし。この中の誰よりレベル上げしてるのも『おかしい』ってことになるよ?」


 お。そこで儂を出汁にして【暗視】の取得を勧めるとは……うまいな、美晴ちゃん。


 加えて、「AFOの仕様上、暗所では【暗視】の有る無しでダメージが変わるようなので、視えているかどうかは大して関係ないんです」と志保ちゃんが追従することで、イチも渋々、彼女らの言う通りに前髪のカーテンの奥で、先に言うとった緋色の瞳を晒すことにしたらしい。


「ふむ。ちなみに、『見習いランタン』はどうする?」


 ――イベントの舞台となる『アーテー』のダンジョンは、ほかのダンジョンとは違ってまったく光源の無い真っ暗闇で。とてもではないが、【暗視】無しでは視覚情報によって物を判別することはできない。


 ゆえに、イベント期間限定の『チュートリアル』のなかの1つ。『期間中に1度、「アーテー」に行ってみよう!』の達成報酬として『TPかMPを注ぐことで一定時間火を灯すランタン』が貰えるようになっており。【暗視】を持たないプレイヤーや、敢えて【暗視】をセットしないことで『スキル設定』の枠を空けたいプレイヤーなどは、この『見習いランタン』を用いて攻略に勤しむと言うが、


「もちろん、使わないよ!」


「ですね。その方が【暗視】のレベル上げが捗りそうですし」


 と、誰一人、『見習いランタン』を使おうとしないのは、さすがはゲーマーか。


 ……もっとも、


「あぅあぅ……。お、奥から、モンスターが3匹、来てるよ?」


 そう誰よりも高い【聞き耳】と【察知】を有する子猫は、ダンジョンに入るや硬く目を閉じて志保ちゃんにしがみつき、完全に足手まとい状態となっているが……これはもう仕方ない、か。


 ここでなら【暗視】のレベル上げが捗ろうと、わざわざイチにも瞼を開けて視覚情報を取り入れるよう言ったが……さすがに怯え、竦む子猫にまでそれを強要できんし。


 なにより、真っ暗闇のなかを『がしゃ、がしゃ』という乾いた音を立てて近寄ってくる人骨の群れは、そのデザインが真に迫っているからこそ下手なホラー映画以上に『おどろおどろしい』からの。怖がりの少女には最後まで目を閉じたままでも良いように思えるが――


「――と、来たぞ!」


 とりあえず、『練習用武器:盾』を久しぶりに取り出して片手に持ち。【強化:筋力】、【暗視】、【盾術】、【看破】、【忍び足】、【潜伏】をセットして前進。皆の前に立ち、『ヘイトアピール』――『自身に敵意を集める』効果を持つ【盾術】のアーツを使用。後衛へと連中が抜けることの無いよう儂が動き。


 それとほとんど同時に、桃色の長髪をなびかせ、風のように駆け出していく美晴ちゃん。


 そして、


「おじーちゃんが1体、わたしで1体抑えてるから、イチちゃんが全部斬っちゃって」


 錆びた剣や斧を振り下ろす人骨――『スケルトン』を儂が盾で。美晴ちゃんが短槍二本で抑えている間に、志保ちゃんからインベントリ内のアイテムを取り出す方法を教わった白髪の鬼人少女が『練習用武器:剣』を装備して軽く振り。おおよその剣筋を把握したうえで、


「水無瀬家の当主が一人娘。水無瀬 はじめ――改め、『座頭一ざとういち』」


 参ります、と。その宣言と同時に撥ねるように駆け出すイチ。……これが屋内などの地面が整った場所で、素足や足袋を履いた状態であれば、また違った移動法をとっていたのじゃろうが、ダンジョンの中は足場が悪いでな。それゆえの、スキップのようにも見える歩法を選択したのじゃろうが、


「うわ、速っ!?」


「え、『鬼人きじん』て敏捷値の裏ステが高い……?」


 そう美晴ちゃん、志保ちゃんが目を丸くするほどには素早く動けているのは、さすがは現役のVR競技選手か。儂が教えた基礎をしっかりとものにしたうえで、今日まで頑張ってきたのじゃろうことが窺える、一見して無駄の少ない動作のように映る立ち振る舞いではあるが――


「ふむ。さすがに、人骨相手の稽古はしておらんじゃろうからの」


 さもあらん、と。慣れない武装と初めての人間でない相手とあって、極わずかにじゃが剣筋に迷いが視える。……と言うより、効率的に『人間を殺す』ための剣筋だろう、自然に首筋や心臓の辺りに刃を立てようとしているようじゃが、骸骨スケルトン相手にそれをやってものぅ。


 骸骨どもに血脈は無く。急所になりえる臓器も無い。


 ゆえに、わずかに戸惑いのような筋肉の緊張が『視え』、一見して無駄のない一刀のような剣筋であるからこそ、余計に、儂などの他人ひとよりほんの少しだけ目の良い者からすると少女の『粗』が目立って視えた。


「っ。も、申し訳ありません、師父しふ様」


 と、そんな儂の心情を察してか、出現したスケルトン3体を斬り捨てるや、即座に儂へ向かって土下座の姿勢になろうとするイチ。おそらくは、自分でも先の戦闘での剣筋に納得がいっていないからじゃろうが、「……それはやめよ」と。どんな理由であれ、こうして一々跪かれては美晴ちゃんたちと楽しくAFOをすることができん、として制止する。


「くっ……! まさか、久方ぶりにお逢いできた師父しふ様にお見せする最初の剣が、あのような無様なものになろうとは……!!」


「あー……うん。ほら、イチちゃん。慣れない相手に武器だってことで納得できない動きになっちゃったって言うんなら、ここは練習――もとい、スケルトン狩りを頑張れば良いんじゃないかな?」


 って言うか、イチちゃん。そろそろ『師父しふ様』呼びをやめようよ、と。そう従姉妹に提言する美晴ちゃんが、今日はいつになく頼もしく視えるのぅ。


 ――などと思っていられたのも、割と短い時間だけで。


「なんにせよ、おおよその説明をする間がこうして取れたのはありがたいですね」


 そう零す、ここまでAFOに関する説明のほとんどをこなした志保ちゃんに「お疲れさん」と労いの言葉をかけ。ダンジョンに突入してからこっち、そのときのノリと思い付くままに説明しようとするせいで、終始、わかり難い解説をしていた美晴ちゃんを、チラリ。


 ……本来はイチへの説明は彼女が買って出たんじゃがのぅ。志保ちゃんには間に立って補足説明をしてもらう形で、ほとんど美晴ちゃんの通訳のごとき立ち位置で解説させてしまった。


「それにしても。さすがは『盲目の一刀斎』、といった感じでしょうか」


 真っ暗闇にあっても剣の冴えに曇りは無いようで素晴らしいですね、と。そう感嘆の声をあげるローズに、「いえいえ。私などはまだまだ」と静かな声で返すイチ。これまでに迫ってきた骸骨スケルトンすべてを『練習用武器:剣』の一振りで片付けながら、謙遜するでもなく本心で言っている辺り、なんだかのぅ。


 なお、ほかのダンジョン同様、アーテーのダンジョンも2階以降から『トラップ』が設置される仕様のようで。【罠】持ちの儂やローズに志保ちゃんなどは当然として、イチもしっかりと『違和感トラップ』を感知できていた。


 ゆえに、次回辺りイチには〈狩人〉に就いてもらって【聞き耳】や【察知】に【忍び足】などに【罠】といったダンジョン探索に役立つ各種【スキル】の取得を目指してもらおうか、と。……しかし、そうした各種【スキル】のレベル上げをするのに、最初期の『スキル設定』枠が3つというのは、やはり少な過ぎるなぁ、と思ったりもして。


 これは、称号【七色の輝きを宿す者】の取得が済み次第、全員のレベルを早急に引き上げる必要がありそうじゃな、と思案。


 実際、儂にしてもここまで真っ暗な場所での【暗視】のレベル上げが初めてであり。夜でも月や星の明りのある街の周辺や薄暗いながらも光源のあるエーオースのダンジョンに潜っているとき以上に【暗視】のレベル上げが捗りそうじゃとして皆が【暗視】をセットし続けることに賛成はしたが……少ない『スキル設定』枠の1つがそれで埋まってしまうというのは、あまりにも勿体ない。


 どうせ、ダンジョンに何度も挑むことになるのなら、【罠】や【察知】などの索敵系の【スキル】は当然として、【忍び足】や【潜伏】なども同時にレベル上げしたいじゃろうし。志保ちゃんは【属性魔法:水】を得られたというのに、2種類の【属性魔法】と【付与魔法】に【感知】などを一緒にセットできない状態なわけで。合計レベルを稼いで達成報酬を得るためにも、なるべく早く種族レベルと〈職〉のそれぞれで10レベル以上を目指すべきじゃろう。


 そして、そのためにも――


「――と、あれが『開始レベル1』のダンジョンボス?」


 まずは、ここ、『アーテー東の迷宮』の走破を目指すとして。


 エーオースの『レベル1開始ダンジョン』と同じく5階が最終階だったのじゃろう。初めて見る重厚な造りの扉――ボスモンスターが出現する、いわゆる『ボスフィールド』と外とを隔てるそれを押し開いた先に現れた骸骨の団体と、1体だけ他に比べて装備の良い骸骨のモンスターを見て、呑気に首を傾げる美晴ちゃん。


 それに、儂は「『スケルトン・ウォリアー』のレベル5と『スケルトン』のレベル5が6体、じゃな」と。これまでと同様、新しいモンスターが現れる度、〈学者〉に『転職ジョブチェンジ』して【看破】をセット。対象の頭上に浮かぶ三角錐シンボルをクリックして調べた結果を告げれば、「ふーん」と大して興味の無さそうな返事が。


 そして、


「たしか、イチちゃんは目標の【剣術】は取れたんでしょ? じゃあもう説明も終わったし、とっととアレは片付けて終わらせよっか」


 嘉穂ちゃん、ゴー! と、そんな犬耳少女の掛け声に応えるように、これまで妹の腕にすがり、まったく戦闘に干渉してこなかった猫耳幼女が動き。『ポーチ』から取り出した、比較的『軽い方の』トライデントを振りかぶり、投擲。


 と、同時に『エンチャント・フレア』と『ブーステッド・ウィンド』というローズと志保ちゃんによる付与魔法が儂らに飛んで来て。上昇した敏捷値で素早く接近し、炎の揺らめきを宿す武器を振るって殲滅、と。何気に最後だけはメンバー全員が参戦したようで。


 こうして、初めてのダンジョン制覇である、ローズ以外の五人にしても、感慨など抱く間も無く。皆が、そろそろ限界だろう子猫のことを慮って、ボス討伐と同時に出現した転移結晶でぐちに触れ、さっさとダンジョンをあとにするのであった。


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