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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト57 おじーちゃん、AFOにて二人目の『孫娘』と再会す

 高レベルNPC冒険者パーティ『山間の強き斧』。


 彼らとは儂がAFOを開始して間もなく受けることになった依頼にて行動を供にした仲であり。右も左もわからなかった折にいろいろと教えてもらった、言うなれば儂にとって最初にできた冒険者の師匠のような存在じゃった。


「久しぶり、っつーか……ミナセたち、なんかスゲー格好してんな?」


「うわぁ……! え、なに? それって、プレイヤーの中じゃ普通なの?」


 そう遺失言語にて話しかけ、近寄ってくる四人の男たちに内心で苦笑し。……まぁ、さすがに『セーラー服』や『メイド服』は一見して防具に見えんじゃろうし、奇異な視線を受けるか、と。そう納得しつつ、『スキル設定』に【翻訳】を加えて、ここ、冒険者ギルドの裏庭に出るや繋いでいた『パーティチャット』から抜けることにする。


 そして、


「ふえ? ……誰?」


「……ミナセさんのお知り合いの方たちですか?」


 唐突な遺失言語での声がけと、見知らぬ冒険者NPCの接近に、にわかに緊張を高めていく『幼精倶楽部』に「ああ、大丈夫じゃ」と告げて。そっと立ち上がり、彼ら『山間の強き斧』の四人のもとへと歩み寄って、


「ふむ。久しぶりじゃの、サモツ。キマリ。エイギル。アットマー。そして、紹介しよう。この四人が儂の所属するクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』の仲間であり、儂の固定パーティ『幼精倶楽部フェアリーサークル』のリーダーのローズ、みはるん、スィフォン、カホじゃ」


 と、ここまでは【翻訳】ありの『遺失言語』を使った『山間の強き斧』への紹介で。次に『幼精倶楽部』の四人へと向き直り、今度は『共通言語』にて『山間の強き斧』を紹介、と。【翻訳】をセットしている現状、儂の言葉は双方ともに自身の良く知る言語として翻訳されて聞こえるはずじゃから、本来であれば言語を使い分ける必要はないんじゃが……そこはそれ、礼儀というもので。


 言語が統一されて久しい昨今、今どきの若い者にはこの手の礼節は忘れられてしまっているじゃろうが……ともあれ、紹介された少女たちも『パーティチャット』をやめたようで。


「はじめまして。ご紹介にあずかりました、クラン『薔薇園の守護騎士』所属、『幼精倶楽部』のパーティリーダーを勤めさせていただいております『ローズ』です」


 おそらくは『幼精倶楽部』で唯一、儂以外で【交渉術】というNPCの使う『遺失言語』を解し、言葉おもいを伝えることができるローズが代表として一歩まえへと出て、上品な礼でもって挨拶。


 その、幼くも気品溢れる上品な立ち振る舞いに目を丸くする『山間の強き斧』の面々に「……すまんが、ほかの者は【交渉術】も【翻訳】も無くてな」と『遺失言語』で彼らに謝って、すこし『幼精倶楽部』のメンバーから離れて会話を続けようと促す。


「あー……、そうか。ミナセは普通に俺らと同じ言葉話せるし、ギルドに紹介してもらうプレイヤーも全員【交渉術】持ってたから忘れてたわ」


「それな。プレイヤーが俺たちと使う言語が違うっての、すっかり忘れてたわ」


 果たして、旧交を温めるようにして談笑し始めた際の最初の言葉で、なるほど、すっかり『荷物持ち』の依頼が状態化したか、と瞳を細め。儂のときなどは受付嬢の思い付きの突発依頼じゃったが、上手くプレイヤーとNPCで付き合いができているようで良かった、と懐かしくも嬉しい情報に表情を緩ませていると、


「ところで、ミナセはこれから暇だったりは――しねーよなぁ」


「仕方ありませんよ、リーダー。プレイヤーはこれから『イベント』でしばらく使えない、ってギルマスにも言われたじゃないですか」


「あーでも、鉱山街の連中もミナセには会いたがってたから、それだけはいちおう、知らせとく」


 そんな言葉を聞き、途端に申し訳なくなる。……なるほど、物資運搬の依頼は『イベント』中も変わらず――というか、おそらくは今日、これからアイギパン東の鉱山街まで『お使いクエ』があるのだろう彼らに眉根を寄せ、「すまない。できれば手伝いたいところではあるが……」といったん頭を下げて。


 それから、彼らにもらった『手斧』のおかげで何度も命を救われた礼をし。アットマーに勧めてもらった〈運び屋〉と【収納術】が如何に役立っているのかの礼も言って、すこしの間、近況報告と談笑を交わしたあとで彼らとは別れた。


 そして、


「……ふむ。なんじゃ、待っておらんでも良かったのに」


 振り返るまでもなく範囲知覚によって『視て』いたから知っていたが、礼儀として待っていたらしい『幼精倶楽部』の四人にそう苦笑し、ありがとう、と礼を言って合流すれば、


「あ、あのね、ミナセちゃん!」


 おずおずと。それでいて決意を秘めた視線をまっすぐに向けて嘉穂ちゃんが口を開き、




「わたし――イベントには参加しないことにする!」




 果たして、そんな、あまりにも予想外な発言に、儂はらしくないほど驚き、目を剥いた。


「あの『山間の強き斧』って人たち、ミナセちゃんがお世話になった人たちなんでしょ? ……志保ちゃんに教えてもらったの。あの人たちがくれた武器で助けてもらった、って。そんな人たちが困ってて、ミナセちゃんが申し訳なく思ってるんなら――わたしがお手伝い、やるよ!」


 聞けば、じつは今回のイベント――というか、イベントの舞台となる『常夜の廃都市、アーテー』と、そこに登場する死霊系モンスターが、嘉穂ちゃんは内心では嫌で嫌で仕方なかったようで。


 それでも皆と一緒に参加したい、と。がんばって我慢しようと思っていたところで『山間の強き斧』と儂の会話をローズに通訳してもらって聞き、それなら高レベルの【収納術】をもつ自分が、と決心したらしい。


「……今日のイベントのために頑張ってくれたミナセちゃんには『ごめんなさい』だけど。でも、やっぱり真っ暗なとこや『おばけ』みたいなモンスターは……怖いの」


 ふむ。


「いや、そう言ってくれるのは素直にありがたいし、別段責める気も無いが――そのために【翻訳】でも取得する気かの?」


 訊ねたいのはその一点で。儂と嘉穂ちゃんが【スキル】の合計レベル200以上達成で得た『スキル変換チケットC』には、最初期のものや、合計50レベル以上達成時に得た『チケットB』にあった【スキル】は勿論、【翻訳】や【直感】などの『2つの特定の【スキル】を事前に持っていることが取得条件』の『複合スキル』まで取得可能なリストにあった。


 ゆえに、それを使えば【翻訳】を取得できるし会話も問題無く行えるじゃろうが……そんな貴重なアイテムを儂などのために使わせるというのに眉根を寄せ、思わず難色を示してしまう。


 ……なにせ、『スキル変換チケットC』は『カルマ』を減らす作業中は特に欲しいと思えた【スキル】も無く。後日、イベントで、みんなの必要とする【スキル】の取得のためにとっておこう、と話していたからのぅ。それを儂のために、というのはさすがに勿体ないと感じ、『山間の強き斧』には悪いが考えなおさないか、と提案すれば、


「わたしは、ミナセちゃんのために使いたいの!」


 嘉穂ちゃんは「ミナセちゃんのためだから良いんだよ」と笑って、


「……ミナセちゃん。ミナセちゃんは、あんまり感謝されるの、好きじゃないみたいだから今まであんまり言わなかったけど……わたし、すごく感謝してるの。カホが今、こうしてここに居るのはミナセちゃんのおかげだし、あのときミナセちゃんが志保ちゃんをカホから守ってくれたから仲直りできた。だから、本当はすっごく『ありがとう』って言いたいけど……言ってもミナセちゃん、『大したことはしてない』って受け取ってくれないから」


 だから、今回のことで『ありがとう』を受け取ってほしい、と。そう笑顔で告げる猫耳幼女に「実際、その方が『幼精倶楽部わたくし』たちも助かりますし」と最初に助け船を出すように追従したのは、意外にもローズで。


「アイギパン固有の『この』ギルド依頼は、イベント期間中でもなければ予約が発生するレベルで人気の依頼クエですし。拘束期間と必要とされる【スキル】にプレイヤーの人柄からギルド側が選別して依頼しているとも聞きます。ですから、その依頼クエを嘉穂さんがお受けできるのでしたら、わたくしたち『幼精倶楽部フェアリーサークル』のギルドへの貢献度も他の常設依頼などより随分と高くいただけるかと思われます」


 加えて、彼らは高位のNPC冒険者だそうで。そんな彼らとの繋がりは、太ければ太いほど『幼精倶楽部』にとって助かる、と。まるで自身がリーダーを務める固定パーティの利益『だけ』を見て意見しているかのように告げる深紅の狐耳少女に苦笑を返し、


「まぁ、たしかに。儂も彼らに冒険者としての『いろは』を教わったでな。そのほかにも大変世話になったのもたしかじゃし……嘉穂ちゃんさえ良ければお願いできるか?」


「うん! まかせて!」


 果たして、そんな話し合いのあとで、さっそく嘉穂ちゃんは『スキル変換チケットC』によって【翻訳】を取得。セットして、冒険者ギルド内でまだミーティングを続けていた『山間の強き斧』のところに儂の手を引っ張るようにして駆けていく。


 そんな『儂の役に立てるのが嬉しい』と全身で示す彼女の姿に、内心でほっこりしつつ、彼らに嘉穂ちゃんをあらためて紹介。現在はインベントリ内のほとんどが装備でいっぱいじゃが、ギルドの『預かりシステム』を利用すればすぐに準備が整う旨を告げ。


 それなら、これから今回運ぶつもりだった物資を確認する、と。だから、AFO内時間で午後1時を目安に、また冒険者ギルドの裏庭で待ち合わせよう、という話でまとまり。さっそく四人の男性NPCと一人の少女はギルド受付のところに向かって行った。


 そして、


「あー……。こうして嘉穂ちゃんが次の『乙姫ちゃん』になるんですね、わかります」


「ミナセさんとは違った意味で天然の、お姉ちゃんのスキル【年上殺し】は異常だからね。仕方ないね」


 果たして、そんな少女たちの戯言はさておき。ついに正規版AFO初のイベント開始となる、現実世界で午前0時にしてAFO内時間で正午を示す鐘の音が、森林に囲まれた街アイギパン全域に響き渡り。


 そして、




[これより公式イベント『常夜の街の堕ちた太陽を撃破せよ!!』が開始されます]




 という、視界隅を横切るインフォメーションと、≪メッセージ≫の着信を知らせるインフォメーション。


 それに対して一斉に≪メニュー≫を開いて確認しているのだろうプレイヤーの姿を範囲知覚で『視ながら』、とてとて歩いて来る笑顔の子猫と、真剣な表情で歩きながら虚空に指をやって操作しているふうの紅の狐耳令嬢を待ち。合流して、三人でまた冒険者ギルドの裏庭へと行く。


 そして、


「……なるほど。どうやら、今回のイベントは『ポイント制』のようですね」


 かくして、優秀なる参謀殿を中心にして儂ら『幼精倶楽部フェアリーサークル』のイベントに対する作戦会議が始まった。


「……『ポイント制』?」


「うん、お姉ちゃんもまずは運営からのメッセを見てね?」


「要するに、イベント期間中にどれだけモンスターを狩れるか。モンスターを討伐するごとに貰えるっていう『イベントポイント』――『EP』をどれだけ多く稼げるかを競うイベントってことだね!」


 ――運営からの告知に曰く。


 今回のイベント『常夜の街の堕ちた太陽を撃破せよ!!』の開催期間は、本日――正規版AFOの稼働8日目の午前0時から稼働11日目0時までの3日間で。その舞台である『アーテー』という名の街は、試験版AFOの舞台でもあった、基本的に『夜』しかない街なのだそうで。AFO内の時間が何時になろうとも関係無く常に『夜』なんだとか。


 そして、この『アーテー』にはイベント開始時刻から各街の転移魔方陣広場から転移いどうできるようになる――というわけではなく。どうやら、『アーテー』にあるという4つの迷宮ダンジョンのまえに転移できるようになるのだそうで。それぞれ『アーテー東の迷宮まえ』、『アーテー南の迷宮まえ』というような名称で東西南北の4つの転移先が選べるようになる、と。


 これら迷宮に出現するモンスターに加えて、どうやら『アーテー』では街なかでもモンスターが出現するのだそうで。それらを討伐することで、その強さに応じたポイント――『EP』が手に入り。この『EP』の多さを競うのが今回のイベントの趣旨のようじゃが……まぁ、儂ら『幼精倶楽部フェアリーサークル』は上位を本気で目指すわけでもなし。楽しめればそれで良い、ということで。


「あ……。公式ホームページのイベントPVが更新されてる」


「え、ホントに!? っと、どれどれ~……?」


「……ぅえ~。な、なにこれ、こわい」


「なんと言いますか、方向性が『これ、なんてホラゲ?』といった感じの作りですわね……」


 ――なお、今回のイベントの開始と同時に、AFOのバージョンアップがされたのだそうで。なにやらいろいろと追加されたようなのじゃが、その一つに、『動作補助システム』というものがあり。≪メニュー≫の『設定』から、それの『ON』、『OFF』を選択できるようになったのだそうじゃが……おそらく、儂がそれを『ON』にすることは無いじゃろう。


 なにせ、その『動作補助システム』とやらは、説明文を読むに『魔法マジック』の『呪文スペル』や〈吟遊詩人〉が取得できるという【呪歌】をセットすることで行使できる『MPを消費し、遺失言語で綴られた歌を歌うことで効果を発揮する魔法』――『呪歌』を、『ただ、それを唱えよう』と思ったり、『歌おう』と強く思うだけで半ば自動的にアバターを動かされ、それぞれの『呪文スペル』や『呪歌うた』を口にできるというシステムのようで……。


 あとは【盾術】をセットすれば、半自動的にガードできたり。【剣術】や【斧術】などを設定しておけば、ある程度、戦闘時の動作を『最適化』してくれたり。【弓術】や【投擲術】をセットしておけば、勝手に狙いを補正して当てやすくしてくれるらしいが……この手の『アバターの動作の最適化』に関して、そのシステムの基礎を組むことを仕事にしていた儂が、わざわざ頼るわけもなく。必要があるとも思えない。


 と、それはさておき。今回のバージョンアップや公式イベントに合わせて、運営はどうやら新規プレイヤーの獲得を狙っているようで。イベント期間中、『総合レベル10以下のプレイヤー』や『新規プレイヤーをパーティに加える』と『レベル差6以上から取得経験値が減少する』仕様が無くなるようになったり。『キャラクタークリエイト』で選択可能な『種族』にも修正が入り、より多くの『種族』の中から『自分の好みに合わせたもの』を選べるようになったと言う。


 そして、


 それら『新規プレイヤー』を歓迎するシステムの実装を待って、


「――あ、来た!」


 彼女は――儂の孫娘の一人にして、美晴ちゃんの従姉妹である少女、『水無瀬みなせ はじめ』は、AFOを開始した。


「お~い! はじめちゃん、こっち、こっち~!」


 果たして、儂らがたむろしていたアイギパン冒険者ギルドの裏庭に、彼女は現れた。


 歳は、美晴ちゃんたち12歳組より1つ上の13歳で。今年、中学一年生になったというが……この年頃の成長には個人差もあり、一見して志保ちゃんやローズたちと年齢差を感じさせない、幼くも整った容貌の少女で。


 その顔の上半分を覆い隠す前髪と、肩に届くかどうかの長さに切り揃えられた髪は、遠目にも映える見事な白色――だったと思うが、どうやらAFOではわずかに色を変えているのか、以前に『視た』ときとは少し色合いが違い。それでも、傍目には『ほとんど白髪』という髪色のままなのは、どういった拘りがあるのか……。


 ともあれ。ほかに特徴的な点と言うか、現実の少女には無い部位・・――額の両側に、大人の親指のさきほどの小さな三角錐状の瘤が1つずつあり。おそらくは、これが今回のイベントとともにアップデートされ、追加された新種族――『魔人まじん種』の1つ、『鬼人きじん』の特徴たる『角』だろう。


 そして、初期装備である『みすぼらしい格好』――もとい、『見習い服』を纏いながらも凛と佇み、周囲に緊張を強いるような静謐なる気配を自然に纏っているように見えるのは、さすがは真面目一辺倒の水無瀬家現当主の一人娘といったところか。


 ともあれ、


「ふむ。久しいな、はじめ


 元気よく手を振り、呼びかける桃色長髪の少女に呆れ顔になり、近寄ってきた白髪の鬼人少女にそう声をかければ「……ぁ」と彼女は一瞬驚いたような声を小さくあげ。


 それからすぐに、儂のように『周辺から収集しえる電子情報を任意に精査、把握することで一定範囲を疑似的に視れるようになる』技能によって儂の姿を認め、前髪のカーテンの向こうで閉じられたままの瞳を向けて口もとに微笑を刻んで、


「……驚きました。おチビ――もとい、美晴からこちらでの容姿に関しましてお聞きしてはいましたが、さすがに声まではわからず。反応が遅れてしまったこと、まことに申し訳ございません」


 そう馬鹿丁寧な物言いで告げるや、儂のまえに跪いて土下座するはじめ。それに慌てて「人目があるところでやめよ」と声をかけ、立たせれば。たったそれだけのことで今にも腹を切ると言い出しかねない悲痛な表情になって「……重ね重ね、配慮が足らず申し訳ございません」と落ち込みだす孫娘。


 その、相変わらずの堅物っぷりに「……さて、どうしたものか」と、内心で思案するのも一瞬。


「ごっきげんよー、はじめちゃん! 久しぶり、っていうか、けっきょく『種族』は『鬼』にしたんだねぇ」


 そう儂らのもとにいち早く駆け付け、笑顔で話しかけるのは我が『幼精倶楽部フェアリーサークル』きってのムードメーカー、美晴ちゃん。


 そのまま、さっそく『フレンド申請』と『パーティ申請』を送っているのだろう、なにやら操作しているらしい挙動をとりつつ、少女の『鬼人きじん』の特徴である『角』をしげしげと見やるのは、さすがと言うか何と言うか。


 ……ほかにもアップデートによって加わった種族のプレイヤーがチラホラと冒険者ギルドのなかに『視える』ことから、どうやらはじめと同じでイベント開始と同時に新規でAFOをやり始めたプレイヤーが多く現れたようで。ついでに儂もはじめに『フレンド申請』を送りながら、新規のプレイヤーが増えたことで、また『ブラックリスト』を使うようなことにならなければ良いが……などと思案していると、


「あら? ごきげんよう、おチビ。そして、お察しのとおり私の選択した種族は『鬼人きじん』です」


 どうぞ、よしなに。と、そう言って一礼する少女をまえに「『鬼人』の特徴は、物理戦闘特化で力強く、硬い代わりに魔法戦はからっきし。レベルを上げて『魔力』を増やさないとMPがいつまでも0のまま、といったところでしょうか?」と、虚空を眺めながら説明してくれる志保ちゃんに「なるほど」と頷いて返し。要するに、完全に物理戦しかするつもりが無いのじゃろう、と。おおよそ彼女が『鬼人』を選んだ理由を察した。


「うん、うん、これからよろしくー。そして、いつまでも『おチビ』呼びは変えないんだね、この『真っ白お化け』!」


 ……はて? この二人、仲が悪かったのか?


 はじめに関しては、生まれつき弱盲じゃくもう――『自身の手元までしか対象それを判別できないほど視力が低い』というハンデの克服のため、儂がVR内限定でじゃが視覚に頼らず物を『視る』技能を伝授することになり。ほかの孫たちより多くの時間を一緒に過ごしていたが……美晴ちゃんはAFOをする直前まで顔も知らん子じゃったからのぅ。二人の仲がどうかなど、さすがに知りようもない。


「ふふ、残念。じつはAFO用に髪色は少し弄りまして、陽の光を浴びるとほのかに銀色に見えるようにしています。それに、瞳の色も緋色にして『アルビノ』のようにしているんです」


「ああ、それで――って、わかんないよ!? どうせ髪色変えるんなら、わたしみたいに一目で違いがわかるレベルで変えようよ! っていうか、はじめちゃん、いっつも目ー閉じてるから瞳の色とか変えても無意味じゃない!?」


 ……ふむ。仲が悪い、というわけではなく、はじめが美晴ちゃん相手に終始からかうような言動をとっている、のか? それにワン子が噛みついてキャンキャンと吼え、遊んでいる感じ……なのじゃろうか?


 まぁ、なんにせよ。いつまでもここで騒いでおっても仕方ないでな。まずは、これから一緒に行動することになるパーティメンバーを紹介しようか、と。放っておけばいつまでも子犬同士のじゃれあいのごとくキャンキャンと吼え合っていそうな二人の仲裁へと乗り出すのであった。


お待たせしました! ついに、ここまで引っ張りに引っ張ってきたイベント開始&『座頭市ちゃん』登場です!!


……うん、ここまで長かったなぁ(遠い目

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