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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト56 おじーちゃん、ついに『幼精倶楽部』として行動開始?

 見るからに幼く、それでいて皆が皆、目を引く美少女だということで。儂ら五人――これからは『幼精倶楽部フェアリーサークル』と名乗るとして――は、当然じゃが目立っていた。


 それも冒険者ギルドのようなプレイヤーとNPCがそれなりの数、常駐する場所であれば、要らん注目を集めてしまい。ひそひそと内緒話めいた話し声がそこかしこからするようになり。人見知り気味の嘉穂ちゃんなどは早々に周りの雰囲気に怯え、誰かのそばを離れないようになってしまったが――そこは我らが『幼精倶楽部フェアリーサークル』のリーダー、ローズの睥睨によって不用意に近づこうとした連中をことごとく撃退し。それをも無視して声をかけようと寄ってくるプレイヤーが居れば、儂か志保ちゃんが対応。便宜、『ブラックリスト』に登録するといった立ち回りで過ごせば、さすがに注目こそ止めどないが、要らんちょっかいをかけられることは減っていった。


 と、それはさておき。さっそく〈薬師〉に転職した儂、美晴ちゃん、嘉穂ちゃんの三人は冒険者ギルドの裏庭の隅を使って〈薬師〉と【調薬】のレベル上げを開始することにして。あらためて、『すり鉢』と『薬草』を使ったレベル上げと【調薬】についてを説明してくれるローズ。


 曰く、とにかく『薬草』のような【調薬】の【スキル】にも対応した素材アイテムを破壊すれば良い、と。


 そうしていれば、そのうち【調薬】が取得できて。【調薬】をセットしたうえで対応した素材アイテムを破壊すれば『なんらかの薬』が手に入るのだそうじゃが、今回の『薬草』の場合は、特に『指定』――〈薬師〉に就いた状態だと対応する素材アイテムのうえに白い三角錐シンボルが見えるようになり。そのなかには一度でも【鑑定】などで視たことのある『薬品』が、その素材アイテムを使って造れる場合に限って選択肢ウィンドウとして現れるそうで。普通はそのなかから選んだうえで素材アイテムを破壊するが――しなければ、自動的に『HP回復ポーション』が選択されて生み出されるのだと言う。


 ちなみに、今回ローズが皆に買うよう勧めた『すり鉢』じゃが、別段これを使わんでも対応した素材アイテムを〈薬師〉に就いた状態で破壊すれば『なんらかの薬』は出来るし、【調薬】も取得できるのだそうだが――如何せん、この【調薬】に適した道具を抜きに造り出した『薬』はどれも効果が低くなってしまうようで。どうせ【調薬】を取得し、しっかりと造り出した『薬』を使用する気があるのなら『すり鉢』のような安く買える専用アイテムは必須だろう、とのことだったので、儂らは全員、今回『すり鉢』を購入した。


「ちなみに『薬草』からは通常、『HP回復ポーション』だけが造れるのですが、事前に『TP回復ポーション』と『MP回復ポーション』を【鑑定】などの【スキル】で調べていれば、その2つも『指定』できるようになりまして。『TP回復ポーション』を指定した場合、素材アイテムを破壊する際、TPを。『MP回復ポーション』ならMPを消費することで造ることができますわ」


 なお、プレイヤーの器用値と【調薬】のレベルに応じて回復量に違いが出るそうですわ、と。そんな説明を聞きつつ、儂ら〈薬師〉組は『すり鉢』のなかに入れた『薬草』を、『すり鉢』の付属品として一緒に出てきた『すり棒』で磨り潰すようにゴリゴリとやっており。


 果たして、説明を終えたローズはすこし離れた位置で『アクア・ドロップ』の『呪文スペル』を唱えていた志保ちゃんのもとへと行き、同じく【属性魔法:水】の取得を目指すのだそうじゃが……どうやらダイチくんは儂らと組むことになる妹に、儂らが渡した『お土産』をくれてやったようで。これでは『お礼』にならんようにも思えるが……また何かあればクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』のために尽力しよう、と。そう決意し、その旨をさっそくパーティ代表リーダーに告げれば、


「いえ、あの……。じつのところミナセさんと嘉穂さんのお二人が率先して『最前線』の情報を流してくださっているので、お兄様たちはとても感謝しておりましたわ」


「……ミナセさん。それに、お姉ちゃんもだけど……二人の流してくれた≪掲示板≫にも載せられない最新情報を、私たち『幼精倶楽部フェアリーサークル』のメンバーと主人公くんたちがどれだけ握り潰してるか、そろそろ自覚してください、お願いします」


 なにやら逆に申し訳なさそうな様子のローズと恨めし気な雰囲気を纏って告げる志保ちゃん。そんな二人に、「そう言えば、あのダンジョンは『最前線』のものじゃったな」とあらためて思いだし。さらには先ほど転職しようとした際に、また転職可能な〈職〉のリストが増えていたので、そのすべてを【慧眼】で調べつつ『写真スクリーンショット』を撮り。その画像データを可視化させて志保ちゃんに渡したことも、おそらく無関係ではあるまい。


「そして! こうしてイベントまえに多少なり落ち着いた時間も取れたことですし、せっかくなのでお姉ちゃんとミナセさんにはお聞きしたいことがたくさんあるのですが!?」


 そんな疲れたような雰囲気をなんとか振り切るようにして告げた志保ちゃんの言葉と、眼前に浮かべられた、おそらくは嘉穂ちゃんが送ったのだろう、イベント直前までの彼女の≪ステータス≫を示したウィンドウを見て、「ふむ」と思案する。


 そして……はて? いったい、『どれ』のことが訊きたいんじゃろうな? と、迷える程度には、彼女の≪ステータス≫は普通ではない。


 なにせ――



『 カホ@くろネ子 / 漁師見習いLv.40


 種族:獣人(猫)Lv.17

 職種:漁師Lv.23

 性別:女



 基礎ステータス補正


 筋力:15

 器用:15

 敏捷:7

 魔力:0

 丈夫:2



 装備:見習い冒険者ポーチ、デスティニー作フィッシャーマンアーマー+3



 固有技能

【忍び足】【水泳】



 スキル設定(6/6)

【収納術Lv.24】【槍術Lv.28】【聞き耳Lv.27】【察知Lv.27】

【潜伏・弐Lv.9】



 控えスキル

【短剣術Lv.3】【暗視Lv.10】【弓術Lv.4】【漁Lv.22】【鍛冶Lv.11】

【投擲術・弐Lv.18】



 称号

【水の妖精に好かれし者】【贖罪を終えし者】    』



 おそらくは、現在のAFOでも最上位クラスであろう、『上位ランクアップ化』させた【スキル】2つに加え、【スキル】のレベルが30に達した際に選択可能なもう1つの選択肢――『固有技能スペリオル化』を成した【スキル】が2つもあるのじゃから、物言いた気にするのも当然か。


 もっとも、これらの件に関しては内容が判明ししだい志保ちゃんにメッセージにて報告していたのじゃが、


「ミナセさんからの報告メッセによれば、【スキル】の『上位化』は、現状『名前が変わってレベル0に戻っただけ』で。アーツにしても元の【スキル】と同じ名前、同じ効果のものだった、と。それでいて、『スキル設定』の枠を『2つ消費』しないとセットできない、という話から――おそらくは『上位化』した【スキル】は上限となるレベルの最大値を増加させる効果があるのでは? と、主人公くんたちとは話していました」


 ふむ。なるほど、それはありえる――の、か?


 この手のゲームの仕様には詳しくないゆえ儂には判断がつかんが、志保ちゃんやダイチくんがそう予想しているのなら、きっと間違いあるまい。


「これは、まぁそのうちお姉ちゃんか主人公くんが――ああ、主人公くんも【剣術】を『上位化』させて【剣術・弐】にしたそうですよ? っと、それはともかく。これら『上位化』させた【スキル】をまたレベル30まで育てれば自ずと真価は知れるので、良しとして」


 問題は『固有技能スペリオル化』の方です、と。無表情エルフ少女は告げる。


「お姉ちゃんにあらためて確認するけど……『固有技能化』させたあとの【スキル】って、どうなるの?」


 果たして、そんな妹のいつになく真剣な眼差しを受け、嘉穂ちゃんは一度儂と視線を交わしてから、


「えーと……。【忍び足】の方はどうか知らないけど、【水泳】は『固有技能化』した後と前での違いは無かったような?」


「儂としても【忍び足】による消音効果は、『固有技能化』の前後でそう違うように思えんかったゆえ、おそらくはメッセージで報せた通り――『固有技能化』は【スキル】のレベル30相当のものを『常時セットした状態とする』ものと儂らは結論したのぅ」


 そう二人で告げれば、「なるほど」と志保ちゃんは数回頷き。


「なら、お姉ちゃんにはぜひ【察知】も『固有技能化』してもらって。そのあとで【直感】を取得できるのか試してほしいな」


 ……なるほど。それはたしかに。


 それで『固有技能化』した【スキル】も『複合スキル』の取得条件を満たせるのかは、儂としても知りたいところで。こうした発想が簡単に出てくる辺り、さすがは志保ちゃんと言ったところか。


「えとえと……。よくわかんないけど、つまり?」


「……できれば【察知】を『固有技能化』してから、お姉ちゃんには〈魔法使い〉やって欲しいなぁ、って」


 そんなー、と。妹のお願いに魔法マジックの仕様の面倒くささを嫌う褐色肌の猫耳幼女が顔をしかめるのに対し、つい「【直感】を取得するまえに『ジョブチェンジ』で【察知】と【感知】が取得できん〈職〉に就けば良いのではないか?」と助け船を出せば、


「……ミナセさん。むしろ、そっちの方が面倒で難しいと思うんですが」


「うん。わたし、とりあえず【察知】のレベルを30まで上げるね!」


 そう双子に返され、そういうものか? と首を傾げる。


「というか、何気に称号【七色の輝きを宿す者】の取得を前提とした会話だよね?」


「……まぁ、今では『レインボー』は蔑称ではなく、むしろ称号【七色の輝きを宿す者】は『持っていて当たり前』――とまでは言いませんが、常識になりつつありますしね。よっぽど時間に余裕が無いのでなければ、称号【七色の輝きを宿す者】は取っておくべきでしょう」


 実際、嘉穂さんはすでに幾つかの〈職〉をレベル1以上にしていらっしゃるようですし、と。そう告げるローズに、「ねーねー、嘉穂ちゃんってば、今までどんな〈職〉だったんだっけ?」と確認するように問う美晴ちゃん。


 対して、問われた少女自身は眉間に皺を刻んで中空を睨み、傍らの冷静沈着なエルフ少女が「〈戦士〉、〈運び屋〉、〈狩人〉、〈漁師〉の4つだったかな」と軽く返す。と、思いだそうと頭を捻っていた小さなお姉ちゃんは「うん、そう!」と笑顔を咲かせて頷いた。


「ふむ。で、あれば、残り3つ――イベントの開始時にレベル0でも構わんものを最後にするとして、2つ。そして、今〈薬師〉のレベル上げをしとるのじゃから……」


 手っ取り早いところで〈商人〉に就けば、儂らが協力すれば一瞬でレベル1以上にも出来よう、と。そう告げれば、「……それなんですが」と妹エルフは言い難そうな雰囲気になって、


「私としては〈商人〉――というか≪マーケット≫をお姉ちゃんが使いこなせるとは思えませんし、まかり間違って控えの装備を格安で出品、落札なんてされたら……きっと泣かれますよ?」


「あー……うん。似たような理由でわたしも〈商人〉就いてないし、嘉穂ちゃんの装備って何気に最高レベルのだし、失くすのは惜しいよねぇ」


 ああ、なるほど。と、そんな二人の告げる理由に納得できてしまうのも嘉穂ちゃんには悪いのかも知れんが……なんと言おうか、美晴ちゃん嘉穂ちゃんの獣人コンビはこの手の数字や慎重さを求められる〈職〉は性格的に合わんように見えるのじゃから仕方ない。


「ちなみに器用値の高さによって『薬草』を破壊する速度に差が出るので、素体レベルの高い方には特に短時間でレベルを上げられるでしょう〈薬師〉は、就くだけでポーションの回復量が増すこともあってお勧めしました」


 そんなローズの言葉に、たしかにそれなら嘉穂ちゃんに勧めるのもわかるが……そうなってくると、なぜ美晴ちゃんも〈薬師〉に? といった疑問が浮かび。一緒にレベル上げができることが嬉しいとばかりに喜色満面となる子猫はともかく、志保ちゃんはノリノリで尻尾を揺らす親友を呆れ顔――のように感じる雰囲気を纏って見やり、


「ミナセさんは素体の補正と『ドワーフ』の裏ステのおかげで器用値が高いから短時間で済むと思うけど……やっぱり、みはるんの『獣人』は厳しくない?」


「大丈夫! そこは敏捷値の高さでカバーするから!」


 なんなら河豚ふぐちゃんか志保ちゃんが【属性魔法:水】の【付与魔法】かけてよ! と、そう言って笑う犬耳少女に、「たしかに、『ブーステッド・アクア』をかければ『器用』を上げられるけど……」と歯切れ悪く返すエルフ少女。


 そして、「……いやいや。さすがにそんなすぐに【属性魔法:水】の【スキル】は得られんじゃろう」と、美晴ちゃんの言葉に儂が苦笑していると、


「なるほど。つまり、わたくしたちはわたくしたちで【属性魔法:水】の早期取得を目指すとして、美晴さんたちと『どちらが先に【スキル】を得られるか競争しよう』と、そういうことですね!?」


 その挑戦、受けて立ちますわ、と。何故だか闘志を燃やす深紅の巻き髪令嬢。……そう言えば、この子は美晴ちゃんに何かと突っかかっていく、とダイチくんが困り顔で言っておったのぅ。


 そして、「こういう『呪文スペルマジック』からの『魔法コマンドマジック』ないし【スキル】の取得は【感知】のレベルの高さに依存するので、案外良い勝負になると思います」と、呆れ顔の儂に説明してくれる辺り、さすがは参謀殿。相変わらず不勉強な儂に対する説明がわかりやすくてありがたい、と。そう感謝し、感心していると――


「――と、それはさておき。そろそろ『本題』に入りましょうか?」


 果たして、志保ちゃんはそう告げて。さきの、嘉穂ちゃんのときがそうであったように、「説明をお願いします」と言いながら、儂ら全員が見えるように一つのウィンドウを表示し。そこはかとなく怒っているような雰囲気を纏って、


「ど・う・し・て! ダンジョンに籠る前と後で、称号の数がしているんですか!?」


 しかもほとんどが≪掲示板≫に無い称号じゃないですかーっ!! と、珍しく大きな声で告げる金髪碧眼の美少女が示すさき。


 そのウィンドウに映る儂の≪ステータス≫には、以下のように記されていた。



『 ミナセ / 初級戦士Lv.38


 種族:ドワーフLv.15

 職種:戦士Lv.23

 副職:探索者

 性別:女



 基礎ステータス補正


 筋力:4

 器用:10

 敏捷:10

 魔力:0

 丈夫:14



 装備:初級冒険者ポーチ、デスティニー作クラブアーマー+3、デスティニー作クラブシールドセット+3、薔薇柄のスカーフ



 スキル設定(6/6)

【強化:筋力Lv.2】【収納術Lv.21】【聞き耳Lv.22】【忍び足Lv.18】【慧眼Lv.2】

【潜伏Lv.17】



 控えスキル

【暗視Lv.14】【盾術Lv.24】【斧術Lv.23】【翻訳Lv.2】【鍛冶Lv.17】

【槌術Lv.24】【水泳Lv.25】【回復魔法Lv.9】【看破Lv.10】【罠Lv.12】

【漁Lv.11】【投擲術Lv.1】



 称号

【時の星霊に愛されし者】【粛清を行いし者】【七色の輝きを宿す者】【水の精霊に好かれし者】【贖罪を終えし者】【武芸百般を修めし者】   』



 ……ふむ。薄々、怒られるような気はしていたが、やっぱり怒られるかぁ。


「【粛清を行いし者】、【七色の輝きを宿す者】、【贖罪を終えし者】は既に≪掲示板≫にあがってますし、【武芸百般を修めし者】はそのうち誰かが情報をあげるでしょうから良いとして……【時の星霊に愛されし者】と【水の精霊に好かれし者】は完全に秘匿事項な件について」


 そう若干瞳を細めて告げるエルフ少女に「……うむ」と頷きを一つ。そっと視線を逸らして、


「『任意での体感時間の操作』が取得条件の【時の星霊に愛されし者】はともかく、【水の精霊に好かれし者】は……とりあえず、嘉穂ちゃんも取得しておる【水の妖精に好かれし者】の取得条件だけでも情報開示すれば、そのうち誰かが取得すると思うんじゃが?」


 実際、儂も【水の妖精に好かれし者】の取得条件にあった『50時間以上』という部分から『100時間以上』や『200時間以上』を狙ってみようと思ったわけで。すでに≪掲示板≫では、『亡霊猫ファントム・キャット』事件の折に嘉穂ちゃんの≪ステータス≫をあげており、【水の妖精に好かれし者】の存在自体は周知されているのじゃから、あとは儂が今回、『蒼碧の水精遺跡』に籠り続けたことでその取得条件をおおよそ解明できた、とでも報せておけば、自然と後追いが現れて検証してくれると思うんじゃが? と、志保ちゃんに問えば、


「……じつのところ、私もそれは考えてはいました」


 エルフ少女はため息を一つ。儂の提案に対して、最初に情報を開示する相手は≪掲示板≫を見にくる誰かではなく、クラン『漁業協同組合・おとこ組』に。それこそ、儂らとの繋がりを強めるため、恩を売る目的で【水の妖精に好かれし者】のことを知らせるつもりではあった、と。


 加えて、ダイチくんたち経由でクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』にも情報を流すことを検討しており。……さすがに儂程度が思いつくことは志保ちゃんならすでに思案しているか、と内心で苦笑しておる儂に「……ですが」と、希代の軍師殿はどういうわけか申し訳なさそうな雰囲気を纏ったうえで「本当に、教えてしまっても良いのでしょうか?」などと問うてきて。


 曰く、この称号は嘉穂ちゃんが苦労して手に入れたもので。儂にしても制限時間に追い立てられ、不安に胃を痛めるような心情のなかで取得条件を解き明かした称号なわけで……それを簡単に広めて良いのか、と。これらの称号があったからこそ水場では優位であった儂らのことを慮り、志保ちゃんは情報の開示を渋っているようじゃが……ふむ。


 なるほど。先ほどの話ではないが、儂の称号関係の情報や嘉穂ちゃんの『上位ランクアップ化』に『固有技能スペリオル化』などは、たしかに『最前線』の情報だったろうと思い、納得し。そのうえで、


「儂としては、儂らだけが優位になっているという現状を『良し』とは思わんからな」


 そう苦笑し、情報開示を渋る少女に『薔薇園』や『おとこ組』相手なら教えてしまっても良い、と。ちらり、嘉穂ちゃんを見て告げるが「……ん?」と、どうやら猫耳幼女の方は儂らの会話を聞き流していたようで、不思議そうに首を傾げられた。


 対して、「……ミナセさんらしいですね」と苦笑――するような雰囲気になりつつ、表情としての変化は微々としたもの――して志保ちゃんは零し。普通のゲーマーであれば自分たちの優位性を捨てることを嫌うし、それが多大なる苦労を伴って手にした情報であれば安易に開示などしない、と告げるが……あいにくと儂は『ゲーマー』ではなく『保護者』じゃからな。自身が『特別』であることに固執する気も、それが良いことであるとも思えない。


 それこそ、『お土産』の受け渡しの件で志保ちゃんが要求した『儂と嘉穂ちゃんだけが最前線で戦える現状を早急に打破する』ことを目指すのであれば、この称号【水の妖精に好かれし者】の取得条件の開示は、悪くないように思えた。


 ……もっとも。志保ちゃんの言うように、これを取得するのに並々ならぬ苦労をしたであろう嘉穂ちゃんが秘密にしたいと言うのであれば話は別じゃが。と、あらためて子猫を見やって確認すれば、


「ふぇ? 志保ちゃんとミナセちゃんが『そうした方が良い』って言うんなら、それで良いんじゃないの?」


 よくわかんないけど、と。無邪気に笑って首を傾げる子猫に癒されつつ、あとのことは我らが頼れる軍師殿に任せるとして。


[ただいまの行動経験値により〈薬師〉のレベルが上がりました]

[ただいまの行動経験値により【調薬】を得ました]


「……ふむ。さすがに儂が最初か」


 果たして、そんなインフォメーションが流れるのを尻目に、思ったより早かったな、と呟き。出来あがった『HP回復ポーション』を『ポーチ』にしまって。次に『すり鉢』の耐久値が減っていたので『小槌』を出して〈鍛冶師〉に『転職ジョブチェンジ』。からの【鍛冶】の『修復』で直し、これも『ポーチ』へとしまっていると――




「――お! ミナセ!?」




 不意に聞こえた、どこか聞き覚えのある声に振り向き。


 そしてそこに、いつぞやの突発依頼では一緒に頭を悩ませ、そのあとに貰った手斧も含めて大変に世話になった高レベル冒険者――『山間の強き斧』というパーティ名の高レベルNPC冒険者四人の姿を見つけ、瞳を丸くするのじゃった。


ルビ振り楽しいw


なお、『幼精倶楽部フェアリーサークル』の『幼精』は、『幼い妖精』の略称と言うか造語と言いますか……とにかく誤字じゃあないです、はい。

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